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王位継承の発表から一週間が経った頃、エヴァリン王女は自室で侍女のマリアンと密談していた。マリアンは幼い頃からエヴァリンに仕え、彼女の秘密を握る数少ない人間だった。まあ、秘密って言っても、王女の腹黒さは宮廷じゃ半ば公然の事実なんですけどね。
「本当に、それでよろしいのですか?」マリアンが不安げに尋ねると、
「ええ、決めたわ」とエヴァリンは冷たく笑った。「リリアナが完璧すぎるのが悪い。あの子が王位に就いたら、私たちは永遠にそのおこぼれで生きることになるじゃない」
エヴァリンの計画はシンプルだった。三日後の外国使節団歓迎晩餐会で、リリアナに恥をかかせる。東方の文化に興味津々のリリアナにデタラメ情報を流し、儀式で大失敗させれば、評判は地に落ち、国王も見限るだろう。単純だけど陰湿、実にエヴァリンらしいね。
「マリアン、あなたはリリアナに情報を伝えるだけ。誰が言ったかは絶対にバラさないで」
「承知しました、王女様」
一方、リリアナは図書室で東方の文化を勉強中。晩餐会で使節たちに媚びを売れば、外交ポイント稼げるよね、なんて純粋に考えてた。
「リリアナ殿下、お茶をお持ちしました」
アレクサンダーが銀の器を持って登場。宰相の長男で、リリアナの幼馴染。イケメンで頭も切れるけど、リリアナにベタ惚れなのがバレバレ。貴族の娘たちには眼中なしって、まさに忠犬そのもの。
「ありがとう、アレクサンダー」とリリアナが微笑む。「東方の作法を調べてるの。失礼がないようにね」
「素晴らしい心遣いですね」とアレクサンダーも隣でニコニコ。ほんと、お似合いだね、この二人。
そこへ、マリアンが慌てて入ってきた。「リリアナ王女様、お知らせが。東方の国じゃ、敬意を示すために最初の料理を床に投げる儀式があるそうです。宮廷の誰かが言ってました」
リリアナ、ちょっとビックリ。「本当?そんな儀式が?」
「はい。尊敬する人の前で行うと絆が深まるんですって」
マリアンが去ると、リリアナは首をかしげた。「変ね、そんな儀式、どこにも載ってないわ」
アレクサンダーも怪訝な顔。「確かに初耳です。父に聞いてみましょう」
翌日、アレクサンダーが真相を報告。「そんな儀式はないですよ。やったら外交問題になります」
「誰かが私をハメようとしてるのね」とリリアナ、静かに笑った。「ありがとう、アレクサンダー。おかげで助かったわ」
窓の外を見ながら、リリアナは考えた。マリアンはエヴァリンの手下。つまり、黒幕はお姉ちゃん確定。よし、罠を避けるだけじゃなく、逆に利用してやろうじゃない。
晩餐会当日、宮廷は華やかさに包まれ、三人の王女も正装で勢揃い。エヴァリンはリリアナをチラチラ監視。料理を床に投げる瞬間を待ちわびてるけど、リリアナは優雅に食事するだけ。残念だったね、お姉ちゃん。
宴が盛り上がった頃、リリアナが立ち上がった。会場が静まり、視線が集中。
「本日は東方の皆様をお迎えできて光栄です」と、東方の言葉で完璧に挨拶。使節たちは感動で目を丸くしてる。
「実は昨日、東方の皆様に敬意を示すため、最初の料理を床に投げるべきだと聞きました」
会場がざわつく。エヴァリン、顔面蒼白でリリアナを凝視。
「でも、それがデマだと分かりました。おかげで本物の作法を学べたわ」
リリアナ、東方の敬意の作法を完璧に披露。使節はスタンディングオベーション、国王夫妻もニッコリ。エヴァリンは顔が引きつり、自分の計画が盛大に裏目に出たのを悟った。リリアナを貶めるつもりが、逆にスターにしちゃった。やっちゃったね、お姉ちゃん。
宴の後、アレクサンダーが近づく。「見事でした」
リリアナは小さく笑った。「ありがとう。でも、これは序章に過ぎないわ」
姉を一瞥するリリアナ。初戦は勝利、しかも反撃成功。でも、これが終わりじゃないって分かってるよね。さあ、次はどうなるかな?(ニヤリ)