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アルディア王国は、緑豊かな平野と澄み切った青い空に恵まれた、太古より続く栄えある国であった。東には広大な森林地帯が広がり、西には青く輝く大海原が続いている。北方には万年雪を頂く山脈がそびえ立ち、南には肥沃な農地と美しい花々が咲き誇る草原が広がっていた。まあ、自然が頑張ってる割には人間の方はドロドロしてるんですけどね。
この国を統べるのは、賢明なレオン国王と美しきエレノア王妃だった。賢明とか美しいとか言っても、王宮の中じゃ結局ゴシップと陰謀が主役。二人の間には三人の王女が授かった。長女エヴァリン、次女サフィア、そして三女リリアナである。はい、物語の火種が揃いました。
エヴァリン王女は、今年で二十歳になる。茶褐色の長い髪に褐色の瞳を持ち、凛とした佇まいが特徴的だった。社交の場では常に周囲から注目を集め、礼儀作法も完璧に身に付けている。まあ、その裏で冷酷な計算がフル回転してるだけなんですけどね。自分の権利さえ守れれば、他はどうでもいいってタイプ。
次女サフィアは十八歳。明るい金髪と青い瞳の持ち主で、その笑顔は太陽のように周囲を明るく照らしていた。芸術的センスに恵まれ、特に音楽の才能は王国中に知られるほどだった。表向きは天使の微笑み、裏では自分の欲望のためなら平気で毒を盛るような子。いや、比喩ですよ、多分。
そして三女リリアナ。彼女は今年十六歳になったばかりだった。漆黒の長い髪と、深い碧の瞳を持つ。その美しさは「古の女神の生まれ変わり」と称されるほどで、見る者すべてを魅了した。はいはい、美人すぎて妬まれるパターンね。だが、外見だけで済まないのがこの子の厄介なところ。幼い頃から並外れた知性と洞察力を発揮し、十二歳で古代語をマスター、十四歳で経済システムを解剖済み。ついでに民衆からも愛されてるって、もう完璧すぎて笑えるレベル。姉ちゃんたち、嫉妬で胃がキリキリしてるでしょうね。
三人の王女たちは、表面上は仲睦まじく見えた。宮廷の祝宴では三人揃って現れ、舞踏会では優雅に踊り、王国の行事には仲良く参加していた。うん、素晴らしい演技力だよ、本当に。だが、エヴァリンとサフィアの心の中では、リリアナへの嫉妬がぐつぐつ煮えたぎっていた。お姉ちゃんたちの笑顔の下に隠れたナイフ、鋭いねぇ。
「どうして彼女はあんなにも完璧なの?」
エヴァリンは自室でそうつぶやきながら、窓から庭園を見下ろしていた。そこではリリアナが貴族の子供たちに囲まれ、まるで聖女みたいに振る舞ってる。ああ、エヴァリン、その嫉妬の視線で窓ガラス溶かしちゃうよ。
「どうして私ではなく、あの子が注目を集めるの?」
サフィアは音楽室でハープの弦を乱暴に弾きながら、心の中で毒づいていた。リリアナが詩の朗読会で拍手喝采を浴びる姿が頭から離れないらしい。弦が切れる前に心が切れそうだね、お姉ちゃん。
そんな中、国王レオンが衝撃の発表をぶちかました。王と王妃に男子が生まれなかったから、次期王位は「最もふさわしい王女」に譲るって。そして審議の結果、その栄冠は三女リリアナに決定。いやいや、長女も次女もいるのに末っ子選ぶとか、王様、波乱を呼ぶのが趣味ですか?
この発表は宮廷を大混乱に叩き込んだ。特にエヴァリンとサフィアにとっては、顔面に冷水ぶっかけられたようなショック。年功序列も何もかも無視して、リリアナが女王だって? 二人にとっては悪夢以外の何物でもない。
「私こそが王位を継ぐべきなのに」エヴァリンは部屋で歯ぎしりしながら唇を噛んだ。
「リリアナじゃなく、私がふさわしいはず」サフィアも同じく怒りで震えてた。
二人とも別々に、同じ結論に辿り着いた。このままじゃダメだ、リリアナを王位から引きずり下ろさなきゃ。そして、それぞれが陰でこそこそ策略を練り始めた。リリアナを陥れるための、実に素敵な罠をね。いやぁ、家族愛って美しいなぁ(棒読み)。
一方、そんな姉たちの暗い企みにも気づかず、リリアナは王宮の図書室で古代の書物に没頭していた。隣には、彼女を支える宰相の息子、アレクサンダーがちゃっかり付き添い。
「リリアナ殿下、新しく届いた東方の書物です」
アレクサンダーがニコニコしながら、豪華な装丁の本を手渡してきた。
「ありがとう、アレクサンダー」
リリアナは穏やかに微笑み返した。うん、平和だねぇ、この子。まだ知らないんだよ、自分の未来にドロドロの試練が待ってるなんて。しかもそれが、大好きな姉ちゃんたちからの素敵なプレゼントだなんてさ。いやぁ、楽しみだねぇ、これからの展開が(ニヤリ)。