異世界散歩の日常
この世界は元から賑やかじゃが、最近は特に騒がしい。
儂が騒がしい原因の一つじゃから、文句を言える立場ではないがの。
今日はちょっと用事があって王都まで来たのじゃが、あの分では放って置いても良さそうじゃ。
無駄足かも知れぬが、時々見に来る程度で良さそうじゃ。
ついでに買ったカリカリのポテトに粉砂糖を振りかけたものとアイスを買って、散歩しながら帰るとしよう。
儂はぶらぶらと散歩しながら買ったおやつを食べつつ、景色を眺めるというのが好きじゃ。
配下からお行儀が悪いと窘められるが、こっそりと繰り返している。
ポテトの端っこをカリカリと齧りながら歩くと、王宮に天より光が落ちてきた。
今日も異世界から勇者が召喚されたのじゃろう。
毎日懲りずに呼んでおるのぉ。余程、この世界の人材に良い奴が居ないと見える。
更にテクテクと歩き王都を出た。王都の城下町から驚きと歓声と称賛が聞こえる。
召喚された勇者が新しい技術か料理でも披露しているのじゃろう。
ま、新しい料理やお菓子は儂も好きじゃ。王都にコッソリ来るのもそれが目当てな所もある。
散歩はまだまだ続く。森に差し掛かった所で、森の中から大きな爆発が起こった。
恐らく勇者が魔物相手に力を発揮し過ぎたのじゃろう。
勇者と一緒に来ている者が驚いている様が思い浮かぶようじゃ。
もうそろそろ家が見える頃じゃな。儂の家に向かって騎士団が攻め入っているのが見える。
儂の配下は強いからのぉ。今日も返り討ちじゃろうな。
ただ、勇者が居ると些か配下では荷が重い。万が一に備えて、早めに帰っておくとするか。
手にしていたおやつを食べ終えたので、散歩も切り上げ一気に帰るとしよう。
ふわっと浮き上がって儂の部屋の窓から中に入る。
「お帰り!」
大勢の……勇者が出迎えてきた。
攻め込んできた勇者が、魔王たる儂の姿を見るなり「ロリババアだ!」とか「合法ロリ!」等と訳わからん事を言うので撃退しているのじゃが、負けても帰ろうとせずここに居座っているのだ。居座るだけならまだしも、儂を取り合って喧嘩する始末。
「お主ら、はよ帰れ!」
日々、居座る勇者が増えるのでげんなりする。
ここに居ると面倒なので、明日も散歩に出かけるとしよう……