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東京ケイオス  作者: 不確定 ワオン
水没都市池袋《ルーインズオブセイレーン》

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湖畔の山小屋②



 聖碑を中心に輪になるように形成されている山小屋群は、規模で言えば既に村か集落になりつつある様に見える。


「……なんていうか、長閑(のどか)だな」


「のんびりとしたとこだね」


 大河と悠理はそう感想を述べる。

 

 聖碑の周りは色取り取りの花が敷き詰められ、手作り感のある大きなテーブルや椅子などが並べられていた。

 

 小屋と小屋の間にはロープが渡されていて、洗濯物や魚が干されていた。

 

 ここだけ切り取ると、地方の寂れた漁村に見える。


「おねーちゃんたち、どっからきたのー?」


「おやまのぼってきたの?」


「おっぱいでっか!」


 一軒の山小屋から三人組の子供が元気よく飛び出して、大河たちに駆け寄って顔を

見上げる。


 一人はまだ小学生にもなっていないような幼さの女の子で、あとの二人は小学校低学年ほどの男の子だ。


「あ、ああ。俺とこっちのお姉ちゃんは新宿から」


「アタシは目白からよエロガキ!」


 大河の言葉に続いて朱音が答える。


 一人の子供が背伸びをして朱音の胸に触れようと手を伸ばしてくるが、それを頭を鷲掴みにする事で防いでいた。


 悠理はそれを見て、そそそと大河の背中に隠れる。


「いいじゃんさわらしてくれても!」


「良い訳あるか! アタシの胸は高いんだよ!」


「けち! おっぱいおおきいのにけち!」


「おいお前、親はどこだ親は!」


 朱音とエロガキが騒いでいる隙に、大河と悠理は聖碑へと向かう。

 

「ここの聖碑は小さいね」


「小屋が建っている範囲がまんま加護の範囲だろうな。そう考えると、かなり狭いか」


 とりあえず、ファストトラベルを行えるよう一人づつ聖碑に触れる。

 

「これで新宿や高田馬場にいつでも戻れるね」


 そう言って悠理はスマホを取り出し、『ぼうけんのしょ』アプリを開いて『ファストトラベル』の項目を開いた。

 リストには新宿から順番に、大河たちが訪れた場所がリストとして記載されている。

 

「ん?」


「どした?」


 悠理がスマホを見て首を傾げているので、大河が近づいてスマホを覗き込んだ。


「ここの事だと思うんだけど、『ノームの湖畔集落』ってなってる。ノームってなんだろ」


「えっと、確か大地の精霊……だっけな」


 結構前に、親友の綾がドヤ顔で披露してきた知識の中にその名前を聞いた事があった。


「なんだっけか。四大精霊とか、エレメントとかたしかそういうのだった筈。小人のおっちゃんの姿をしていたりするとか……だめだ、ここまでしか思い出せねぇや」


 いつ教えて貰ったかもあやふやな知識だ。

 時期的には中学に上がる前、小学校高学年頃の事かも知れない。

 

 記憶の中の綾の姿はとても幼い姿なのだが、大河の親友は中学になってもまったく身長が伸びず年齢よりもかなり下に見える童顔だったので、姿形(ナリ)で時期を特定する事が難しい。


「へぇ……名前からして、海外の精霊だよね?」


「ぼくたちがノームだよ!」


「わたしたちがノームなの!」


「おっぱいさわらせろ!」


「しつけーんだよお前!」


 悠理の呟きに反応して、子供達が声を上げる。

 一人だけ未だに朱音にまとわりついて、その胸を触ろうと必死に手を伸ばしていた。


「ここはわたしたちノームがたてたの!」


「ほかのこたちは、いまおやまをほりにいってるの!」


「おっぱい!」


「な、なんて執念だ! 大河、悠理! お願い助けて! なんかこの子怖い!」


「はいはい」


 そろそろ見てられなくなってきたので、大河は朱音にまとわりついている男の子の首根っこを捕まえて無理やり引き剥がした。


「……ん? お前、女の子か?」


 よく見れば男の子だと思っていたエロガキは、ベリーショートの女の子だった。

 なぜわかったかと言えば、三人が身につけている古めかしいシャツの襟首から、小さな胸の膨らみが見えてしまったからだ。


 大河は別に小児性愛者でもなんでもないので、子供の胸がチラ見えしたところで興奮もしないし罪悪感も感じない。


「ぺっぺっ! おとこにはようじなんかないやい! こっちのおねえさんがだめなら、あっちのおねえさんのおっぱいさわらせろ!」


 不自然なまでに軽いその身体は、『剣』を出していない状態の大河が片手で持ち上げられる程。


 首根っこを掴まれて宙ぶらりんになっているのに、エロガキっ娘はジタバタと手足を動かして暴れ続けている。


「もー、ターフはダメなこ!」


「これはおしおき!」


 残りの二人がそう言って両手をかざすと、エロガキっ娘の身体が淡く発光しだした。


「えっ?」


 その光は徐々に強くなっていき、ついには眩しくて直視できないほどの光量を放つ。


「おにーちゃん、てをはなさないとあぶないよ?」


「ばくさんしちゃうの!」


 にこにこと大河にそう告げた二人のノームは、それぞれ朱音と悠理の手を引いてそそくさと大河から距離を取った。


「ばくさ……爆散?」


「おおおおおっ、おっぱいをもまずにしねるかぁああああっ!」


 その直後。


 派手な破裂音とオレンジやピンクの色が付いた煙と共に、ターフと呼ばれたエロガキっ娘が──。


「たっ、大河!?」


「ば、爆発したぁ!?」


 ──爆発四散した。

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