幼少期編.3
遅くなってしまってすみません!
あと、短くてすみません、、、。
今回の話の途中からティアマリティスたちの会話文は漢字も含めて書いております
ひらがなだけだと見にくいですからね。
では、どうぞ!
「んん...。」
パチリと目を覚ます。
「あれ、私昨日寝ちゃったのかな?」
最後の記憶を手繰り寄せる。そういえばカノンが毛布をかけてくれてそこからの記憶が無い。
つまりは寝落ちたということだろう。ソファーの上で。
ベッドまでわざわざ運んでくれるなんて...。できた侍女である。
コンコンとノックの音がする。きっとカノンだろう。
「どうぞ。」
入ってきたのはやはりカノンだった。私を見るとふわりと笑う。
「おはようございます。お嬢様。」
「おはよう、カノン。きのうはいつのまにかねちゃっていたみたい。わざわざはこんでくれてありがとう。」
「いえいえ。昨日はずっと本を読んでおられたのですから疲れたのでしょう。主人の身の回りの事をするのが侍女の仕事ですから。では、お着替えしましょう。」
「そうね。きょうはノーウェルンたちがくるもの。」
「とびっきり可愛くしますわ。」
カノンはノリノリで支度を始めた。
ロイヤルブルーのワンピースはフリルがたくさん付いていて、生地も上等のもの。美しい意匠が入っている。
そして家紋が付いた髪飾り。これはお父様が専門の人にオーダーメイドして作られたらしい。宝石に特殊な技術で家紋を彫ったってカノンが言っていた。それは光が当たると虹色にキラリと光る青い宝石。
カラーイメージとしてはサファイアやラピスラズリを思い浮かべてくれると良い。
まぁ宝石の種類としては結構違うみたいで、とても高価なんだって。そしてその宝石を囲む金色のフレーム。これにも美しい意匠が刻まれている。
そんなものを私の頭にポンと付けちゃうんだから最初は結構恐れ多かったよね、、。
慣れたけど。、、、慣れた、、、かな?
「さぁ、お嬢様出来ましたよ。」
カノンの言葉に意識を引き戻す。
「ありがとう。きょうもとってもすてきよ。カノンのめにくるいはないね。」
「お褒め頂き光栄ですわ。さ、参りましょう。朝食が出来上がっておりますわ。」
「うん。」
リビングに降りるとお茶会から帰ってきていたお母様が優雅に紅茶を飲んでいた。お父様は、まだ王都でお仕事なのだろう。
「あらおはよう、ティア。」
「おはようございます。おかあさま」
「ふふふ。昨日は寝落ちてしまったんですって?」
口元に手を当ててふわりと笑うお母様。
「しっていらっしゃったんですね」
「えぇ。侍女の報告を聞くのも主人の仕事ですからね。今日は、ノーウェルン達が来るのでしょう?早く食事を頂きましょうね。」
「はい、おかあさま」
お母様に促されて席に着く。
柔らかいパンとふわふわのオムレツ。シャキシャキとした野菜たち。とても美味しい。うちの料理人は有能である。
「ごちそうさまでした。」
「では、お嬢様、応接室に参りましょう。もうそろそろいらっしゃいますよ。」
カノンが椅子を引いてくれる。
「うん。」
「いってらっしゃい。」
お母様がにこりと笑って手を振ってくれた。
「いってまいります。」
私も手を振り返す。
朝の光が差す長い廊下を歩き、応接室の中に入る。
そして応接室にあるカウチソファーに座る。
これもお父様がオーダーメイドした椅子である。
と言うよりも屋敷にあるものはほぼ全てオーダーメイドのものだ。それができるだけの財産がうちにはある。さすが侯爵家。
「では、昨日から読んでいらっしゃる御本をお持ちしますね。」
「わかった。それとなにかつまめるものもおねがいできる?」
「畏まりました。」
そしてカノンは応接室を出た。
しばらくするとカノンが本を持って帰ってきた。
「こちらに置いておきますね。」
「ありがとう。」
続いてほかの侍女がティーカートにクッキーがのったお皿とティーセットを乗せて持ってきた。
「ティーセットはこちらに置いておきますね。」
「ありがとう。」
ノーウェルンたちは私と同じ歳ながらに頭が良い。
きっとなにか良い案を出してくれると期待する。
「お嬢様、どうやらいらっしゃったようです。」
カノンが後ろから声をかけてくる。
「わかった、とうしてくれる?」
「かしこまりました。」
カノンはノーウェルン達を迎えに部屋の外へ出た。
しばらくするとこちらへ向かってくる複数の足音が聞こえてきた。
コンコンとノックの音がする。
「どうぞ。」
「失礼します。」
最初に入ってきたのはストレートの黒い髪と切れ長の緑色の目をもち、眼鏡をかけたノーウェルン・シュヴァルツ。
真面目な性格である。毒舌だけど。
「いらっしゃい。」
私の顔をみて安心したかのようにノーウェルンは微笑をうかべる。
「お身体の調子はどうですか?」
「心配ありがとう。ノーウェルン。もう大丈夫だよ。」
「それは良かったです。」
「あれ、ペリゼルトたちはどうしたの?」
「後ろから来ているようです。もうしばらくしたら来ますよ。」
「そう。じゃあ先にこっちへ来て座って。」
「はい。」
ノーウェルンは私の向かい側に座った。
「リティ様!」
勢いよく扉が開く。ノーウェルンは額に手を当てて呆れたようにため息を付いた。
まぁ、走る足音が聞こえた時点で予想は着いていたけど、、、。ペリゼルトが入ってきた。
オレンジの髪と白い瞳にいつも溌剌とした表情のペリゼルト。彼の生家であるブランシェス家は白い瞳が特徴だ。
「おはよう。ペリゼルト。」
「もう少し静かに入って来れないのですか?ペリゼルト。」
眼鏡をクイッと元の位置に戻す仕草をしながらノーウェルンはペリゼルトを見た。
「うっ、、、。ごめん。」
眉を下げて居た堪れない顔をするペリゼルト。
「良いよ。急いでいたんでしょう?」
私の言葉にペリゼルトはパァっって音がするくらい顔を明るくさせた。子犬に見えてきた...。
「ルト、お屋敷の廊下は走っちゃダメって言った。」
最後にゆったりとした動作でフィオナが入ってきた。フィオナはシルバーグレーの髪と、淡い赤色の瞳を持つ美少女だ。今日はシルバーグレーの髪をシニョンにして纏めているようだ。後ろには困ったように笑うカノンがいる。2人はゆっくりここまで来たのだろう。
「リティ、身体の調子はどうですか?」
フィオナは幼馴染の中で唯一私のことを呼び捨てで呼ぶ。ほかの2人にも呼び捨てで良いと言っているのになかなか様付けから抜け出してくれない。
閑話休題。
「大丈夫だよ。フィオナ。」
「ルト、早く席に座って。」
「うぅ、わかってるよ。」
フィオナは私の横に、ペリゼルトはノーウェルンの横に座った。早速、今回集まってもらった訳を話す。
「みんな、今日は来てくれてありがとう。」
「いえ、リティ様のためならどこへでも、ですよ。」
静かに言うノーウェルン。
「おう!なんでも言ってくれよな!」
ニカッと笑うペリゼルト。
「リティは私の大切な人。リティのためならなんだってする。」
ふわりと笑うフィオナ。
「本当にありがとう。今日来てもらったのはね、魔力中毒症のことについてみんなの意見を聞きたかったの。本命は魔力中毒症の治療方法だけど。」
魔力中毒症という単語に目を見開く3人。
「魔力中毒症ですか...。」
「治す方法は見つかってなかったはずだろ?」
「ん。この国の難病指定だったはず。急にどうしたの?」
「その、、、。最近魔力中毒症の発症者が多いのは知ってる?この領地内でも外でも。増えてるの。」
「話には聞いていますよ。だから、研究所は原因究明と治療方法を開発するために走り回っていると聞いています。」
やはり、ノーウェルンは知っているようだ。
ゲーム本編では研究者をしながら領地で動いていたものね。
「うん。ノーウェルンが言うように研究所の人達は日夜走り回っているの。でも魔力中毒症の人達は研究成果が出るまで苦しいまま過ごすことになる。だったら私たちでなんとかしたいって思ったの。うちの図書館にあった魔力中毒症に関する蔵書はここにあるわ。選りすぐりのものよ。資料も用意してもらった。これを参考にしながらなんとか見つけてみたいの。」
「でもよぉ、研究所の研究者ですら見つけられねぇんだろ?俺らにできるのかよ?」
ペリゼルトの言うことは最もだ。ましてやまだ5歳という幼い年齢の私たちが考えることでもない。
「でも、私はあなたたちならきっと糸口は掴むことが出来ると信じているの。一緒に探して貰えないかしら?」
私の言葉に3人とも顔を見合わせて、頷きあった。
「リティが私たちを信じてくれるなら、なんでもやる。」
私の手を握って笑いかけてくれるフィオナ。
「リティ様が僕たちを信じてくれるのならばどこまででも。」
ノーウェルンは眼鏡を直しながら不敵に笑う。
「俺だって、リティ様のためならいっぱい動くぜ!」
溌剌に笑うペリゼルト。
「ありがとう。3人とも。さ、早速考えを出していきましょう。」
こうして私たちは資料や蔵書を読みながらあーでもない、こーでもないと意見を出し合った。私は前世の記憶もあってまだ本の内容も大体は読み解ける。だが3人はまだ5歳なのに議論が成り立っている。ゲームの補正なのかそれとも3人が賢いのか。まぁきっと後者だろう。
「うーん...。ここまでとは...。」
「まず、身体のどこで魔力の暴走が始まるのか分からない。そもそも体内で暴走するものなの?」
「そもそも、今までの症例がまばらなんだよなぁ。」
上からノーウェルン、フィオナ、ペリゼルトである。
そう、この魔力中毒症は魔力暴走のメカニズムがバラバラなのだ。例えば、魔力の暴走がどこから始まるか分からない。魔力の暴走が起きた時必ず身体のどこかに不調が起きる。目、四肢のいずれか、関節、腹痛や、耳などなど。本当に身体のどこでも魔力の暴走は起きてしまう。そこで行き詰まり、何が原因なのかも分からなくなってしまう。
「んー我々が人間だからなのかもしれません。」
「ん?どういうことだよ?」
「だから、我々は人間ですが世界的に見たら獣人やエルフもいるという訳ですよ。魔力中毒症を人間という括りでしか分からない。」
「つまり、獣人やエルフならば分かるかもしれないってこと?」
「はい。獣人やエルフは人間よりも魔力量が多い。魔力の流れを感知できるという者もいるって言いますし。」
「じゃあ、獣人とかに聞けばいいってことか!」
なるほど。獣人、エルフは考えになかった。
「さすがね、フィオナ、ノーウェルン」
2人とも嬉しそうにはにかむ。でも直ぐに表情が曇る。
「そう言ってもらって嬉しい。でも、この領地内には獣人やエルフはいない。」
「話を聞こうにもそこがネックね...。」
うーん、と4人で考えあぐねていると、カノンが入ってきた。
「失礼致します。進捗の方はいかがですか?」
「1歩進んだように見えて半歩くらいしか進んでないわ。」
「そうでございましたか...。では1度外に出て気分転換なさってみてはいかがでしょう?」
「それは良いわね。1度外に出て考えを整理しましょうか。」
そうして私たちは外へ出た。そよそよと吹く心地いい風が疲れた身体を癒してくれる。少し、庭を歩き回ってちょうど私が頭を打った原因の木が生えている場所へ行った時。
そこで目にする。
「おい、これって...。」
「どうして、屋敷の庭に?」
「それよりも凄い怪我ですね。」
「どうする?1度侍女をよぶ?」
「そうね。この怪我では放っておけないね。この、獣人の子どもを。」
それにしてもこの木、トラブルになりそうなものを運んでくるわね。
またどこかで物語の歯車がカチリと回った気がした。
ご閲覧ありがとうございました!
次の投稿は2024.3/2の22:00を予定しています!
気長にお待ちください!
それではまたどこかで!