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幼少期編.1

今回から、ティアマリティス幼少期編が始まります!

よろしくお願いします!

ティアマリティスが目を覚ましてから数日が経った。

リディウスが医者を呼んでからは触診や問診、他の異常はないかなどなど色々と調べられて、

たんこぶがまだ残っている状態ではあるが、安静にすることを条件に医者のお墨付きをもらった。

「じゃあ、もう何ともないのね?」

アメリアは心配そうに問いかける。

「はい、おかあさま。ティアはもうだいじょうぶです!」

アメリアを安心させるようにティアはにぱっと笑う。

「そう…。ならいいのだけど…。安静にしててね。」

「はい!」

アメリアはティアの頭を優しく撫でた。

「奥様、そろそろ」


アメリアの後ろに控えていた侍女が言いにくそうに告げる。

アメリアは今日、貴族のお茶会に招待されているため、これから領地を出なければならない。

父親であるリディウスは王城へ行き公務中である。

普段は王城に寝泊まりするか王都の別邸に住んでいる。

この前はティアマリティスの怪我という報告を聴き、急いで公務を終わらせて帰ってきていたのだ。

そしてティアマリティスには兄がいる。

それがシリウス・レ・マーキュード。ティアマリティスの血のつながった兄で、今年、7歳になる。

父譲りの淡い水色の髪と緑色の瞳、顔だちも父親似ということで将来は美男子になるだろうと約束されたも同然である。現在は、ルーン王国の第一王子の側近になるための勉強をするために王都にあるマーキュリード家の別邸に早くから住んでいる。そのため、現在は領地にいない。帰ってくるのは夏季、冬季のみである。ちなみに第一王子と同い年。同級生である。

またティアマリティスが倒れたと聞いたときは勉強を投げ出して領地まで帰ってこようとしたのは余談である。

兄はいつでも妹が可愛くて大切なのである。距離が物理的に離れていてもそれは変わらない。


「リティ、行ってくるわね。何かあったらカノンに言うのよ。」

「はい、おかあさま!おきをつけて!」

「じゃあカノン、リティをよろしくね。」

アメリアはティアマリティスの後ろにいる侍女を見た。

カノン・ アドヴェラ。彼女はティアマリティスの専属侍女であり、最初ティアマリティスを追いかけていた侍女である。

「お任せ下さい。命に変えてもお守りします。」

カノンは頭を深く下げた。

そして名残惜しそうにしながらアメリアは部屋の外へ出た。

カノンも見送りのため外へ出た。ティアマリティスが外へ出して貰えないのは安静にしなければならないという理由があるからである。


物音が聴こえなくなった途端ティアマリティスはベッドを抜け出し、部屋に置いてある自分専用の椅子に座り、引き出しの中から紙とノートを取り出し机の上に出した。

ティアマリティスが使っている机と座っている椅子は、父親がオーダーメイドで特注させたもので、ホワイトランスと呼ばれる真っ白い木から作り出されいる。机は使い心地も良く、椅子には羽毛が詰められたクッションが縫い付けられているため座り心地も良く、ホワイトランスの特性を生かして高さの調整もできるようになっているものだ。そして悲しいことに机の大きさと椅子の大きさ自体は幼児に合わないため椅子の高さを上げてなんとか届くくらいになっている。


ホワイトランスとは魔力で成長する性質を持つ不思議な樹木。木材になってもその性質は変わらない。魔力を込めると高さの調節が可能になるというファンタジー溢れる家具である。しかし、樹木自体は寒さと暑さに弱く年がら年中安定した気候の中でしか成長せず育成が難しい。日本のように四季がはっきりと分かれているルーン王国では育成が難しく、なかなか手に入らない。


それをふんだんに使った椅子と机なのだからお金は相当かかるはずなのだが、そんなの気にしないとばかりにティアマリティスの部屋の家具に使われているあたり、侯爵家の財力は伊達ではない。


「よし!これからのことをかんがえなきゃ!」

小さな手でペンを持ち、慣れ親しんだ日本語を書き始めた。

この世界では日本語は使われていない。万が一誰かにノートを見られても大丈夫なのだ。




ーーーーーーーーーーーーーーーー


「まずは、これからわたしがたどるうんめいをかきだそう。」

真っ白いノートを目の前に私はゲームで見たティアマリティスの過去を書きだし始めた。

ティアマリティスの運命が大きく変わったのは、ティアマリティスの母親が亡くなったことからである。

ティアマリティスの母親、つまり私の今世での母親のアメリア夫人はティアマリティスが5歳の時に病に倒れる。

病名は、「魔力中毒症」。体内をめぐる魔力が何らかの原因で暴走し、体内の臓器などを攻撃し始めいずれ死に至る。

主な症状としては吐き気や嘔吐、呼吸困難や意識混濁など。

そしてこの国では、魔力中毒症の明確な治療法は解明されていない。

対処療法として、キュアリスとよばれる魔力を蓄える花へ暴走した魔力を移すというものがあるが、

このキュアリスは一年に一回しか花を咲かせない。

しかも、高い山頂上付近に、である。そのため、毎年魔力中毒症による死者が出ている。

ルーン王国では、魔力中毒症の治療法を確立させるため様々な研究が行われている。

そして、アメリア夫人が倒れてから2年後、魔力中毒症の苦しみの中、命を落とす。

ここから、ティアマリティスの運命は大きく変わってしまう。

まず、父親であるリディウス侯爵が心を病んでしまう。最初は気丈にふるまっていたがアメリア夫人を失ったことによる心の穴は大きくだんだんと心を壊してしまった。

優しかった父は面影を亡くし、深夜に屋敷の中を徘徊したり幻覚など精神に異常をきたした。

そして心を病んだ影響で、侯爵はティアマリティスを見なくなる。

まだ7歳という幼いティアマリティスは、愛をくれない父親に、父親の繰り返す異常な行動に精神をすり減らし、性格がどんどん歪んでいってしまう。兄のシリウスも父親が精神を病んでいるため、侯爵家の後継者として家を継ぐために公務や貴族の対応などに追われ、ティアマリティスを見てはくれない。


そんな中で婚約者としてこの国の第一王子であるレインハルト・ステラ・ミッドナイトはティアマリティスに寄り添うように努力するが、歪んでいく彼女をみてだんだんと距離を置くようになる。

それから学園に入学後、つまりゲームがスタートしてからレインハルトはティアマリティスを放ってヒロイン、つまりはゲームのプレイヤーと仲良くしだす。

ヒロインは男爵家に養子として迎え入れられたのにも関わらず幸せそうに家族の話や友達の話をする。

しかも、自分の婚約者であるレインハルトとである。

それがだんだんと妬ましくなってきたティアマリティスはヒロインに嫌がらせしたり嫌味を言ったりして、追い詰める。

そして、メインストーリーの最後卒業のパーティーの時にティアマリティスはレインハルトとヒロインの手によって断罪、修道院行きに。そこから皮肉にもティアマリティス自身も母親と同じく魔力中毒症にかかり数か月で死亡するのだ。


「だいたいこんなかんじよね。」

思い出して思ったんだけど、やっぱティアマリティス可哀そうよね。同情にしかならないけど。

母親が死んで、父親が病んで、兄も父も見てくれず果てには婚約者にも見放され、断罪され修道院に行ってそのあと母親と同じ病気で死ぬ。

こんな波乱万丈な人生、悲しすぎるわ。

ちなみにこの物語は、メインストーリーの番外編で公開されたもの。

ゲーム内での公開ではなく動画配信サイトで素晴らしい声優さんの声とアニメーションと共に公開されたものだ。これを見た人たちは阿鼻叫喚とまではいかなくとも、撃沈して涙を流した。

わたしも、前世でそれを見て号泣した。うっ思い出しただけでも泣きそう。


で、だ。私の今世のお母様はアメリア夫人。私が5歳になった時。つまりは今年。アメリア夫人は魔力中毒症を発症し倒れ、2年後亡くなる。そして、父親であるリディウス侯爵が病む。

じゃあどうするか。母親の病気をなんとか治療しなければ!

でも、できるの?ただでさえ原作では治療法が見つかっていないのに。そして夫人が倒れるのは今年なのよ?時間が足りなさすぎる…。

どうしたらいいんだろう…。

「うーん…。むずかしすぎる…。」

「何がですか?」

「わぁっ!...カノン...。」

「何度もお呼びしたのですが...。」

「えっ気づかなかった...。」

カノンは気配を隠すのが上手い。それもそのはず。カノンの生家であるアドヴェラ家は代々マーキュリード家に仕えていて、私たちの身の回りの事の他にもマーキュリード家を守るための裏仕事を行ったりしてきた。例えば、どこかの貴族から差し向けられた刺客とか、うちを欺いたり陥れようとする貴族とかの排除をやってる。カノンも例に漏れずそうであった。

でもカノンは私の専属侍女になってからは裏仕事から一応手を離している。でも諜報活動は辞めてないらしい。

「何を、悩んでいらっしゃったのですか?」

「えっんーっと...。まりょくちゅうどくしょうについて、かな?」

「魔力中毒症ですか...。理由をお聞きしてもよろしいですか?」

「もし、おかあさまやおとうさまがまりょくちゅうどくしょうになったらどうしようっておもって。」

カノンは目を大きく見開く。そんなに驚くことかな?

「お嬢様、魔力中毒症は治療法が確立されていないのです。だから、その...。」

言いにくそうにするカノン。

「わかってるよ。ごほんにものっていたもの。でも、あきらめるなんていやだもの。このまえきいたの。また、まりょくちゅうどくしょうでなくなったひとがいるって。」

「お嬢様。」

カノンのヘーゼルナッツみたいな瞳が潤んでいる。

「だから、わたしはいつかまりょくちゅうどくしょうのなおしかたをみつけたいの。カノンもきょうりょくしてね!」

「もちろんですわ。情報収集はお任せ下さい。」


こうしてカノンと私の魔力中毒症の治癒方法を探す日々が始まったのだ。全ては魔力中毒症でこの世を去ってしまうかもしれないお母様のために。お母様が亡くなって心を病んでしまうお父様の運命を変えるために。そして、家族がぐちゃぐちゃになって歪んでしまう原作での私の運命を変えるために。

閲覧ありがとうございました!

次の投稿は来週の土曜日1/27の22:00頃を予定しています。

少し忙しくなるので日にちが前後する場合がございますがよろしくお願いします。

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