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プロローグ

悪役令嬢系に手を伸ばしました。

2024年最初の小説です。

今年もよろしくお願いします。

アルカーナ、それは神秘の世界。エルフや獣人、精霊や魔法などファンタジーの代名詞とも呼ばれるであろう存在と人類が共存している世界である。そんな世界の中にとある王国があった。


それはミッドナイト・ルーン王国。アルカーナの中でも1,2を争うくらいの広さと権力と国力を持つ王国である。

そのミッドナイト・ルーン王国のとある領地のとある貴族の家でそれは起こった。



大きな屋敷の中にある広大な庭の中。小鳥がさえずり、綺麗な歌声を響かせている。

屋敷の庭はとても広く、綺麗に手入れがされており、色とりどりの花が植えてある。

また、小さな川も流れており、橋を渡るとすぐそこには、東屋も設置されていた。

白い素材を使って建てられている東屋の柱には美しい彫刻が彫ってあり、値の張るものだと一目でわかる。

ちょうど木陰になっているそこは夏は涼しく、一休みするにはもってこいだ。

そんな庭の中には不釣り合いな焦った声が響き渡っていた。


「お嬢様!お待ちください!」

メイド服を着た一人の女性が、幼い少女を追いかけていた。

「えへへ!こっちこっち!」

対する少女はきゃらきゃらと笑い、庭の中を駆け回っていた。

「お嬢様!そんなに走り回ってはこけてしまいます!」

外のことをまだ知らない少女は庭の中にどんな危険があるかわからない。

だが、少女は己の勘というべきものがあれば大丈夫だと言うように元気に走り回る。

侍女はそれが気が気でない。だから今こうして少女を追いかけているのだが。

「だいじょうぶ!」

少女が改めて前を見た時、少女の視界が下へがくんと下がった。

まだまだ身体の重心が安定しない年齢である少女は、躓いては身体のバランスがとれない。

ならばどうなるか。そう、盛大にこけるしかない。足元には、ちょうど少女の近くにあった大木から伸びている根。大人であれば、躓いたとしてもこけはしないが、子供はこける。

そして少女が躓いた大木の根というのは、少女が生まれるよりもはるか昔から屋敷の庭に根付き、その枝を茂らせてきた。

「お嬢様!」

侍女がようやく追いついたとばかりに少女に駆け寄る。

少女はむくりと体を起こす。自分がこけたなどとはまだ理解できていない様子だ。

そして次の瞬間、ゴチンッと少女の頭に木の実が落ちてきてしまう。

少女が躓いたその大木には、とある実が生っていて普段は実を落とすことはないのだが、少女が躓いた拍子に落ちてきてしまったようだ。

その木の実というのは、白くて丸っこい形のもの。現代で言うところのクリスマスリースやツリーの飾りに使われる丸い形のオーナメントをイメージしてもらうと分かりやすい。大きさは的には少々大きな松ぼっくりくらいだろうか。

大人からすれば小さく感じても少女くらいだとそうもいかない。しかも中身が詰まっているときた。

それが少女の頭にクリティカルヒットしてしまった。するとどうなるか。

少女は目をまわして倒れてしまった。

「お嬢様ー!!」

侍女のとても大きな叫び声が屋敷の庭に響き渡った。

倒れた少女はぐるぐると周る視界と薄れそうになる意識の中でこう思った。

「(あれ、私転生しちゃった?)」と。

そして暗転。



この日少女は、木の実が頭に当たってしまったことにより思い出した。自分が死んで記憶を持ったまま転生したことに。

そして理解した。

この世界が、転生する前にはまっていた乙女ゲームの世界だということに。

そして、将来はゲームの中で言う悪役令嬢と呼ばれる存在に生まれ変わってしまった、ということに。


――――――――――――――――――


ティアマリティス・レ・マーキュリード。

それが、今の私の名前。そして御年5歳というピチピチの幼女である。



前世は現代日本で働くしがないOLであった。普通に仕事して、普通に生活して、そして自分の趣味に勤しむ。

そんな人生であったのだが...。どうやら、車に轢かれて創作とかでよく見る転生というものをしてしまったらしい。

まさかの、趣味でやってた乙女ゲームの世界に。


舞台は、アルカーナと呼ばれる世界のミッドナイト・ルーン王国にある学園。

ヒロインである女の子は、男爵家に養子として迎え入れられた平民。

対するメイン攻略者は、ルーン王国の第一王子。

まさに、身分差の恋である。それを邪魔するのが、第一王子の婚約者の私。

つまりは、ティアマリティス・レ・マーキューリードなのだ。

ティアマリティスは、王国の中でも1、2を争う権力を持つ貴族の令嬢。立場的には、侯爵令嬢だ。

まぁ、ティアマリティスにもいろいろあったのだが、ヒロインの女の子に嫌がらせとか嫌味だとかまぁテンプレかまして、ラストには断罪され、修道院いきに。そして送られた修道院で病気にかかって若くして死ぬ運命にあるのだ。

死刑とかの要素がないだけまだましだが流石に侯爵家の令嬢が修道院にはいって生活するなんてたまったもんじゃないよね...。


で、この乙女ゲームこれだけじゃ終わらない。攻略者の好感度アップのために使う素材や材料を自分で集めなければならなかった。わかりやすく言うと、RPG要素とオープンワールド要素がはいっているということである。オープンワールドだから世界のスケールも大きく、建物やNPCのディティールも細かい。

そしてオープンワールドで自分のアバターを動かしながらアルカーナを走り回る。

RPGなのだから魔物とかが出てくるわけで、それに立ち向かうべくメインストーリーの一番最初にはソシャゲで言うところのガチャ要素もでてくる。なんでもありかよこの乙女ゲーム。

ま、そんなこんなで素材集めやら魔物退治やらで頑張って頑張って、メインストーリー進めて、ようやく結ばれるっていう一癖も二癖もある乙女ゲームなのであった。

これがリリースされた当初は乙女ゲームとRPGという意外な組み合わせに沢山の人がインストールしてはじめた。メインストーリーの攻略対象者の顔の良さとストーリーの内容の良さに沼る人もいれば、RPG極めたい人が、廃課金になってオープンワールド駆け回るわすごい人気が出た。

かくいう私も乙女ゲームとRPGという要素を盛り込んだゲームに惹かれて始めた。そしたらキャラの沼に落ちるわオープンワールドの壮大さと美しさに驚くわであっという間に廃課金に。

しかも私が車に轢かれて死んだ日はこの乙女ゲーム「魔法学園物語」のアップデート日だったのだ。

やるせない気持ちでいっぱいだよ…。


で、話を戻すと、私は、メインストーリーに出てくるティアマリティスに転生してしまったわけなのだが、これからどうしていくべきなのだろう…。もし、この世界にヒロインがいて、攻略が始まってしまえば断罪され修道院に行くことが決まる。

でも、そんなの絶対いや!わたしは、今世こそ天寿を全うするの!侯爵令嬢なんだからのんびりと気ままに生きたい!アルカーナの世界を回ってみたいしこの目で美しい世界を見たい!

なればどうするか、勿論断罪されないように学園では大人しくするし、メイン攻略対象である第一王子を遠目でみて満足するしかないのである!

ま、婚約者になることは避けて通れないのだろうけど…。

――――――――――――――――――



「リティ…。」

屋敷のとある部屋の中、ベッドに横たわり、目を固く閉じた愛娘の頭をなでる女性がいた。女性の名は、アメリア・レ・マーキュリード。少女の母親であり、ルーン王国の侯爵夫人である。ラベンダー色の美しい髪とたれ目の青い瞳が特徴的な美女で、社交界の華4夫人と貴族の間で呼ばれている。

そしてアメリアの横にいる男性の名は、リディウス・レ・マーキュリード。淡い水色の髪と優し気な緑色の眼をもった美丈夫でティアマリティスの父親であり、マーキュリード侯爵家当主。ルーン王国の国王とは親友と呼べる仲で国の宰相を務めている。今日も、仕事を颯爽と終え、いまだ眠り続ける愛娘と愛娘に寄り添う愛する妻の傍にいた。

「ティアが、頭を打って眠ってから早3日ですか…。医者が言うにはたんこぶができているだけで命に別状はないということではありますが…。」

「でも、3日も目覚めないだなんて、どうして…こんな…。」

アメリアは顔を覆って泣き出してしまった。目覚めるだろうと信じ続けるしかない今、心が締め付けられる思いだ。

「大丈夫ですよ、リア。リティは絶対に目を覚まします。」

リディウスはアメリアに優しく声をかける。

「そうよね。私達の娘だものね。」

流れ落ちる涙を軽くぬぐい、アメリアはリディウスに微笑みかけた。

すると、ベッドに寝ていた娘の瞼が震えた。アメリアとリディウスはそれに気づき声をかける。

「リティ!リティ!」

「リティ!わかりますか!」

ゆっくりと瞼があがり、隠されていたアメリア似の青い瞳がみえた。

「おとうさま、おかあさま?」

「良かった!リティ!」

アメリアはついに涙腺が決壊し、ティアマリティスを抱きしめながら涙を流す。

「今すぐ医者を呼んでください。」

リディウスは部屋の外にいる侍女へ医者を呼ぶように手配をする。


二人の愛娘は今、ようやく目を覚ました。

そして二人は知らない。愛娘が現代日本で生きた記憶を思い出し、自分と家族の運命を変えようと考えている事なんて。

閲覧ありがとうございました。

次の投稿は、1月20日土曜日の22:00頃を予定していますが前後する可能性があります。

今回はプロローグで一番初めなので中途半端な時間に投稿しております。

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