● 可愛いお願い
『…何故だ…何故、ナッツはあれほど爆釣が連日…』
と俺の頭の中で抗議にも似た疑問が繰り返されており、
『ナッツだけズルいではないか!?』
という表情で拗ねている俺である。
いや!三匹釣ったよデッカい魚を…そりゃあ楽しかったよ…あぁ、楽しかったさ! でも、ナッツは今日も二桁釣るのよ楽しそうに…しかも、最後には、
「あまり釣れなくなりましたね…」
とか言った後で相棒は平気な顔をして鋼ハサミまで釣りやがった。
あまりにも悔しいからナッツの釣ったザリガニだが鍛冶屋で新しく買った鋼の槍を使い今回も脳ミソミキサーを食らわせて俺がトドメを刺して殺った。
『せめて経験値を多めに奪ってやる!』
という卑しい理由からだ。
『これぐらいの細やかな抵抗はナッツも許してくれる…はず…』
という勝手な解釈だったが俺はザリガニに刺さった槍を引き抜きながら、
『なんて心の小さい…』
と自分が悲しくなり、数でも大きさでも完璧に負けた俺は潔く負けを認め、
「釣り勝負はナッツの勝ちだね…何か欲しい物はある?」
と聞くと、
「キース様のスキルで、果樹園の防衛をお願いします」
と、相棒は即答したのだった。
確かに感知・観察・警報のシステムをリンクさせて果樹園に配備すれば鳥魔物や虫魔物を感知して警報を鳴らして驚かす事も可能だが…
『本当に好きな物に忠実だなナッツは…』
と感心しながら俺は、
「了解、魔物避けシステムを設置すれば良いのね」
というとナッツは、
「オランの花が咲く時だけは防衛を切ったりも出来ますか?」
と心配そうに聞いてくる。
俺は一瞬『なんでかな?』とは思ったが、すぐに、
『あぁ、受粉の時期は虫魔物をフリーパスにしたいのね…』
と、理解して、
「了解、見張り機能を配置するよ。オン・オフは言ってくれたら何時でも切り替えれるから…」
と俺が伝えると、
「やったぁ~!」
と、喜んでいるナッツに俺は、
『相棒の時折見せる不思議性能は彼のスキルの力では無いかな?』
と、感じていたのであった。
じゃないと、この釣果の差は納得出来ない…それに最後にナッツが爆釣した場所でザリガニまで釣り上げた為に昨日の俺の、
『ザリガニ居たから釣れなかった説』
が呆気なく否定されたからだ。
『確かにブランクは有るよ…有るけど…前世であんなにやっていた釣りでビギナーのナッツに連日コテンパンにされるなんて…』
と、メッコリ凹みつつ俺がやっと釣ることが出来た三匹の今日の釣果を見つめて、
「いっぺんには運べないから一匹ずつ運ぶか…」
と呟きながら俺は自宅の解体場所を目指すのだが、ナッツは悪気もなく、
「これは運ぶだけでも一苦労ですね」
と、俺と比べるには俺が可哀想になる量や大きさの魚の山の前で嬉しそうにしている。
『良かったね…』
と、心の中だけで相棒にお祝いの言葉と、
『俺はこの三匹だけだから、ナッツはそれ全部頑張ってね』
と、『せめて運搬作業でナッツは俺より疲れたら良いんだ…』と再び心の小ささが透けて見えるような意地悪な事を考えていた。
そして、魚を担いで門の所にたどり着いた俺に、
『お帰りなさいませ、マスター。パンパカパーン!おめでとうございます。
マスターのレベルが勢い余って11になりました』
と、ウキウキのヒッキーちゃんが報告を入れてくれた。
『パンパカパーンも口で言うんだな…』
と、どうでも良い感想を思いながらも、
「ありがとう、魚の解体が終わって晩御飯が済んだらポイント交換するから資料まとめておいて」
とお願いしてから池と解体場所を往復して、池のほとりから魚とザリガニを運び、自分の身長程有る魚の鱗をはがして、内臓を取り去り除いた後に塩をスリ込み荒巻きジャケ風に鍛冶屋の屋内に吊るしていく。
『ザリガニの解体は、一旦保留とするか?一番のウリの硬い殼は腐らないからね…』
などと考えながら天井の梁から下がる魚を眺め、
『春まで魚も十分だな…ナッツには悪いが釣りはしばらくお預けにしよう』
と、考えていた。
『多分あの調子でナッツが連日釣りをしたら池から生命が消え去るかも…』
と不安に思いながら俺は母屋のキッチンでフレッシュなマッスルトラウトを今晩のメインディッシュとしてムニエルにして食卓にならべる。
するとナッツは、
「美味しい、美味しい!」
と、マッスルトラウトをキロ単位で平らげる。
確かに時期もあるのか油がのって甘くて旨かったが、しかし、放っておいたらナッツは本当に池の全てを釣り尽くした上に食い尽くすかもしれないと、すこし恐怖を覚える程の釣りっぷりと食べっぷりであった。
それから食後に二人で暖炉で沸かしたお湯で体を拭いて、怪魚とファイトを繰り返したナッツは早めの就寝となり、俺は暖炉の前のテーブルで目を閉じてマスタールームに意識を飛ばしポイント交換の作業を始める事にした。
「お待ちしておりましたマスター。交換リストの追加項目のチェックが出来ております」
と、ヒッキーちゃんが出迎えてくれ、
「ありがとう、では報告をお願い。」
と俺がモニター前に座りながら言うとヒッキーちゃんの声は、
「了解しました。まずは、マスターのレベルが10を超え11となりましたので、現在1825ヒッキーポイントを所持されております。
滞在ヒッキーポイントの付与が3から5になり、家族登録枠も3から5に増加しましたが、家族分の追加ポイントは一人につき1ポイントのままです。
感知機能に200ポイントを使い、地下や水面下10メートルまでのモノを感知出来る〈ソナー機能〉が付けれます。
感知と観察の複合機能の〈サーチ機能〉が300ポイントで取得出来る様になりました。
この機能で敷地内であれば指定したモノを探せます。
〈業務用保管倉庫〉が解放されました。700ポイントです。
罠に〈針山付き落とし穴〉と〈痺れガスの罠〉が追加されどちらも150ポイントです。
〈小型ガーディアンゴーレム三体セット〉が解放されました。
感知・観察・警報のシステムと連動して、敷地の見回り等を指示できます。300ポイントですが攻撃力はあまり無く低級ガーディアンゴーレムとチームを組ませる事で侵入者の排除も可能になります」
と、流れる様に説明してくれるヒッキーちゃんの声が響き、そして一呼吸おいて彼女は落ち着いた声で、
「そして、最後に一番オススメの機能がたった200ポイントで取得可能になりました」
と、報告してくれたのだが、はじめの方の説明で分からない点が何点かある俺は、
「ヒッキーちゃん、聞きたい事があるんだけど家庭用保管倉庫と業務用保管倉庫の違いと、ガーディアンゴーレムについて詳しく知りたいのと最後の機能の詳細かな…」
と質問をすると、ヒッキーちゃんはオススメ機能の話を後回しにされた事に少し残念そうな声で、
「そうですね…まず、家庭用保管倉庫の内容量は、百人乗っても大丈夫なサイズぐらいです」
と言い出した。
俺はあまりの例えに、
「えっ、ヒッキーちゃんってあれ知ってるの?」
と驚くのだがヒッキーちゃんは、
「マスターの記憶をベースにしておりますので、マスターの淡い初恋まで知っています」
と、当たり前かの様にビックリな新事実まで発表しだした。
『怖いよぉ~、どこまで知ってるの?』
と、俺は寒気を覚えるが冷静なフリをして、
「つ、続けて…」
と、促すとヒッキーちゃんは、
「業務用は、体育館倉庫ぐらいですかね…」
と教えてくれるのだが…
『いや、学校の規模によるだろ!?…俺の記憶を使ってるのに俺に伝わらないよ!』
とツッコミたくなるが、
『しかし体育館倉庫…跳び箱にマットやら平均台やボールかごに卓球台…果ては運動会グッズまで…かなり広いのかな?
百人乗ってるのは、車が一台出て来ていたからガレージサイズだろうが…益々分からない…』
などと俺は、記憶を頼りにおおよそのサイズを考えているとヒッキーちゃんが、
「ザックリというと、業務用は家庭用の倍以上の収納です」
と、教えてくれた。
「先に言えよ…」
と呆れる俺をよそに、ヒッキーちゃんは、
「低級ガーディアンゴーレムは人型のゴーレムで、レベル20程度の実力です。
各種武器などを装備して扱える能力を有します。
小型ガーディアンゴーレムは、メロンパンサイズで多脚式で虫みたいなゴーレムですが、狭い場所や壁でも楽々歩きまわり石を取り込み打ち出す機能があります。
監視カメラとリンク出来る上に、本人もカメラとしての機能も併せ持ち、拡声機能でマスターの声を敷地内に届けたり出来ますので内線やインターホン代わりになります。』
と、ガーディアンゴーレムの詳しいスペックを教えてくれた。
『おっ、小型ガーディアンゴーレムは果樹園の見守り隊として使えそうだな』
と考える俺にヒッキーちゃんは重々しく、
「そして、最後のこの機能が一番オススメで〈投影クリスタル〉がスキルの機能として使えます。
マスタールームの遠隔モニターとしても使用出来ますが、メイン機能は私のイメージ映像を映しだせ、マスターの好みの姿で自宅警備スキルのサポートがしたい!!」
と、強く言いきる。
「って、願望かよ…」
と思わずツッコんでしまった俺だが、
「う~ん、そんな機能は必要な機能の交換が終わってポイントが余ってたらかな…」
と、渋ると、
「え~、マスター。私の姿見たくないのですか?
マスターの記憶から初恋の娘でもアニメキャラでもセクシー女優でも自由自在なのに…」
と、誘惑してくる。
一瞬滅茶苦茶揺らいだ俺だが、しかしグッと我慢して、
「えっと…
小型業務用保管倉庫で、700、
敷地内回収で300…
小型ガーディアンゴーレムセットが300、
ソナー機能で200と、
サーチ機能で300で、1800だね。」
と俺が言うと、ヒッキーちゃんは、
「えー、私は? 倉庫を家庭用にしたら容量が少し減りますが投影クリスタルがイケますよ…マスター…お願い…頑張ってお手伝いするから!』
と、甘えた声をだす。
『小学生がお小遣いをねだるみたいに…』
と呆れてしまうが、ヒッキーちゃんもある意味家族だと思えばお願いの一つぐらい叶えてやりたくなった俺は、「はぁ~っ」と、ため息をつきながら、
「仕方ない、業務用から家庭用にチェンジで追加で投影クリスタルだ」
と、言うとヒッキーちゃんは、
「やったぁ~、マスター大好きっ! どんなアバターにしようかなぁー?」
と、楽しそうにしているのだが…
『あれ?俺のスキル…自我を持ってしまってない??』
と、今になり気が付いた俺は自分のスキルの変化がかなり不安になってしまったていた。
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