この感情に名を付ける
私の実体験を土台にして作った悲恋の物語です。
『彼女』を思い続けていた私のお話です。
あるオナゴに想いを抱いていた。
私はおなごに惹かれていた、ただただ『彼女』の美しさに惹かれていた。それは変わらない事実なのでしょう。そのおなごは私の『友』というもので、よく家族ぐるみで旅行に行ったりもした。
1章 初め
ある夏に転校生がやってきた。色白く可愛いおなごだった。皆の注目を惹き、違うクラスのものにも声をかけられていた。『彼女』はとても純粋そうな子で私もとても興味をそそられた。
そして移動教室の時に『彼女』に声をかけた。私はその時からきっと負けていたのだろう。『彼女』は純粋に返事をしてくれた.私は『彼女』と色々な話をした。家族の話や休んでいる場所、とにかくいっぱい話した。そのおかげで全然授業が頭に入ってこなかった。
ある放課後に私は『彼女』の弟の話をした。だけど『彼女』は弟はいないと言った、それじゃあ、弟がいるのは誰?そう聞いたら『彼女』は知らないよと大きく笑ってくれた。それが嬉しくて嬉しくて私は『彼女』の笑う声やにこやかな顔に心が舞い踊った。
2章 醜い
それから1年経った。『彼女』の家族と私の家族は一緒にクルーに乗って旅行をした。その時に『彼女』はドレスとは程遠い服を着ていたが、『彼女』が着ると会場の誰よりも輝いて見えた。私の着ているドレスがまるでゴミのようだった。
『彼女』とはいっぱい話し、笑った。たまに下品な話もした。恋バナや、友達のことについても話した。
『彼女』は私のジョークにとても笑ってくれとても嬉しく思った。
3章 笑顔
『彼女』と一緒に同じ中学に行けることになった.『彼女』とはクラスが違ったけど、たまにお互いのクラスに行って話をして、きっと『彼女』がこんなにも笑ってくれるのは私だけだろうと思った。だけどそれは違っていて、『彼女』はクラスにいっぱい友達を作っていっぱい笑っていた。その時にとても悲しく虚しい気持ちになったけど、私も友をいっぱい作っているのに『彼女』に作るなと言うのはきっと自分勝手なのだろう、直ぐに諦めが着いた、私のそばにいてくれたらいいと思っていた。
4章 彼ら
『彼女』に先輩を紹介された。先輩たちはとても陽気だった。きっと酉年だからだろう、とても陽気で私もすぐに仲良くなった。その人たちと一緒に遊びにも行った。特に仲良くなったのはしゅうちゃんと、ななちゃんだろう。彼らはとても面白く気が合いよく話をしていた。そして彼女と私としゅうちゃんそしてななちゃんの4人だけで話すことが多くなった。ななちゃんは私と趣味などで気が合い、すぐに打ち解けた。しゅうちゃんは少し私とは馬が合わないようで、あまり話すことはなかった。だが『彼女』は馬が合ったのかよく話していた。
5章 独占
私も一応はおなごだがどこか女子力にかけているとこがある。そのため男にもてたことは数えることもない程だ。それに比べ『彼女』は月ごとには男女をたらしこみ落とさせる.何よりも彼女は気があるように見せかけるものだから先輩たちはたちまち虜になっていく。これは『彼女』の天性と言ったものだろう。私はそれが憎くて哀しくて嫌になる、「独占欲」そういったものだろう。『彼女』の天性が羨ましくそして憎い。このような汚らしい感情はどこかに行けばいいのにそう思ってしまう。
6章 落とし穴
『彼女』は先輩達全員を落とした。
お得意の喋り方で、つまらない事を言っても笑い、時には相談に乗り、真面目過ぎずお茶目過ぎず、可愛らしい声で電話越しに先輩たちを魅了した。その頃からだろうか彼女が化粧をし露出の多い服を着、毎週のように友達と遊び始めたのは。
7章 白い肌
先輩達は『彼女』にあっていっそう虜にされた。
色白い肌、細い腕、艶のある髪、細い腰、細い長い脚、小さな顔、綺麗な目、、、虜にされない方がおかしいのだろう。私でさえも美しいと思った。
『彼女』はもう私の知っている彼女ではないと思い知らされた。
『彼女』はもう魔性の女になっていたのだ、そして私はもう捕らえられていたということを知った。
『彼女』は月だ、皆届きもしないのに『彼女』に向かって飛んでいく。いつの間にそんなに遠くに行ってしまったの、より一層届かない場所に行ってしまった。
8章 マリファナ
捕らえられている自覚はあった、それでも知らないふりをして彼女といるのが心地よくて、心地よくて。まるで『彼女』はマリファナだ.吸っている間は心地よく、なくなったら哀しくて。
そんな生活に私の母は呆れ、母が助言をしてくれようと聞かなかったことにした。
「何も知らない何も考えない」
『彼女』が裏で何人もの人を捕まえて、そのうちの1人が私でもあって、『彼女』は皆のもので、私のものでは無いそんなことは「何も知らないし何も考えない」
9章 蟲
『彼女』と行く所はどんな場所でも楽しく思えた、『彼女』とならどんなとこでも行こうと思えた。『彼女』は光だ、私は蛾のように、光に群がる。『彼女』は花だ、私は蜜を求めて飛ぶ蜂のように、香りに群がる。『彼女』は極上のご飯だ.私はご飯を求めて飛ぶ蝿のように、空腹に群がる。私は蟲だ。
10章 美術品
私の誕生日の前日、『彼女』が私の家に泊まりにきた。一緒にたこ焼きを食べて、床の上で話し合いながら笑っていた。この時間がずっと続けばいいのに、なんてきっと欲張りなんだろう。『彼女』は美術館に飾られた、絵だ。欲張ろうとしても手に入らない.ある人には美しい女性に、ある人には綺麗な花に、またある人には草原や月に見えるのだろう。額縁に飾られている『彼女』には、私なんて触れることすら許されないのだろう。『彼女』の絵に名前を書ける人が羨ましい。私は決して書くことはできないのに、
あぁ、すぐ隣で寝ている『彼女』は今もこんなにも美しい。汚してしまいたい
11章 この感情の名は
頭を鈍器で殴られた感覚とはまさにこの事なのだろう。確証もないのに彼女を信じていた、むしろその自信はどこにあったのだろうか、『彼女』に男ができてしまった。それもよりにもよってしゅうちゃんだなんて
あぁ、あの頃の美しい『彼女』はもう居ない。彼女の絵はもう売られてしまった。私は光を、花を、飯を、マリファナを失ってしまった。頭から血が出てくる。いや、血では無い、よく見ると大粒の涙だ。みっともない、知っていたのに『彼女』はいつかどこかの男に売られてしまうということを、名前を書かれてしまうことを、知っていたのに。私にはどうすることもできない。私はただの観客で、『彼女』にとっての踏み台でしかない。私はマゾだ、『彼女』に踏みつけられてもいいから、『彼女』に触れたかったのだ。あぁ、お母さんごめんよ、私はいつの間にかこんなにも穢れていた、いつの間にか人間ですらなかった、いつの間にか中毒者になってしまった。あぁ、恥ずかしい。私は今にも色んな感情によって消えてしまいそうだよ。誰か、誰でもいいからこの感情に名前をつけておくれ、これは黒い憎しみ?これは紅い嫉妬?これは青い悲しみ?これは茶色い苦しみ?
この感情は、<この感情に名を付ける>なら、そうきっと、きっと「恋」なのね、
私はいつの間にかこんなにも『彼女』を愛してしまったの、憎しみと嫉妬と悲しみと苦しさによる快楽に溺れてしまっていたの、でも私はマゾだからそれが心地よくって、私は恋をしている私に恋をしてしまっていたのね。
私の最初で最後の美しい『恋』よ、どうかこれ以上ほかの色で混ぜないで、これ以上汚れてしまう前に綺麗にそのまま取っておいておくれ。だから私はもう涙を流さないよ、もう私の中の綺麗な貴方を汚せない。
ああ、行ってしまうのね、さようなら。私の『ラヴァー』
ちなみに彼女とは今も良き相談相手です。