懐古の怪奇集
古めかしい詩を書きました。
どうぞ、海辺で散歩するかのような、
のどかな中にある忌まわしいホラーに振り向いてみては如何でしょうか?
黒猫が、道端でにゃあと鳴いている。ここはどこだ。見知らぬ土地。懐かしさの中で、自分を見失って彷徨う。貴方は誰ですか?問いかけても、風が木霊すだけ。ただ、ひたすら懐古の旅。知らない土地へ、来てしまった、あの街角を曲がったら、異界。宿場町の久遠。遠い空に、響き渡る風の慟哭。
寂しくなったら、宿場町へおいで、廻る風車、竹に刺さった紫陽花の花、吊るし雛、雛人形、日本人形、色々色なものを置いた、古びた桶屋や傘屋の家屋がいっぱい並んで、みなお地蔵様のように穏やか。風が吹いて、古い木が軋む音。それから微かな死臭。おや、あなたは――――、亡くなったはずの人が生き返って、街角で季節外れの櫻の花弁の下、舞っている。私は、それに酔うのです。
テキーラ、カクテル。居酒屋で、ほろよい。旅に来ました、一人旅です。知らない町へ、歩いていきたいから。綺麗な姫様が、誘蛾灯の下で舞っている。それに群がる羽虫。なぜだろう。夜の外灯を見ていると、若い頃の母親を思い出します。それからなにか、母親の不倫とか、イケナイ気持ちに。連れ込み宿、という言葉がぱっと頭の中に浮かんで、お酒で胡麻化しました。ここは街道沿い。不思議な街。
風の殺人、陰惨な事がありました。信号機が点滅して看板の中で女優が不気味に微笑んでいる。虫眼鏡の探偵が、マネキンを抱きながら、都会の闇を暴きにやってきた。会社の私利私欲か、人間関係のもつれか、ホステス絡みか。大人の不純は、煙草の影に隠れて消えていく、きな臭い、この嫌な感じ。私は私立探偵、別名懐古の探偵。抜き足差し足。黒猫の様に、闇から闇へ。
今回はちょっと居酒屋とか探偵とか出してみました。
宿場町、夏街道。
懐古の旅は、いつまでも———————…