33 魔法族の集落では 1
少し時間が空きました。覚えてらっしゃるでしょうか……(ぶるぶる)
今回の33話はちょっと長めに魔法族の集落でのあれこれを書きたいと思い、33話で括ることにしました。ので書き終わったら小分けにして更新していくつもりだったんですけど……書き終わらないという罠。
もう小分けにして書けた分から更新することにしました。なのでいつもより文字数が安定しないし少ないです。
またしばらくお付き合いくださいませ。
青年は一人、魔法族の集落に立っていた。
ここには知り合いもいない。
ここには彼を知る者はいない。
ここには――
「小生の求めるものがあるのでしょうカ」
詰襟の上に着込んだ前合わせの服の懐を漁って、小さな箱を取り出す。
琥珀色の髪が風に揺れる。
からん、と小箱から幽かな音がした。
「……まダ、元気なようですネ」
ふふ、笑いながら青年は小箱を仕舞った。代わりに取り出したのは鳥籠のような入れ物。
中には青く光るなにかが入っていた。
りぃん、りぃん、
光るなにかが鈴のような音を発する。
青年はそれを見て、小さく首を傾げた。
「申し訳ありませン。小生、精霊の言葉はわからないのですヨ」
りぃん、りぃん、
怒ったようにそれは鳥籠を内側から叩く。しかし意外にも頑丈なようでびくともしない。
りりりりりぃん、りぃん……、
青い光は寂しそうに、苦しそうに鳴いた。
青年は口角を上げて鳥籠を顔の高さまで掲げる。
風が吹く。
風が吹く。
「ふフ、そのまま大人しくしておいてくださイ。小生はなにモ、あなた方を害そうというわけではないのでス。たダ――力を貸してほしいだケ」
少しだケ、我慢していてくださいネ。青年はそう言って、懐に鳥籠を仕舞った。もうりぃんという音も、からんという音も聞こえない。
外から見ても、彼がなにかを懐に入れているとは気付かないだろう。
青年は斜めに掛けた鞄から地図を取り出す。それは魔法族の集落の地図。ありもしない、<雷帝>と精霊神官の居場所を示す地図。
「ううン、次はどの精霊にしましょうカ」
七つの神殿の一つに×印をつけ、青年は首を捻る。
精霊神官に常に誰かがついている風と闇は駄目だ。あとにしよう。
そうなれば、残るは四つ。どれにしようかな、と歌うように指でつつく。
とん、と指が止まったのは炎のマーク。
「少々人が多いですガ、まぁなんとかなるでしょウ」
呟いて、青年は地図を鞄に仕舞い込んだ。
風が吹く。
伸びをして、さてと言葉をこぼして青年は歩き出した。
目指すは北東の方角にある炎魔法族の集落。
青年――シンラク・フォートは水精霊神殿をあとにした。残るは静謐と暗闇だけ。
風が吹く。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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