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確信犯的婚約破棄。

彼が彼女を好きになった理由は、単純に顔が好みだったから

それ以外の理由なんてなかった。

二人でいる時間が早く経つわけでも、心が和らぐわけでもない。ただ一緒にいた。

むしろ、顔の事をいじられ馬鹿にされて悔しい思いでいた。幸せなんて感じたことはなかった。

いや、彼は綺麗な彼女自慢することができる場面、その特権を感じている時だけは違った。


その彼が一念発起した。

彼女を喜ばせ婚約をし、幸せの絶頂で不幸のどん底に落とすと不幸せな計画。母親を含めた女性に愛されず育った男の情念の爆発にも似た計画だった。

彼はそれから会う度に彼女を褒めた。最初は「可愛いね」位だった。

会う度に同じ言葉で褒めないように心掛けた。「耳が綺麗だね」小さい事も褒めた。

それでもすぐにネタが尽きた。

ネタ探しの為に彼女の観察を始め、小さな変化に気付けるようになった

「今日の髪型可愛いね」

「今日の洋服は素敵だね」

「今の笑顔可愛いね」


褒めるところがなくなった…

彼は『まだ駄目だ、もっともっと…』

今度は「愛している」と伝える事にした。

彼女が変わり始めた。

顔を馬鹿にする事もなくなり不器用ながら色々としてくれるようになった。

彼はしめしめと思いながら「ありがとう」といつも言うようになった。

そして、気付けば彼は彼女を好きになってしまっていた。

葛藤が起こった

彼女を不幸にしたい!いや、自分が不幸なりたいのか!

葛藤のままに彼女にプロポーズした。返答はOKだった。

彼はこの苦しみを解くべく彼女に語りだした。

「俺は婚約破棄のために、プロポーズしたんだ」

笑顔が一変し、彼女は表情を亡くしたまま説明を求めた。

彼は、彼女に説明した。女性に恵まれなかった事、顔の事をいじられて馬鹿にされて悔しい思いをした事。そして、婚約破棄をするつもりだったのに本当に好きになってしまった事。

彼女は複雑な思い抱えながらも答えた。

「顔の事はごめんなさい。…あの頃、いつも「綺麗な奴は良いよな」って言われる度に『顔だけの女』って言われている気がして、私って気持ちを表情で表すのが下手で、そんな自分が嫌で…もう別れようと思ったら、優しくなって…

表現が下手だった、全力で好きを表してくれることが嬉しかった。

本当に好きになりました。もう一度プロポーズしてもらえませんか?」


母親にも愛されなかった男。元々は嫌われたい訳でも不幸になりたい訳でもなく、

ただ誰かの心に自分を刻みたかっただけなのかもしれない。

タイトルの『確信犯』の部分は、

元々の「自分が行うことは良心に照らし合わせて正しく、周囲(社会)こそが間違っていると信じて」行った犯罪と

現在の意味である「悪いことであると分かっていながらなされる行為・犯罪」

どちらの感情も持ちつつ行動した彼の思いと重ねて付けました。

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