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船が無事に宇宙空間に入ったことを確認して、アルスは手動から再び自動運転に切り替えた。すでに砂球の黄色い輪郭がぼやけて見える。
「次はどこにいく?」
そう問うアルスに、ライラックはそうねぇ、と呟いてから答えた。
「赤い方の星に行って、残りのひとつの星に行って、それでもだめならピンクの星でも探そうかしら」
「……どこまで行く気なの」
「どこまでもよ。あんたとあたしが、幸せになれる星にたどり着くまで」
「そんな星、無いよ」
アルスは、かつて脳内のログに少しだけアクセスして検索した結果を、淡々と告げた。しかしその頭を、ライラックは雑に叩いて言った。
「あんたは失敗作なんだから、その脳みそに無い星がどっかにあるかもしれないでしょ。子供は夢くらいみなさいよ」
ライラックがこんな時だけ失敗作だと言うのを、アルスは知っていた。