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ライラックは、沈んだ表情のまま、パラシュートで地上に戻っていった。その姿を見えなくなるまで追いつつ、ライラックは呟いた。
「幸せになってほしいわねぇ――……」
「スミラ、いい性格してるよ」
「しょうがないじゃない、愛する者の為なら性格なんて悪魔になるのよ」
「連れて行ってあげた方がよかった?」
「それはダメよ。新しい彼を探すならともかく、亡くした彼を取り戻すために宇宙を旅するなんて、切なすぎるじゃない」
「ボクのことは連れだしたくせに」
「あんたはあのままだと腐ってたでしょ」
「……ドクター・コルチがなんでボクを作ったのかって、ライラックは知ってるの?」
「知るわけないでしょ」
「一応血縁なんだし、見当くらいつかないの」
そもそも、コルチの忘れ形見の幼いアルスをその研究室で見つけ出したのは、遠い親戚という名目で遺品の処理を任されたライラックだった。しかし、ライラックはふんっと鼻をひとつならしてアルスに言い返した。
「あたしはただの、彼の曾祖父の兄弟の孫の旦那の大叔母の孫の孫の子供よ」
「……本当に遠いよね」
「そう思うんなら血縁なんて言わないで。まあ、間にそんなにいるのに、ほとんど面識も無いあたしくらいしか荷物の整理をしようとする身内もいなかったんだから、嫌われている方向に変わり者だったのは確かね」
「ライラックに言われるくらいだから相当だね」
「失礼ね、あたしは存在以外は割と常識の範囲内よ」
「存在が変わってるのは認めるんだ」
「自分の個性を認めた生き物は逞しくなれるのよ」
ライラックはお決まりの、どやぁ、とでも言いたげな顔で、言った。