表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/46

閑話 : チームエロス

「やっとだ。やっと俺達の悲願が叶う」


灯りのない暗い室内に浮かぶ5つの影


「おい!下調べはちゃんと済んでんだろうな?失敗は許されねぇんだぞ!」


5人の中で1番体格の良い男が吠えるように声を出す。


「フッ無論だ。俺達は今日のために一丸となってここまで来たんだ失敗など有り得ないよ。今宵俺達の望みが叶うであろう」


「そ、そうか!へへっ永かったな」


「なあ」


「今こそ決行の時」


「なあ」


「「フハハハハハハハハハハ」」


「なあってば!」


「何だよ、盛り上がって来た所なのに」


「いや、何でわざわざ灯りを消してこんな事やってんだ?そんな事より早く店の話を聞かせてくれよ。フミヤ」


 そう言われ俺はしぶしぶ部屋の灯りをつける。

部屋が明るくなり全員の姿がちゃんと見えるようになる、部屋にいるのは俺、ロキ、それと3人のゴブリンの5人だ。

ここは冒険者学生寮の一室で3人のゴブリン達が使っている部屋だ。


『冒険者学生寮:名前の通り冒険者の学生寮、学生寮と名がついてはいるが冒険者なら誰でも住む事が出来る。ちなみに立場により家賃が変わり、見習い冒険者の家賃は相場の10分の1だが仮冒険者からはアームズの町の平均家賃になるので大抵の人は仮冒険者になると出ていく』


 このゴブリン達は俺のクラスメイトで名前はヴィヤックトゥアルファ、ボルティウス、ストゥラトゥクラトスという仰々しいというかとにかく覚えにくい名前のため俺はゴブ太、ゴブ次、ゴブ郎と呼んでいる。

最初は3人から猛反対を受けていた俺だが逆ギレしながら呼び続けていたせいで今ではクラス全員からも無事ゴブ3人組と認識されている。

..................正直すまなかったと今では思っている。


 ともかく話を戻そう、俺達は今人生で大変重要なターニングポイントと言っても過言ではないミッションに従事しているのだ。 

 そのミッションとは『Hで可愛い女の子と素敵な夜を過ごす』という男にとって重要かつ切実なミッションを遂行中なのだ!


 事の発端は仮住居で囁かれた1つの噂話だった。


 その噂とは仮住居の男子達の誰かが歓楽街で1つ上の男になった云々といったものだ。

 誰だと言うのは分からないし別にどうでも良い!重要なのはアームズの町には歓楽街があったという事実のみ!それを聞いた瞬間、俺の目から鱗が落ちる思いだった。

 そうだよ。猫耳さんとにゃんにゃんしたいんならそういうお店に行けば良いんだ!ってね。


 思い立ったら吉日、俺は早速その足で歓楽街に行き市場調査を敢行する事にした。

 しかしそこは普段モテないチェリーボーイいざ来たは良いが店に入ることも出来ず、さりとて客引きのお姉さんに話し掛ける事も出来ず街をウロウロするだけ、これではいかんだろ!と思いながらも踏ん切りがつかないのだ。

 その時に気が付いた、俺と同じ様に遠目でチラチラと店や客引きのお姉さんに視線を向ける男達が多数いる事に、おそらく仮住居での噂を聞きつけた者達だろうと推察できる。


 その中に1人良く知る人物を見つけた。


「アイツも来てたのか」


 視線の先にはロキの姿が、どうやら俺とは違い客引きのお姉さんに話し掛ける所までは到達しているみたいだ。

しかし端から見ていて気の毒になる位にしどろもどろだな

あ、諦めたみたいだ

トボトボと肩を落として歩く姿にはクるものがあるなと思いつつ声を掛ける事に


「ロキ、お前も来ていたのか」


「!?」


 デカイ図体を目に見えてビクンと震わせて恐る恐るという感じで振り返るロキ、変な所で気が小さいよなコイツって。

声を掛けたのが俺だと分かると露骨にホッとした様子を見せる


「何だよ、フミヤだったのか。驚かせやがって」


「いや、誰だと思ったんだよ」


俺の問いかけに微妙な顔をしながら


「.......佑介か浩司だったらイヤだなって」


「浩司は何となく理由は分かるが、佑介がイヤな理由は?」


「イヤ、イケメンに歓楽街(こういう所)来ているのを知られるのは男としてのプライドを刺激されるというか、何と言うか」


 微妙に理解できるから嫌だな、2人の間に何とも言えない空気が漂い始めた。


「そ、そういうフミヤも同じ様な理由で歓楽街(ここ)にきたんだろ?」


「ああ、夢にまで見た猫耳さんとのにゃんにゃんを実現するために歓楽街(ここ)に来たんだ」


 まあ、結局は勢いだけでは店に入れず、さりとて諦めがつかずに歓楽街をウロウロしながら客引きのお姉さんをチラチラと見るだけという最高に情けない状況だけどな。


 お互いの状況を確認した俺達は同じ目的の為に協力する事にした1+1は2だ!1人では駄目でも2人なら、赤信号みんなで渡れば怖くない!

 しかし所詮はチェリーボーイズ、2人で「お前が先に行けよ」と店の前をウロウロ、「お前が話し掛けろよ」とお姉さんをチラチラ

どうやら俺達の場合は1+1ではなく1×1だったみたいだ。

赤信号はみんなで渡っても怖いものは怖いのである。


 このままでは駄目だ。

猫耳さんとにゃんにゃん、頭の中をピンクにしろ!勇気を振り絞るのだ!


「このままじゃ駄目だ!いっそ2人で同時に話し掛けよう」


「お、おう!そうだな」


 2人で客引きのお姉さんに突撃。


「え~っとね、ボク達。こういうお店って結構高いのよ?特にアームズの町の歓楽街は町がきちんと管理しているから高額なの。代わりに病気やボッタクりなんかは存在しないけどね」


 突撃した先、お姉さんが親切に歓楽街の事を教えてくれた。

ちなみにお値段の相場なんかを伺ったところ


     超高級→20万~30万Cr


      高級→10万~15万Cr


      普通→5万Cr~10万Cr


      割安→2万Cr~5万Cr


               ※一晩辺りの値段

との事だった。


 高くね!?割安でも2万からかよ!さらに話によるとオプションやら指名やらプレイによってはさらにプラスされるとの事。

よって5万は持っておかないと厳しいらしい。

くっ、なんたる事だ、俺達はトボトボと歓楽街を後にする事に。

.............高い、5万は今の俺達にとっては大金だ。

諦めるか?頭の中にそんなフレーズが浮かんできた。

まさか異世界に来て初めて体験する敗北感がコレだとは思いもしなかったなハハ。

 凹んでいると隣を歩くロキがボソリと呟く


「俺達には高嶺の花だったようだな」


 そんなロキの呟きを聞き、俺もまた同じ事を思い始めた矢先だった。


『諦めるのか?』


どこからともなく声が聞こえてきた。


『諦めてしまうのか?』


俺はハッと声の主を探す


『私はお前の内なる情熱(パトス)なり』


俺の情熱(パトス)


『いかにも、私は常にお前と共にある』


俺と共に?


『思い出せ。中学1年の夏の日を』


中学1年の夏の日?


『始まりのエロ漫画を!』


 その瞬間、俺の脳裏にある映像が浮かび上がった。


 あの日、俺は珍しく1人だった。

浩司も佑介も家庭の用事でいなかったのだ。

久しぶりに1人だったため暇をもて余していた俺は普段は行かない近所の公園をブラブラと歩いていた。

 その時、茂みに何かが落ちているのを見つけた。

俺は()()に手を伸ばした。

それが始まりのエロ漫画との運命の出会いだった。


 当時の俺は性に全くと言って良いほど無知だった。

また性に興味もなく男同士でバカをやる事に全力を尽くしていた。

 しかし始まりのエロ漫画との出会いにより全ては一新した。

乾いた砂が水を吸うように知識を吸収していき、気が付けば立派なオタク(戦士)となっていた。


 ああ、思い出した。

あの時の興奮を、高揚を、そしてほんの少しの罪悪感を。


『フフ、どうやら思い出したようだな』


「ああ、思い出したよ。あの時の興奮を情熱(パトス)を」


『ならばもう私からは何も言うまい。邁進せよ!!』


 声が遠くなっていく。


「ま、待ってくれ。アンタは一体?」


 気が付けば帰り道、さっきまでの感覚は何だったのか、まるで夢でも見ているみたいだった。

そして俺に大切なものを思い出させてくれた存在とは一体何者だったのだろうか。


 ふっと気が付けばギンギンに自己主張をしているジョイスティック(我が息子)


「どうした?急に立ち止まって、っておい!何でそんなに臨戦態勢になってんだよ!?」


「ふっ今日の所は俺の敗けだな。だが俺はまた必ず歓楽街(ここ)に戻って来る」


 決意を新たに俺は歓楽街を鋭く睨んだ。

次は必ず!


「いや、お前こんな往来で臨戦態勢になりすぎだろう。せめて隠せよ!!」

金額をより分かりやすくしました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ