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初実習3

実習3日目


 昨日は初日の不調が嘘の様に順調に進み第3、第2ポイントの薬草を採取する事に成功、3日目にしてリーチをかける事が出来たのだ。

 無論チームの雰囲気も明るく3人の顔には笑顔も見える。

しかしその中で俺だけは若干不機嫌になっていた。

その理由は2日目の夜営にあった。


 前日と同じローテーションで見張りをしたのだがまたしても俺が寝た後に3人で話し合いをした様なのだ。

 昨夜、何かの話し声に気付き目を覚ました俺は何気なく話し声が聞こえる方を向くと3人が集まって何かを話し合っていたのだ。

時折俺の名前が出てきた様に感じたのだが良く聞こえなかった。


 取り敢えず言いたい!何故!俺を!話し合いから!はぶく!と

 本人達に聞けば良いんじゃね?とかいう奴がいるだろうが聞けんのか?自分の名前が出て来ている会話の内容を!俺?聞けるわけねえだろ!

 だから周りにバレないように不機嫌になってんだよ!

 笑えよ!チキンなので会話の事が聞けないし、聞けないからって不機嫌になり、さりとて不機嫌になっている事を知られるのがカッコ悪く感じて隠している器の小ささを。

 俺が内心で本格的に凹んでいると


「あれ?地図ではここに橋が架かっているはずなのに、橋がない」


 ルナの言葉で我に返り俺もルナの手元の地図を覗き込む、確かに地図上では架かっている、しかし現実には橋がない。


(橋まで落とすとは念入りだな)


橋を架け直す手間を考えると落とす可能性は低いと思っていた為に正直少し感心してしまった。

俺の傍では、さてどうしようかという感じで3人が困っている。


 フッフッフッしかしこんな事もあろうかと用意してあるんだなロープを!さあルナよ俺に相談を持ちかけるのだ!

と密かに自己アピールをしている俺を置いて3人は話し合いとっとと結論を出した模様。

 あれ?何か本格的に俺ハブられてない?


「フミヤ、少し急ごう幸い余裕があるから迂回しても十分間に合うよ」


と3人はキビキビと行動を開始した。


「待って、待って」


俺は慌てて3人を引き留めた。

3人は俺の方を振り返りながらどうしたんだろう?という表情をしている。


 マジか!昨日の夜から3人の様子が変だぞ。

あれか本格的に3人に嫌われてしまったのだろうか?思い当たる節は...........結構ある。

あれ?ちょっと待ってよ、マジで悲しいんだけど3組のオアシスであるルナが俺から離れていくの?あ、やべ泣きそう。


 俺の尋常じゃない様子にルナが心配しながら声をかけてきた。


「ちょっとフミヤどうしたの?顔が真っ青になってるよ!」


ルナが俺の傍へ駆け寄って来る姿が見えた瞬間、俺は恥も外聞も捨てルナにすがり付いたのだった。


「調子に乗ってすみませんでした!もっと謙虚になります!だから俺を見捨てないで!」


「ど、どうしたの?見捨てる?えっ?何の事?」


 突然の俺の奇行に狼狽えるルナ、泣きながらルナの足にしがみつく俺、あまりの事態に固まるミャールとリーザ、暫くの間俺の情けない泣き声とルナの困惑の声が森に響き渡るのであった。










 3人に慰められてようやく落ち着きを取り戻した俺、当然の事ながら3人に理由を問い詰められる事となる。


         ↓説   

正座をしながら  ↓明

         ↓中

 

 理由を聞き終えた3人は盛大なため息を吐きながら俺を見てきた。

何なんだろう?この反応は、俺としては結構な死活問題だというのに3人が3人共に呆れたような安心したような微妙な表情をしている。

 俺が3人の様子に少し不満を持っているとルナが申し訳なさそうに説明をしてくれた。


 曰く今回の実習では俺に頼りきりになってしまっていると感じた3人は今更ではあるが俺になるべく頼らないように行動をしようと決めたらしい。

夜に3人で話し合いをしたのも俺に頼らないようにするためだとか。


 その結果、俺が話し合いからハブられる様になったという訳だ。

結論から言って『アホか!』の一言に尽きる。

俺を頼らないのと俺の意見を聞かないを同一視するなんてアホの極みだ。


 確かに頼りきるのは問題だが今回の場合は意味が違う、チームの目的を果たすために何が最適解なのかを考える場に仲間を呼ばないなんて何を考えてるんだ?


 さっきとは立場が逆になってしまったが俺は3人に正座をさせて今回の事についてお説教をする羽目になってしまった。

3人は目に見えて落ち込んでいる、少しキツく言い過ぎてしまったかな?しょうがない少しフォローをしておくか。


「しかし俺に頼らないように頑張ろうというのは凄く立派な心持ちだ。今回はやり方を間違えてしまったが次回にそれを活かせば良い」


そんな自分でもちょっと偉そうかな?とか思う言葉を3人にかけながらルナ、ミャール、リーザの順に頭を撫でていった。

 やはり褒めるのと頭を撫でるのはセットだよね!どさくさ紛れだけどルナの髪を触れたのは役得だし、ミャールのフワフワの毛並みを堪能出来たのは素晴らしい!リーザには初めて触れたけど鱗がツルツルしてて気持ちが良いなとそこまで考えた時にハッと気付いた、これってセクハラにならないかと。


 恐る恐る3人の様子を伺って見るとルナは顔を少し赤くして照れてるみたいだ。

ミャールもウニャウニャ言いながら悪くない雰囲気だ。

リーザの表情は良く分からないが怒ってはいない感じだな。

良し!セクハラにならない!3人の様子に安堵しながら俺は対岸に渡るためにロープを用意するのであった。




ロープを持ち出したのを見て3人も俺の意図を理解したようだ。俺はロープを持ちながら崖の方を見た。


(崖の幅は10m弱かな?まあ行けるだろ)


距離を目算で確認した俺は崖に向かい全力で走り始めた。

3人の戸惑っている姿が目の端に映る。

意識を体内の魔石に集中し魔力を全身に張り巡らせる。

その勢いのまま崖に向かってジャンプ、俺の体はまるで弾丸のように一直線に対岸にブッ飛んで行った。


 ミシッ ドンッ


 およそ無事とは思えない音が聞こえた、俺の体は対岸の木に凄い音をさせながらぶつかり、その勢いのまま地面に叩きつけられた。

痛みは全くなく、すぐに起き上がり自分の体を調べたが怪我もなかった。


(ふむ、初めて全力で肉体強化を使用してみたが痛みも怪我もないとは驚いたな)


 肉体強化のあまりの能力に驚いていると崖の向こうからルナが何かを叫んでいた。


「フミヤ!無事?怪我は?」


どうやら心配をさせてしまったみたいだ。

俺はルナに手を上げながら自身の無事を伝えると手早く近くの木にロープを固く縛りつけてルナ達の方にロープを放った。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 俺達は順番にロープを伝って渡る事に、取り敢えずは発案者である俺が渡れるかの確認をするのが筋であろう。

 俺はロープに掴まりぶら下がってみる、うん大丈夫そうだな。

 気合いを入れて皆の所にロープを伝って戻る

 うお!こえ!

ともかく無事に渡る事に成功、俺が渡ってもロープに全く不安はなかったので改めて順番に渡ってもらう事に、まずは小柄なミャールから


 流石は猫の獣人スルスルと危なげ無くロープを渡って行く、次にルナが続いて行くルナもまたスルスルと危なげ無く渡り終え対岸に到着する。


 さて問題なのが、先程から体を小刻みにガタガタと震わせているリザードマンのリーザだ。

目に見えて、というか全身でムリムリと全力で俺に訴えかけている。

 とはいえリーザだけ回り道をさせるという訳にはいかない、という事でリーザには俺にしがみついてもらう事にした。

 最初リーザは殿方に抱き付くなんてと難色を示していたが置いていかれるのとどっちが良い?と脅すと渋々ながら俺にしがみついてきた。

 っていうか殿方って、リーザは俺が思うよりもお嬢様なのかもしれないな。


 とにかくロープを伝い渡り始める俺達、順調に半分程渡った時、急な突風が吹いてきた。


「おっと」


 ロープが少し揺れたので思わず声が出てしまった。

その声に反応したのか目を瞑っていたリーザが不意に目を開けてしまい運悪く下を見てしまったのだ。


「ひぅ」


 小さな悲鳴が聞こえた後、リーザの体がブルブルと震えだし次第に呼吸も荒くなっていった。

 尋常じゃないリーザの様子に俺は一旦移動を止めてリーザに声をかける。

しかし返ってくるのは荒い呼吸音のみ、どうやら完璧にパニックになっているようだ。

このままでは俺の体から手を離して落ちてしまうかもしれない。


 さて、どうする?


 1、女の子を冷静にするにはキスだ!ブチューッとやっちまえ!


 2、女の子を正気に戻すにはショックを与えれば良い。胸を揉め!揉みしだけ!


 3、精神的ショックには性神的ショックを渾身の下ネタを連発しろ!


 マジか、


 1はやっても良いがリーザって良いとこのお嬢様みたいだし後々の事を考えたら却下で、


2は人としてどうよ?明日からの女性陣の態度が怖いわ!


3は色んな意味でアウト


 自分で出した選択肢だというのにどれも最低じゃね?

 結局俺は右腕に魔力を込めロープにぶら下がると空いた左腕でしがみついているリーザを強く抱き締めた。


「大丈夫、俺が支えてる。もし万が一落ちても俺が助ける。だから安心して」


 まあ古典的な手だね

抱き締めて、囁くポイントはなるべくクサイ台詞を吐くこと。

男性への免疫が低そうなリーザだからこそ効果が高そうな行動である。

 難点は俺の黒歴史がまた1ページ増える事と後でリーザからこの話が周りに伝わった場合、俺への集中攻撃が開始される可能性があるぐらいか。




 俺の行動が功をそうしたのか徐々にリーザが落ち着きを取り戻してきた。


「あの、もう大丈夫です」


 しばらく抱き締めていたのだが落ち着いたのかリーザが小さく俺に声をかけてきた。

様子を見る限り大丈夫そうなので再びロープを伝い始める、リーザはその間全く動かず目を瞑りながら俺にしがみついていた。

 

「着いたよ。リーザ」


 目を瞑り俺にしがみついていたリーザに声をかけるとリーザは恐る恐る目を開けて対岸に着いた事を確認し、ホッと安堵の息を吐き、恥ずかしそうに俺から離れていった。


 おお、今のリーザの仕草可愛いな。仕草だけで俺を見とれさせるとはやるなリーザ!と思っているとルナがプリプリ怒りながら近付いて来た。


「さっきは言いそびれたけど、フミヤ!崖を渡った時に肉体強化の魔法を使ったでしょ!急に崖に向かって走り出すからビックリしちゃったよ。何であんな危ない真似をしたの?」


 うわ、本当に今更な事を言い出して来たな。

俺としては自信があったから決行に移したのだがルナにしてみれば只の危険行為でしかなかった訳か。


「ボクはロープを投げて使うと思っていたんだ。難しいだろうけどやって出来ないことじゃないしね、なのにいきなり崖に向かって跳ぶってなんなの?」


 おお!?ルナのお説教モードかなりグイグイ来るな。

しかしプリプリしているルナは怖いというより可愛いが先にくるな、正直良いぞ!


「フミヤ!!ボクの話をちゃんと聞いてるの?」


 あまり真面目に聞いていない俺に気が付いたルナはプリプリモードから激プリプリモードにバージョンアップをしている。

流石に不真面目すぎたなと内心で思っていた時に外野から援護が飛んで来た。


「まあまあルナ、それ位にしておこうよ。全員無事にこちら側に来れたんだしさ」


「そうですね、それに今までの行動を考えるにフミヤさんが考えなく今回の行動を起こしたとは思えないんですよ。大丈夫だという確信があっての行動だと思いますし」


 すまんリーザ、確信があっての行動じゃなく行けるんじゃね?っていうノリの行動だったんだ。

なんて考えていると渋々という感じにルナも眉をハの字にしながらプリプリモードを解除してくれた。


 ウムウム、ルナも納得してくれたし、さあ!最後のポイントへ元気良く行こうじゃないか!と足早に歩を進める。

そんな俺を見ながら小さく溜め息を吐くとしょうがないなという表情をしながらルナもまた歩を進めるのだった。





時間が更にかかるようになってしまった。

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