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初実習2

2日後 

実習初日


 日もまだ昇りきらない時間に俺達4人は学校の訓練場に集合していた。

周りを見れば他のチームの姿も見える、おそらくこれから各実習地に向かうのだろう。

 暫くすると訓練場にメイプルさんと見た事がない人達が入ってきた。


「これから各実習地に向かいます。各チームには担当のプロ冒険者の方が付きますので、担当の冒険者の指示に良く従って頑張って採取をしてきて下さい」


メイプルさんの説明が終わり、各チーム担当冒険者と共に訓練場を次々とあとにしていく、俺達も担当の冒険者と軽く挨拶を交わし訓練場をあとにしたのだった。


 日もまだ昇らない時間に出発した俺達だったのだが実習のスタート地点に到着した時には既に昼頃、着いた早々まるで時間が勿体無いというかの様に担当冒険者は説明を始めた。


「実習の期間は今から4日後の昼頃まで、途中トラブルや軽い怪我などは自分達で対処するように、4日後ゴール地点にいる担当冒険者に採取した物を渡せば終了だ。ちなみにリタイアをする場合は渡してある魔道具を使えば救助が来るからその場を動かないように」


 という説明をして担当の冒険者はあっさりとどこかへ去っていった。


 あれ?一緒に行かないの?他の3人も同じ事を思ったのか俺と同じ様に去って行く担当冒険者の背中を呆然と眺めていた。

 どうやら担当するのはスタートとゴールだけで採取は俺達チームだけでやらなきゃいけないみたい、取り敢えず気を取り直して予定通り4人で第1ポイントを目指し出発した。


 広い、まあ考えてみれば地図を見ただけでも普通に数十㎞単位の森なんだ元の世界から考えても規模は凄まじい。

 前を見るとルナとミャールが周囲を警戒しながら先へ進んでいる。

流石は獣人といったところか動きが軽やかだ。

 意外なのはリーザで森歩きが堂に入っている、普通はリザードマンて水辺に居を構えるらしいから森歩きが得意とは思えなかったんだけど。

いや?爬虫類って森にいるイメージだぞ。なら森歩きが得意で不思議はないのか?

等と微妙な事を考えながら黙々と歩く。


 というか今更だが普通は男である俺が先頭で矢面に立つのが仕事なんじゃないだろうか?

まあ原因は分かっている、2手に分かれるのを避けるために俺が森歩きに不安があると言ったせいだろう。

まあ森歩きが得意と言うわけではないが男としてはこうね


 さっきから何が言いたいかというとやることがない!いや、周囲の警戒自体はちゃんとやってるよ?でもね、討伐経験のない見習い冒険者でも来る事が出来る森だよココ。

 それを考えると他の3人は少し緊張しすぎている感じがしてならないんだ。

緊張感自体を悪いと言っている訳じゃないんだ、だが緊張のし過ぎは害悪でしかない。

 現に3人共体に無理な力が入りすぎているからか疲れが出始めているんだもん。

ペースも少しずつ落ちてきてるし、マズイんじゃね?


 予想通り第1ポイントに到着した時には日が暮れ始めていた。

 この時点で既に予定が随分と狂ってしまっている為か他の3人の表情には余裕が感じられない。

俺は内心でその事を心配していた。

 到着してすぐにルナが少し焦った感じで言った。


「日が沈む前に急いで薬草を採取しちゃおう」


ルナの言葉を合図に全員で急ぎ薬草を探し始めたのだが結果は


「こっちには1本もないよ」


「こちらにもありません」


「こっちにもない」


と3人の焦りを含んだ声が聞こえてくる。


(やっぱりな、間引きは魔物だけではなかったか)


俺が懸念した通りの事態になってしまった。


(となると.......)


と俺が考え事をしていると


「フミヤ、そっちにはある?」


ルナの切羽詰まった様な声が俺にかかる


「いや、なかった」


俺の答えにルナは何かを考え始める。

 ルナの考えがまとまるのを待ちながら俺もこれからの行動を考える事にする。


(最初の実習だしオリエンテーションの様なものと思っていたが、やはり失敗させる目的で動いてるな)


 気が付くと辺りを探していたミャールとリーザも集まってルナの考えがまとまるのを待っていた。


 暫くするとルナが


「まだ日が沈むまで時間があるよ、もう一度手分けして第1ポイントの薬草を探そう」


との事、さっき探した範囲よりもさらに広げて探索し薬草を探す事にしたが結果は


「ない」


 誰の言葉かポツリと呟かれた。


(かなり落ち込んでいるな。しかしそろそろ日が暮れる夜営の準備をしないとマズイだろ)


 そう思った俺は3人にその旨を伝えたのだが、その言葉を聞いた瞬間ミャールが俺を睨みながら


「こんな時に休もう?ふざけてないでフミヤも何か考えなよ!採取するはずの薬草が1本もないんだよ。大体時間に余裕がないのだってフミヤが不安だ。なんて言うからだし、やる気がないなら帰りなよ!私達の足を引っ張らないで!」


と俺に感情を爆発させてきた。


(そろそろ誰かが爆発するかもなと思っていたがミャールか)


俺はとにかくミャールに落ち着いてもらうため話し掛けた。


「そうだな。俺の我が儘のせいで時間に余裕がなくなってしまった。本当にすまなかった。夜営に関しては暗くなってからの作業は危険だと思ったからこその言葉だったのだけれども気に触ったのなら謝る」


と俺はミャールに頭を下げた。

 素直に頭を下げてきたのが予想外だったのかミャールはばつの悪そうな顔をして黙ってしまった。


それを見ていたルナは慌てて


「そうだね。完全に暗くなる前に夜営の準備をした方が良いよね」


そう言い夜営の準備を始めたのだった。


 鍋から味噌の良い匂いがしてくる。

場の空気を悪くしてしまったお詫びにと俺が夕食を作る事にしたのだ。

既に夜営の準備を終えた3人も鍋の周りに集まって来ていた。


「お味噌の良い匂い。フミヤ、この汁物はなんて言う料理?」


「フッフッフ、豚汁だ!」


 そこはカレーだろ!って思うかもしれないが、この世界とにかく異世界人が来るから調味料が豊富なんだよ。醤油はおろか味噌やカレー粉なんか当たり前の様に商業区に売ってるんだぞ!カレーなんかは珍しくないんだよ。

 まあ作った理由は俺の好物だからという理由が大きいけど。


「これが豚汁か~、お父さんから聞いたことがあるよ」


「私も母様から聞いたことがあります」


「.........」


(やはりまだミャールは怒っているか。少しずつでも機嫌を取っていかないとな)


とか考えているうちに豚汁が良い具合に煮えてきた。


「出来たぞ!フミヤ特製の豚汁だ。付け合わせはご飯じゃなくてパンだがな。しかし味は保証するぞ!」


 我ながら美味そうに出来たぞ。

いつも家事は浩司に任せてしまっている俺だが、基本的には自分で大抵の事はこなせるのだ。

やれないじゃなく、やらないコレ重要なとこね。


 お椀に豚汁をよそいルナ、リーザ、ミャールの順に渡していく


「ありがとう、美味しそう」


「フフ、ありがとうございます」


「.........」


最後に自分のお椀に豚汁をよそっている時にミャールが俺に向かって


「フミヤ、ごめんなさい!」


と頭を下げながら謝罪をしてきた。

 ミャールは泣きそうな顔になりながら、あの時の心情を話始めた。

 

「フミヤが悪い訳じゃないのに.....。探したのに薬草が見つからなくて頭の中がパニックになって、そんな時に全く慌てていないフミヤの姿を見たら急にカッとなって......」


ミャールは話ながらポロポロと涙を溢し始めていた。


「フミヤに、ヒドイ事を....」


 最後の方は言葉にならなくなっていた。

俺はゆっくりとミャール頭に手を伸ばし優しく撫でた。

俺の手がミャールの頭に触れた瞬間ビクッとしたが少し撫でていると体から力が抜けてきたのがわかる。

俺はミャールの頭を撫でながら優しく語りかけた


「気にする必要はないよ。あの状況だパニックになるのもカッとなるのも分かるしね」


 俺はミャールの頭を優しく撫でながら君は悪くないんだと優しく言って聞かせた。

 暫く撫でていると気を取り直したのか涙が止まり、しっぽが垂直に立ち始めた。

あれ?うれしいのかな?

少し興味を持った俺はミャールの耳の付け根を少し掻いてみた。しっぽが一瞬ピタッと止まり次第にゆっくりと大きくふりはじめた。


(猫だ、猫だ!)


俺の中の何かが刺激された。

欲情ではないが衝動的にミャールを抱き締めたくなってきた。

行っちゃう?行っちゃわね??俺の中の獣も愛でろよと囁き始めた。

ミャールをチラリと見ると満更でもない様子。

行くか?俺が意を決して行動に移す直前

俺とミャールに何か危険なものを感じ取ったのだろうかルナが


「せっかくの豚汁が冷めちゃうよ!食べようよ!」


と妙に大きな声で俺達に声をかけてきた。

俺とミャールはハッと我に返り互いに少し気まずそうにしながら食事を開始するのであった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 食事を終えた俺達は今後の行動を改めて話し合う事にした。


「フミヤ、さっきはごめんね」


まだ少し顔が赤いミャールが俺に謝ってきた。

対して俺も何だか照れ臭くなっており、多分自分の顔も赤くなっているだろう事を感じていた。


「さっきも言ったが誰にでもそういう時はあるんだ、あまり気にしないでくれ」 


 微妙な空気が流れたが気を取り直して3人に俺の考えと行動案を提示する事にした。

まず俺は懸念している事や思っている事を3人に話した。


 1つ目 おそらくこれから行くポイントには薬草がないであろう事


 2つ目 今回の実習は成功させる為でなく、失敗させる目的で実施されている可能性がある事


 3つ目 魔物を放つ事まではしないと思うが道を潰す事くらいはする可能性がある事


「ちょ、ちょっと待ってよ。確かに第1ポイントには薬草がなかったけど他のポイントまでないとか実習を失敗させる目的とか飛躍しすぎじゃないかな?」


「うん、ルナの言うことも分かるよ。でも全く根拠がない訳じゃないんだ。だって俺は最初に地図を見た時からこうなる可能性を考えていたから」


 俺の言葉に3人は驚きの表情で俺を見つめる。

その顔を見つつ俺はその根拠について話始めた。

 1つは地図のポイントが東西南北に距離が綺麗に揃いすぎていた事、こんな地図とギリギリの日程ならば殆どのチームが2手に分かれる決断をするだろうし、まるでチームを2手に分けるのが目的みたいな感じがした。

思えばメイプルさんがチームの人数を4人~5人に指定したのも2手に分けやすい様に考えてかもしれないな。


 次にメイプルさんの台詞が変だった事かな。

()()ポイント毎で採取を行い』と言っていた。

主に?普通はポイント毎で採取を行いだろ?もしかしたら別の場所で採取を行う可能性があるのではないか?と思ってな。

俺がそこまで話すとルナから疑問が飛び出した。


「でも、それと薬草が1本もない事を繋げるには無理がない?それに2手に分けたからといってどうなるっていうの?」


「逆だよ、薬草が1本もなかったからこそ疑問が繋がってしまったんだ。だって普通はないよポイントとまで書かれた場所に1本も薬草が生えてないなんて」 


「う.......」


「2手に分けたのは失敗させる可能性を上げるためかな、連絡もまともに取れない状況でのトラブルを急造のチームが何とかするのは厳しいだろ?」


 俺の説明に黙り込む3人


「取り敢えず明日は第1ポイントの薬草を探そう」


「...........でも、この辺生えてなかった」


 俺の言葉を聞き、ミャールがポツリと呟いた。

それを聞いて俺は笑いながらリュックからもう1枚の地図を取り出して3人に見せた。


「大丈夫、その薬草の群生地を地図にメモして来たから。勿論他のポイントの薬草の群生地もメモしてきたよ」


再び3人は驚きの表情を浮かべて俺を見るのだった。


「俺の言葉を完全に信用しなくても良い。まだ偶然という可能性もあるしね、明日薬草を採取したなら第3ポイントを確認しに行こう。それからでも十分に間に合うよ」


言うだけ言って俺も夜営の準備に取り掛かった。



実習2日目


 俺達はメモした群生地に来ていた。


(良かった。メモの群生地まで間引かれていないようだ)


実は内心ドキドキだった俺、というのもメモにある群生地は実習の前日にヘンリーさんや薬屋の店員さんに教えてもらった場所だからだ。


(学校がどこまで手を廻しているか分からない以上安心は出来なかったからな、取り敢えず最終手段も用意はしてるが使わないに越した事はないし)


とか考えながら採取し終え、次のポイントに移動しようと3人に声をかけようと思ったその時


「ねえ、フミヤ次のポイントには向かわずにメモの群生地に直接行かないかな?」


という提案をルナからされた。

 俺としては別に良いんだけど急にどうしたんだ?

どうやら顔に疑問が出ていたようでルナが理由を話始めた。

 昨日というか今日俺が寝た後(俺とルナは前半に見張りをやった為、寝る時間が日付を跨いだ)3人が話し合いをして今日もし群生地に薬草があった場合はポイントを目指すのではなくメモしてある群生地を目指そうという事になったとか。


 いや話し合いは良いんだけど何故俺をハブったし!内心でかなりのショックを受けている俺を気にせず3人は足取り軽く進んで行く。

 俺とは対照的に3人は昨日とは比べ物にならないほど表情が明るい、昨夜の話し合いの効果であろうか。

3人の明るい顔を見ながら俺は急いで3人を追いかけるのだった。



俺が書き慣れるには一体どれくらいの時間が必要なんだろうか?頑張ろう

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