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プロローグ1 突然の異世界

キュッキュッ、シャーシャー、シュッシュッ、


「完璧だ」


 自分の仕事ぶりに自画自賛をしてしまった。

俺が今なにをしているかというと工場のような所で石をひたすらツルツルに研磨するという作業に没頭していた。


 ところで皆は異世界という言葉を聞いて何を連想するだろうか?ちなみに俺はオレTUEEやチート能力でハーレム作っちゃったり、はたまたお姫様に勇者様なんて呼ばれたりするのが異世界な訳ですよ。

夢やロマンが詰まっているんですよ‼️

しかし現実は


「お~い、フミヤ~。現場監督が昼だから弁当取りに来いってよ」


ってなもので


 ああ、自己紹介が遅れたけど俺の名前は尾崎文矢おざきふみや、元気ハツラツの高校2年生だ。

 さて皆様も薄々感付いているでしょうが、ここ異世界なんです!最初にも言ったが異世界って夢やロマンがある世界なんですよ‼️断じて工事現場のバイトみたいな感じじゃないのですよ‼️では何故このような状況になっているかを説明しましょう。


 遡ること1週間前、俺は幼なじみの2人と昼休みに部室で弁当を広げながら馬鹿話をしていた。


「猫耳娘に会いたい、っていうか嫁にしたい」


と心の中の願望をポツリと呟いた俺に対して幼なじみの2人は、まるで可哀想なものを見る目で俺の事を見てきた。


「気持ちはなんとなく分かるが現実問題ムリだと思う願望を垂れ流すなよ」


 呆れた声で相槌を打ってくる幼なじみその1宮城浩司みやぎこうじである。

 身長は180いくかいかないかで目付きが鋭く髪は少し茶髪が入っていて、見た目は完璧にヤンキーである。

しかし見た目と違い実は真面目だ、髪は天然もので染めているわけではなく服装もキチンとしている、1人暮らしをしているため普通に家事が出来るし学校の成績もかなり優秀で上から数えた方が早い程だ。

 ちなみに俺が今食べている弁当も浩司の手作りだ。浩司の弁当は凄まじく、上手い!栄養良し!見た目良しの3重○の弁当で1度食べてしまうと逃れられない弁当だ。

 ちなみに週に1度俺の部屋を掃除しに来てくれる。嫁か!?お前は俺の嫁なのか!?浩司が女だったら確実にLOVEなロマンスが発生していた事だろう。


「まあ、猫は可愛いものなそういう意味では理解できるよ」


 優しそうな声で相槌を打ってくる幼なじみその2本城祐介ほんじょうゆうすけである。

 身長は180弱で優しげな微笑みを常に浮かべるイケメンだ。家は剣術道場で文武両道の超人だ。

性格も穏やかで優しく女の子にモテモテでファンクラブが存在する程である。

爆発すれば良いと思う。

 ちなみに前に一度彼女が出来て付き合い始めた時があり、その時に彼女から俺達との付き合いは考えた方が良いと言われたらしい。

 たしかに俺は自分で言っていて悲しいがアホな事を頻繁にしているし、浩司は見た目ヤンキーだしな。

彼女からしたら俺達は祐介の為にならない存在だと思われてもおかしくはないな。

 取り敢えず彼女に俺達の事を知ってもらおうと浩司と相談をしていたら祐介がやって来て一言


「彼女とは別れたよ」


と、は?いやいや何で急に別れることになったんだよ?と聞くと


「2人を理解しようとせず頭から否定する様な人とはこちらから願い下げだよ」


と珍しく不機嫌そうな表情で吐き捨てた。

意外と俺達3人の中では祐介が1番ドライだという事が解った瞬間だった。


 俺達3人は幼稚園の頃からの付き合いで親同士もまた仲が良く家族ぐるみで交流がある。

旅行など3家族で良く行くし互いの家に泊まりに行くのなどは日常的にあった。

 浩司の両親が海外赴任になった時は離ればなれになると思ったのだが俺と祐介の両親が浩司の事を定期的に見るという事と週に1回の連絡という条件で日本に残れる事となった。

 とにかく俺達3人はまんま兄弟の様に育って来た恥ずかしくて言葉には出来ないが、この世で両親と同じ位にイヤある意味では両親よりも信頼している存在だ。


 ちなみに部室で集まっていたと言ったが正式な部活ではなく、使われていない空き教室を勝手に占領して使っているだけだ。今はいないが、いつもは後3人友人達が集まっている。


「ラノベみたいに異世界に召喚なんて事態にならないだろうか」


とかなんとか妄想を垂れ流していた時にそれは起きた。


 地面が光を放ったのだ、陳腐だろ?導入部分としては面白みもない入りだろ?俺もそう思う。

っていうか魔方陣は?テンプレって大切だろ?なんて下らない事を考えながら俺達は光の中に消えていった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 光が止み目を開いて見た光景は草原だった。

「マジか!?」、「ウソだろ・・・」、「これは・・・」

三者三様の驚きを露にしてボーッとしてしまった。

 いち早く正気に戻った俺は「異世界」と呟き胸の奥から激情が沸き上がって来た。


「マジで異世界か?スゲーぞ!チートは?チート、ステータス」


と声を上げたが特に何も起こらなかった。


「え?ステータス!ステータスオープン!ウィンドウ!パラメーター!」


と思い付く限りの言葉を口にするが何も起こらなかった。「マジか?」つい叫んでしまった。


 どうやらこの世界にはステータスという概念はないらしい、イヤ!まだだ!まだ魔法がある!そう気を取り直して俺は腕を空に突き上げながら「ファイア」と唱えた。

ええ、何も起こりませんでしたよ。「神は俺を見捨てたのか」とブツブツ呟いている横で


「取り敢えず何があるか解らないから移動しようぜ、せめて身を隠せる様な場所を見つけないとヤバいだろ」


と浩司が危険性を主張し


「そうだね。今の僕達は食料や水、身を守る為の道具もないしね、早めにこの場所から移動しよう。問題はどの方角に進むかだね」


と祐介が続いた。

2人共すげえな

「で?どこに向かう?」、「で?どの方角に進む?」

と急に2人は俺に話を振ってきた。


 短い話し合いの末に俺達は東へ向かう事にした。

ちなみに東というのは太陽を見て方角を確認しただけだ、地球の太陽と同じ動きをしてくれていれば良いのだが、そして何故東に向かうかというと何かが移動した跡が残っていた為だ、それも結構多い数の跡だ。

正直危険がある可能性もあるが、せっかく見つけた可能性だ適当に移動するよりはマシであろう、人間に優しい生物だと良いな。


 歩き始めて結構たった、体感的に二時間くらいかな?草原の先に砂埃が見えた。

何がいるのだろう警戒をしながら少しずつ近づくと見えてきたのは犬?狼?みたいなやつと戦っている緑色の肌の人型の生き物だった。


「ゴブリンか!?」


俺はつい大きな声を出してしまった。

その声を聞き付けたのか何匹かのゴブリンが俺達に気が付いて何かを叫んでいる。

ヤバい周りには遮蔽物になりそうなものがない逃げるにしても何処へ?と考えてしまったせいで初動が遅れた。

しまったと思った時には遅くポニーのような生き物に乗ったゴブリン達に囲まれてしまった。

その中のゴブリンの一匹が周りのゴブリン達にギャーギャーと何かを言っているようだった、異世界に来て浮かれすぎていたと心の中で反省しつつゴブリン達の次の行動を油断なく観察していた。


 どうすべきか一か八かで特攻するには数の差がありすぎるしと考えている間にゴブリン達が動いた。

俺達を囲む様にして円を作り、周りを警戒し始めた、まるで俺達を守るような陣形だ。

俺達が怪訝に思っていると一匹のゴブリンが近づいて来て自分の耳を指差しながらギャーギャー言っているのだ。

ゴブリンに攻撃の意思はないようなので、取り敢えず俺は言葉が解らないからという事を身振り手振りでゴブリンに伝えた。

ゴブリンがひとつ頷くと腰の袋から補聴器のような物を取り出し、俺に渡してきた、そしてジェスチャーでそれをつけろと伝えてきたので俺は素直に補聴器をつけた。

その瞬間ズキッと頭に痛みが走った。


「む、つけなれてない?」


と誰かの声が聞こえた、えっと思い声がした方を向くとゴブリンだった。


「え?言葉が分かる」


「いっ!」、「くっ!」と横から聞こえた、どうやら2人も補聴器をつけたようだ。


「これで言葉が分かるでしょう?」


と目の前のゴブリンが言ってきた。

やはりこの補聴器のおかげらしい初めて異世界らしい物に触れたので少しテンションが上がり感動している俺の横で祐介がゴブリンと会話をしていた。


「あなた方は?」


「私達はアームズの町の冒険者です。この近くに魔物の群れが発生したとの報告を受けて討伐に来たのです」


 ちなみに俺は心の中で、え?これゴブリンとの会話なの?メッチャ理性的な会話なんだけどと失礼な事を考えていました。


 俺達に話し掛けて来たゴブリンが


「ここは戦場です、詳しい話は後にして我々について来てくれませんか?」


俺達3人は軽く目配せをして頷くと


「わかりました」


と答えた。

 会話をした限りでは危険性はなさそうだし、なにより行く宛がない。

俺達はゴブリンについて行くことにした。



 戦闘も終わり一段落したところで先程のゴブリンが俺達の所にやって来た


「お待たせしました。自己紹介が遅れましたが私はアームズで冒険者をしているヘンリーと申します。」


と自己紹介をしてくれた。

ゴブリンなのにヘンリーと内心考えながら俺達も簡単に自己紹介をした。


「ところで皆さんはこのような場所でなにをなさっていたのですか?見たところ冒険者や商人というわけでもなさそうですが」


 どこまで話すべきか考えたが良い誤魔化しが思い浮かばなかったので全てを正直に話す事にした。




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