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彼女はまさしく傾国の姫  作者: 池中織奈
姫と変化の前触れ
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1.とある転入生

「あら?」

 マリアローゼ・フィス・カイザはその日、少しだけ久しぶりに学園へと顔を出した。王宮での催しがあったため、彼女と幼馴染たち一同は特例で学園を休んでいた。

 学園の様子は休んでいても入ってくるようにしていた。だが、人づてに聞いた情報と自分の目で見た情報とではやっぱり色々違うのである。

 マリアローゼは、少しだけいつもと雰囲気の違う学園に、その綺麗な緋色の瞳を歪めた。

「アイゼス、ルミダ、情報収集してきなさい」

 マリアローゼたちへと視線を向けて生徒たちがざわめくのは日常。マリアローゼたちの事を噂するのも日常。でもいつもとは彼らは様子が違う。

 マリアローゼは、この学園の頂点に君臨する少女だ。学園の様子が違うのは自分の領地に変化があったというのと同様なのである。

 この学園はマリアローゼのために与えられた庭のようなもので、何か変化があるというのならば知る義務がマリアローゼにはある。

「ああ」

「わかった! マリアのために調べる」

 二人はそういって答え、マリアローゼの命を忠実に守ろうと動き出す。

 マリアローゼの周りには、シランとヒートが残っている。

「マリア……、どうにかする」

「だから、笑って。俺たちのお姫様」

 学園で何かあったのかしらとでもいうように眉をひそめていたマリアローゼに、シランとヒートはそういった。

 マリアローゼの周りに存在する彼らにとって、マリアローゼの表情一つ一つが見逃せるものではなく、彼らの心は一つだ。マリアローゼが、笑顔になるために行動する事。

「ふふ、頼りにしているわよ。私の幼馴染たち」

 マリアローゼは、美しく微笑んだ。見る者がはっと息をのむような美しい笑みを浮かべている。その笑みに、周りは魅了されていくのだ。








 *





「………ということだ」

 そして一限目の授業が終わった後、すぐにアイゼスとルミダはマリアローゼの元へと戻ってきた。仕事が早い事に、もうこの学園の変化の原因を突き止めたらしい。

 マリアローゼ、アイゼス、ルミダは図書室に来ていた。あとの二人は今はこの場にはいない。

「転入生が来られるの……。この時期にとは、珍しいものですわ」

 マリアローゼは、聞いた話に眉をひそめる。

「噂になっている原因は、転入の手続きに来たそのものが可憐な見目を持ち合わせていたからと。相変わらずこの学園の生徒たちは見目が良いものが好きですわね」

 噂になっていた原因は、珍しい転入生。転入の手続きの際にやってきた彼女は多くの生徒の目に留まったらしい。

 加えて、

「生徒会副会長であるスザクと仲良くしていたというのも気になりますわね。スザクはあまり笑わないと有名ですのに。昔の知り合いか何かなのかしら?」

 マリアローゼの取り巻きたちに続いて人気な生徒会の一人と、手続きの際に仲良くなっていたらしい。

 人気者が人気者と仲良くするのは問題がない。

 でも理由がないものが人気者と仲良くするというのは何分難しいものである。

 生徒たちは釣り合いを求める。あの方と仲良くするなら――、とどうしても人気者と仲良くなった生徒を見定めてしまうものである。

「一番の問題はそれがマリアの耳に今届いたことか」

「そうね。私が忙しいから配慮してくれたのかもしれませんけれど、後で学園長の元には顔を出す必要があるわ」

 マリアローゼはそういって、話を変える。

「それはおいておくとして、その転入生の方は一週間もしないうちに来られる。それが何か起こす可能性があるのならばどうにかする必要はあるわ」

「そうだね、マリア」

「伯爵家の庶子だという話だけど、この時期に転入してくるというのも不思議だわ」

 マリアローゼは、そんな風に告げる。

 今は学年が上がり、学期が始まったばかりの時期だ。そんな時に転入してくる存在なんてそうはいない。

「庶子という事は貴族の事はわからないでしょう。ならば――――」

 マリアローゼは、転入生に対する事を口にする。それを聞いて、アイゼスもルミダも「マリアが望むなら」と笑ったのであった。






 マリアローゼ・フィス・カイザ。

 彼女の学園に、転入生がやってくる。





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