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彼女はまさしく傾国の姫  作者: 池中織奈
姫と高貴なる人々
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4.ルミダ・ミグ

「マリアー!!」

 緑色の髪に、黄色い瞳を持つ少年が、マリアローゼの元へとかけてくる。

 マリアローゼと、傍にいた一人の少女とアイゼスは少年の方へと視線を向けた。

「ルミダ」

 魔術師長の息子である、ルミダ・ミグ。

「おはよう、マリア!!」

「ええ、おはよう。ルミダ」

 まるでご主人様を見つけた犬のように目を輝かせて、マリアローゼを見ている。

「ちょっとおおお、ルミダ、私たちには挨拶はないわけ?」

 怒ったように口を開いたのは、栗色の髪を持つ気の強そうな少女である。カルド・ヤーングス。魔術科に所属するルミダの婚約者である。

「ん? ああ、カルド、居たのか」

「……お前は相変わらずだな。カルドとは婚約者だろう?」

「だってマリアが他に目がいかないぐらい輝いていて、マリアが居ると他の者なんて目にはいんないし」

 アイゼスに言われた言葉に、あっけからんとしてそんなことを言う。

「……はぁ、まぁ、仕方ないわ。マリアが魅力的なのは同感だわ。マリアは可愛い」

 婚約者がマリアローゼを優先していても仕方がないと思っているらしいカルドはそういって、ぎゅっとマリアローゼに突然抱きついた。

「まぁ、なぁに、カルド」

「ふふ、マリアは抱き心地もばっちり!」

「カルド、ずるい!」

 上からマリアローゼ、カルド、ルミダの台詞である。

「ふふふ。同性の特権よ!! マリアは凄く甘いにおいがするの。あああ、いい匂いがするぅ」

「もう、カルド、くすぐったいわ」

 なんだか、変態っぽくマリアローゼのにおいをかぎだしたカルドに、マリアローゼは困ったように笑った。

 それを見てカルドは、抱きつくのをやめるが、マリアローゼへのスキンシップは相変わらず激しい。

「羨ましいでしょー! ルミダには出来ない事よ!」

「はっ、いいし! 俺はカルドよりももっとマリアと一緒に居るもんね!」

「ふふふ、甘いわ。私は同性だから着替えの場とかにもいれるのよ? 所詮男と女の友情よりも、女同士の友情の方が硬いのよ!」

「なっ。マリア、俺とカルドどっちが好きだ!?」

 婚約者同士である二人であるが、なぜかマリアローゼの事を取り合っていた。アイゼスは、そんな二人を呆れたように見ている。

「どっちも大好きよ。私の大事な幼馴染だもの」

 でも言い合っていた二人は、マリアローゼがそんな風に笑って、花が咲いたような笑みを浮かべれば言い争いをやめる。

「俺も大好きー、マリア!」

「私も大好きよー、マリア!」

 そして二人してそんなことを叫んでいる。

 いうなればこの二人、似たもの同士な婚約者同士であるといえた。

「あ、そうだ、マリア。父さんがマリアに魔術師練に来てほしいっていってた!」

「まぁ、そうなの? 何の用かしら?」

「なんか新しい魔術具の研究が進んでいるみたいで、マリアの意見聞きたいってさ」

「そう。放課後でも構わないかしら?」

「うん! 大丈夫っていってたよ。俺も一緒行く」

 ルミダは相変わらず嬉しそうににこにこと笑って、マリアローゼの事を見ている。同じ年であるが、マリアローゼとルミダは姉弟のようにも見える。

「ルミダ、私もいっていい?」

「ん? 別にいいと思うぞ」

 マリアローゼ、ルミダ、カルドは魔術科に所属しているのもあって、三人とも魔術に関する関心が高い。

 カルドも魔術師長がマリアローゼに意見を聞きたいといった新しい魔術具に対して興味があるのだろう。目をキラキラさせている。

「……お前たちは、本当に魔術が好きだな」

「ええ、だって楽しいじゃない」

「おう、だって魔術は最高だぞ?」

「うんうん、最高だよねー」

 アイゼスの言葉に、マリアローゼ、ルミダ、カルドはそれぞれ答える。三人とも偽りない本音であるといわんばかりの断言である。

「そうか」

「ええ。そうよ。ああ、放課後が楽しみだわ」

 マリアローゼも、楽しそうにそう告げる。嬉しそうにほほ笑むマリアローゼを三人は優しく見つめているのであった。







 ルミダ・ミグ。

 元気いっぱいの、魔術師長の息子。

 彼は『魔術の申し子』と呼ばれている。




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