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彼女はまさしく傾国の姫  作者: 池中織奈
その姫、まさしく傾国の姫である
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3.彼女と敵対した者の末路はどうなるのでしょうか?

本日三話目になります。

 少女が自分がヒロインだと叫んでも。

 少女が自分が正しいと言い募っても。

 それでも、少女がヒロインで、少女が正しいとはだれも肯定などしない。

 『至高の姫』とその婚約者に敵対したものに味方をしようと思うものも居ない。

 自国の王族と他国の皇太子。

 そんな権力者相手に反論をするなんて身分社会を理解していない者のする事である。

 ましてや、自国の王太子に掴み掛るなんて真似は普通の令嬢ならするはずもない事である。

 

 それを行う時点で、白い目で見られるのは当然である。





「それには何が書かれているんだ、フィス」

「……私たちの攻略法というか、私たちについてだね」

「は? 攻略法だと? なんだ、この女は本気で俺を落とすつもりだったのか? 俺がローゼ以外に興味を持つわけがないだろう」

 そういいながらジクサードはノートを奪い取って読む。

 それから騎士に押さえつけられたままの少女に視線を向ける。

「確かに、おかしいな。この女が知るはずもない情報が載っている。それになんだ、この『VS傾国の姫~王子様を手に入れろ』という馬鹿みたいなタイトルは。確かにこれは、悪魔付きだな」

「悪魔付きって、私は、エンジュ・アンジェはこの世界のヒロインで、傾国の姫を倒して、悪役を倒して幸せになれるはずなのに。なんで……」

 錯乱状態にある少女は、そんなことを言い募る。

 それを横目に今度はそのノートが彼女の幼馴染達にわたる。

「ふぅん。俺の攻略法ね……。マリアを蹴落とそうとしている人間に俺がなびくわけないのに」

「あら、でもアイゼス。案外あっていない? これ、マリアと敵対しておらずこういう態度されたら少しは何か思うんじゃない?」

「逆にあっている面があるからこそ恐ろしいというか……この悪魔付きは少なくとも俺たちを知っているという事だろう?」

 アイゼスの言葉に、ミーレアンが言えば、何とも言えない表情の答えが返ってくる。

 ある程度あっているからこそ、余計に気味が悪いと彼らは思うのだ。

「スザクもカタロスも、この攻略対象なんだな! つか、この攻略通りに攻略されているし、マジ笑う。あとミラン達もか。というか、これ俺達に、生徒会全員に、ジクサード様とフィスオ様たち兄弟って、これ全部落とす気だったって、こいつの方がビッチじゃなんか」

 笑いながらルミダが言う。

 事実、少女は全員を落とす気満々だったようで、そういうメモがノートには残されていた。アイゼス達に関しては攻略済みの文字まである。

「……婚約者が居る男をはべらして落としたと喜んでいたのか。何とも性悪な悪魔付きであるな」

 シワンが冷たい目でそういって、押さえつけられたままノートを読まれて慌てている少女を見る。

「元々のエンジュ・アンジェさんがかわいそうだわ。悪魔付きという事は、元々のアンジェさんの身体をこの方はのっとってしまったという事でしょう? だったら、この方をどうにかするにしても、エンジュ・アンジェさんとアンジェ伯爵家の名誉は保たせてあげたいわ」

 ノートに視線を向けながら、少女に冷めた目ではなく憐みの目を向けてそういうのは彼女である。

 彼女の言うとおり、少女が悪魔付きだというのならば元々のエンジュ・アンジェの身体をのっとってしまったという事になる。それを思うと彼女は少し悲しくなった。

「もし、悪魔付きではなかったら、本来のエンジュ・アンジェさんと仲良くなれたかもしれないのに……。このような悪魔付きの方に人生を奪われてしまうなんてかわいそうだわ」

 悪魔付きとは乗っ取りである。過去には悪魔付きの中でもまともな精神を持ち合わせていたものもいたが、本来の存在の人生を奪ってしまったという事実は変わらない。まともな悪魔付きは、人生を奪ってしまったことに嘆いて自殺したものも居るぐらいだ。

 だというのに、彼女の目の前に居る少女はそんなこと欠片も考えていないようだ。人生を奪ってしまった事も、何もかも……。

「そうだね。本当に本来のアンジェさんとならマリアは仲良くなれたかもしれないね。それを思うと、残念ね。それにしても悪魔付きのこの子の対処はどうする?」

 カルドは悲しそうな顔をする彼女にそう告げる。

「そうだね、一番の被害者はマリアだからマリアが処罰を決めてくれないかい?」

 兄である王太子にもそういわれ、彼女は口を開く。

「……なら、幽閉という形にするのが一番良いと思うわ。自国の王族と他国の皇太子にはむかった存在をそのままにしておくこともできませんし、この悪魔付きの方はやりすぎました。まだもう少し周りの注意を聞いてくださる方だったらそれ以外の手もあったのですが」

「処刑じゃなくていいの? 処刑してもいいぐらいだと思うけれど」

「カルド、死んだらそこで終わりというのは罰にならないと思うの。エンジュ・アンジェさんの人生を奪った償いをしていただかなければならないわ。そして、悪魔付きとして持っている情報をこの国のために活用してもらいましょう」

 彼女は本来のエンジュ・アンジェの事を憐れに思うが、今、その身体をのっとっている悪魔付きに容赦する気もない。

「なんで、私が……私はヒロインなのに」

 そうしてずっとそういい続けた悪魔付きの少女は、騎士たちに連行されていった。

 そして、彼女に惹かれて生徒会の仕事をさぼっていたスザクとカタロスは生徒会を解任、プラスして、実家から勘当されることになったのであった。






 『至高の姫』に勝利を確信してはむかったものは、幽閉された。

 悪魔付きとして。

 そして本来のエンジュ・アンジェは病死と発表された。

 それもアンジェ伯爵家に王家にはむかったものという汚名をかぶせないための処置だった。

 そして、一連の騒動は幕を閉じた。





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