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彼女はまさしく傾国の姫  作者: 池中織奈
姫と高貴なる人々
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3.シラン・ワスア

「マリア、お手をどうぞ」

「ええ」

 自然にマリアローゼに手を差し伸べる赤髪の少年、シラン・ワスア。

 カイザ王国の騎士団長の息子という地位に居る彼は、喋らない事で有名である。必要最低限しか声を発さない。―――でも、親しい者の前では、特にマリアローゼの前ではよく口を開くことで有名である。

「ああ、シラン様っ」

「かっこいい」

「私も手を差し伸べていただきたい」

 シランも、マリアローゼの取り巻き筆頭のような位置に居るが女子生徒たちから常に黄色い声援を浴びているような少年である。

 尤も、シランは取り巻きの中でも男子生徒たちからも憧れの目を向けられるような少年であった。

 シランは、騎士団長の息子。

 父親に幼い頃より剣技を仕込まれた彼は相当な実力者である。そんな彼は騎士科に所属している。

「シランは、相変わらず人気者ね」

「マリアの方が人気だろう?」

「ふふ、私が人気なのは当然よ。私を誰だと思っているの?」

 シランの言葉に、否定するわけでもなく不遜な笑みを浮かべた。自信に満ち溢れた微笑み。そんな傲慢とも取れるような態度も、マリアローゼがやれば魅力的に映る。

 マリアローゼの言葉に、シランも笑った。

「マリアローゼ様とシラン様が笑っていらっしゃるわ」

「ああ、なんて絵になるんでしょう」

「マリアローゼ様にあんな風に笑いかけてもらえるなんてっ」

 周りの生徒たちから声が上がった。

 今、マリアローゼの傍にはシランしかいない。多い時には取り巻き筆頭である四人と、それにプラスしてマリアローゼの幼馴染とか親しい者たちも居るわけだが、今は二人だけである。

 しかし、マリアローゼの周りにシランしかいなかったとしても、一般生徒たちはマリアローゼに気安く近づく事はかなわない。

 尤もそれを不満に思う生徒たちはいない。

 なぜなら、それだけマリアローゼ・フィス・カイザは彼らにとって特別な存在であるのだから。

 この学園の頂点。

 この国のお姫様。

 それが彼女であるのだから。

 彼女は彼らにとって特別であるが故に、人気者たちに囲まれていようとも文句を言う存在など居るはずもない。

 第一、マリアローゼの周りに取り巻き達が居るのは昔から当たり前の事であり、ほとんどが貴族の子女たちである生徒たちはそれを当たり前として受け止めているのである。

 今は放課後である。

 マリアローゼは、シランに手を引かれて王族専用の馬車へと乗り込んだ。シランも一緒にである。

 馬車の中には護衛の騎士たちが存在する。マリアローゼが危険にさらされないようにと、彼女の周りは過剰なほどに護衛がついている。

「マリアローゼ様、お疲れ様です」

 騎士たちは、学業に励んでいたマリアローゼにそんな風に声をかける。

 彼らはマリアローゼにとって帰心の知れた騎士たちであった。幼い頃からマリアローゼの護衛についていたのだ。

 マリアローゼは、彼らに向かって微笑み、馬車に腰かける。

「今日は、実技の授業でね―――」

 マリアローゼは、微笑み、今日の授業であった出来事を騎士たちに向かって話す。授業をさぼることも多いマリアローゼだが、受けている時はとことんまじめに受けている。

 魔術科に所属しているマリアローゼは、魔術が好きなのだろう。その事を話すマリアローゼは、楽しそうである。

 フランや、そして護衛の騎士たちは魔術の才能を持たない。だからこそ、剣を磨いたと言える。

 そんな彼らは魔術の知識をそこまで持っているわけではない。魔術師が敵に回った場合の対処法は学んではいるが、使えないものを学ぼうとは思わないのだろう。

「魔力を――」

 魔術を使えない彼らであるから、マリアローゼが言っている内容も理解出来ない部分もあるだろう。でも気分を悪くするわけでもなく、楽しそうに言葉を発するマリアローゼの話を聞いていた。

 彼らにとってみれば、マリアローゼが楽しければそれですべてが良いとそんな風である。

 そして王宮に到着するまでの間、マリアローゼは魔術について語るのであった。




 シラン・ワスア。

 圧倒的な剣技を持つ、騎士団長の息子。

 彼は『寡黙の騎士』と呼ばれる。



 

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