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彼女はまさしく傾国の姫  作者: 池中織奈
その姫、まさしく傾国の姫である
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1.その男は誰でしょう?

本日二話目

 少女は彼女の立場をとってかわるために行動を起こした。

 彼女を蹴落とすために。

 『傾国の姫』を倒す存在になるために。

 『傾国の姫』を倒して、自身が幸せになるために。

 そのために魅了の魔法のかけられたネックレスの効果を無効にした。

 というのに、彼女は揺るがない。

 それどころか、言い募る少女の前には、彼女の婚約者を名乗る男が現れた。




 ジクサード・シン・ディスターニアという尊き名を持つ男が。









 ジクサードの言葉を聞いた途端、周りは固まった。生徒会の二人も固まった。ただ彼女と、彼女の幼馴染達と、彼女の兄は動揺もしない。

 ただ、彼女は問いかけた。

「ジク様、もう言っても大丈夫なのでしょうか?」

「ああ。もうすぐローゼも学園を卒業するしな。ころあい的には問題ないだろう」

「ふふ。ジク様の婚約者だって堂々ともう言っていいのね。嬉しいわ」

「俺も、ローゼが俺のだといえるのは嬉しい」

 マリアローゼ・フィス・カイザと、ジクサード・シン・ディスターニアは周りが固まっているのをそっちのけで笑い合っていた。

「ジクサード様はお姫様の婚約者が幼馴染達かもとかいう噂でも嫌がってましたもんねー。あはは、それにしてもお姫様の前だと表情筋動きすぎていて面白いですね」

「黙れ、シビィ」

「本当の事でしょう?」

 ジクサードの側近であるシビィはからかうように笑っている。

「マリア、そのネックレスどうしたんだい?」

「お母様がこれに魅了の魔法をかけていたようなの。フィスお兄様、アンジェさんがそれを解いた時に壊れてしまって……」

「なんだって! マリアの大事な母君の形見を壊すなど……」

 王太子はネックレスの話を聞いて、茫然としているエンジュ・アンジェを睨みつけた。

 少女は王太子殿下というこの国で最も尊き存在に声をかけられているというのに、相変わらず無礼であった。

「どうして、隠しキャラのジクサードと、王太子のフィスオがここに。それに婚約者って……」

「呼び捨てにするな」

 ぶつぶつと告げた言葉を聞き取ったジクサードが冷たく言う。

「本当に。調査したものから聞いていたけど君はなんなのだい? ジクサードの事を呼び捨てにする、私の事も呼び捨てにする。伯爵家の庶子という立場でありながら、どれだけ無礼な行為をしているか自覚があるのかい?」

 王太子もそういって、彼女には決して見せる事もない冷たい瞳を少女に向ける。

「ディスターニア帝国の皇太子ジクサードと私の可愛い妹の婚約はね、大分前から決められていたのだよ。君は私の可愛くて一途な妹は違い、男たちをはべらせるのを好きなようだから、もしかしたらジクサードの事も、私の事もはべらせたかったのかもしれないけれども、そんなのありえないのだよ。

 ジクサードはね、私の可愛い妹に一目ぼれをしたのだよ。私の妹は可愛いから当然の話だけれどね。大国ディスターニア帝国の次期皇妃なんて立場だと可愛い妹が危険な目に合うかもしれないだろう? それもあって内密に取り決められていたのだよ。それにしても君は確かに一般的に見てみれば愛らしい外見をしているかもしれないが、私の可愛い妹の前では当然霞むね。そもそもこんなに可愛い妹が婚約者であるジクサードが君に落ちるはずなどまずないし、私自身も可愛い妹を蹴落とそうと考えているような無礼な存在相手に好意を抱くというのがまずありえないね。君の頭はどうなっているのかな? どれだけ頭がからっぽなのか是非とも聞きたいよ」

 王太子は一気にそんな事を言った。

 何回可愛い妹と口にしたのだよという突込みをするものはいない。

「マリアローゼ様が、ディスターニア帝国の次期皇妃……」

「きゃあ、流石マリアローゼ様だわ。そんな大国の皇太子に一目ぼれされるなんて」

 口々にそれを聞いた生徒たちは言う。

 そう、ディスターニア帝国は小国であるカイザ国とは違い、この大陸でも有数の大国である。

 誰もが名前を知る巨大な国だ。

 そんな国の皇太子という立場に居るのが、ジクサード・シン・ディスターニアである。

 そしてその婚約者が、この国の『至高の姫』であるマリアローゼ・フィス・カイザなのであった。

「私たちのマリアは可愛いからジクサード様が惚れるのも当然だもんねー」

「マリアは世界一可愛いものね」

 彼女がジクサードの婚約者であることを、自分の事のようにカルドとミーレアンが自慢をする。

 彼女たちにとって、大好きな幼馴染がそんな立場に居る事が嬉しくて仕方がないのだろう。

 尤も彼女たちが嬉しそうなのは、次期皇妃という尊き立場に彼女がなるからというのではなく、彼女を彼が愛して、彼女も彼を愛しているのを知っているからこそ、大好きな彼女が幸せになれると嬉しいのだ。

 そんな周りがジクサードの婚約者が彼女な事を受け入れている空間の中で、

「ど、どうして」

 少女だけが言い募っていた。









 突然現れた男の名は、ジクサード・シン・ディスターニア。

 ディスターニア帝国の皇太子。

 次期皇帝という立場にいる尊きもの。

 彼の男は、この国の『至高の姫』の婚約者。

 マリアローゼ・フィス・カイザは、次期皇妃という尊き立場にいる。

 


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