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彼女はまさしく傾国の姫  作者: 池中織奈
姫の周りは変化していく、そして少女は嗤う。
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2.その心は、苛立っている。

 『至高の姫』の学園はかき乱される。

 たった、一人の少女によって。

 でも彼女は動じない。

 同じているのは、何時だって一番になれない男。

 生徒会長、ミラン・ルミダル。

 学園のトップにはなれない。しかし、学園内で一目置かれている。

 そんな存在は、その少女の起こす騒動に疲弊している。

 生徒会という組織の中から、二人も消えてしまったのだ。

 たった五人しかいない組織の中から二人もだ。

 組織は僅か三人で回されていた。


 そして、その時、ミラン・ルミダルは職員室へと書類を持っていこうと急いでいた。



 王侯貴族の通うこの学園の運営というのは忙しい。やることは山ほどある。幸い、学園にマリアローゼ・フィス・カイザという絶対的な存在が居る故に、厄介な事件などは少ないがそれでも多い。

 ミラン・ルミダルは、学園において何事においても一番になれない存在である。

 生徒会長という立場だって、もし彼女がやりたいと言っていたのならば生徒会長は彼女がやっていただろう。加えてその場合の生徒会は彼女の幼馴染達で埋まってしまった事だろう。

 それは安易に想像出来る。

 ミラン・ルミダルの生徒会長という地位は、誰よりもそれに相応しいと乞われたわけではなく、彼女がやりたいと望まなかったからとミランがやることになったのだ。ミランがやりたいと声を上げ、身分的にも問題がなかったために、会長になれた。

 本当にそれだけの話だ。

 何にでも一番になれないと知っていたとしても、一番になりたいと行動できる男だった。負け続けても折れない心を持つ男。それが、ミランであり、そんなミランだからこそなんだかんだで生徒会長として認められているともいえる。

 そもそもミランが生徒会長として認められていないのならばさっさと蹴落とされている。マリアローゼが「あんな生徒会長は相応しくない」と一言言えば、有能な幼馴染達は動いただろうし、一般生徒達もミランを蹴落としただろう。

 そういう事実を全て受け入れた上で、ミランは努力をしているのである。

 もちろん、彼女やその幼馴染達に何か思わない事もないが、それはそれである。

 さて、職員室へと急いでいたミランは人にぶつかった。

「すまないっ」

 ミランは慌てたように声を上げ、そのぶつかった存在を見て固まった。

「ミラン先輩、私は大丈夫ですよ」

 それは、生徒会が大変になっている原因である少女-―エンジュ・アンジェであった。

 にっこりと笑った顔はかわいらしいが、ミランの票所は堅い。

「お仕事ですか、大変ですね」

「……大変だと思うのならば、スザクとカタロスに仕事をするようにいってくれないか?」

「遊ぶ事も出来ないほどの仕事量なんて学生のやる量ではないです! ダッシュ兄様に言って減らしてもらうから待っててくださいね」

「いや、減らさなくていい」

 ばっさりとミランは言う。

 それは本心からの言葉であろうが、エンジュはそんなものお構いなしとでもいう風ににこにこしている。

「強がらないでください。私はあなたが大変なのを知っていますから!」

「……そうか。どけてくれるか」

 私は貴方の事をわかっていると、そんな風に自信満々に笑うのを見てミランはただそういった。

 そしてすたすたと歩き出す。

「あ、待って、ミラン会長」

 などと言って追いかけてくるエンジュを振り切ってミランは職員室へと急いだ。

 職員室の中へと入り、溜息を吐く。

「ミラン君、お疲れ様。どうしたの?」

 生徒会顧問である女性が心配そうに問いかけてくる。

「少し、絡まれたもので」

「ああ……アンジェさんか」

「はい。正直何を言っているのかよくわかりません」

「危険思考をしているとは聞いているけれど……あ、そうだ。ミラン君、三人で回すのは大変だろうから補助員を明日からつけられるようになったよ」

「本当ですか?」

「ええ。だから少しは楽になるわ」

 そういわれて、ミランはほっとしたように息を吐く。

 それからミランは職員室を後にして、生徒会室へ向かう。

 その最中、ミランはふと中庭を見た。

 そこにあった光景は、エンジュ・アンジェとその取り巻きとかしている男たちだ。

 ミラン達が必死に仕事をこなしている中で、仕事をするべき存在である二人がそこに加わっている。

 ミランの顔がゆがむ。

 加えてそこにミランが勝手にライバル視しているアイゼス・トールまで加わっている。

 先ほどの会話も相まってだろう。ミランの顔は苛立ったように歪んでいる。

 加えて、

「は?」

 そこに加わってきたもう一人の影が居た。

 ミランもよく知っている男。

 いや、この学園の中でその男を知らないものはまずいないだろう。

「あいつまでだと……!?」

 ミランの視線の先には、緑色の髪を持つ少年ルミダ・ミグが居た。




 何故と、生徒会長の心にはその思いが積もる。

 生徒会の仲間だけではなく、また一人と少女の元へ行く事に。

 変わらないと思っていた学園が変化していくことに。

 そしてわけのわからない事をほざいてくる少女自身に対して。

 その全ての事が。

 生徒会長は、苛立っている。


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