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彼女はまさしく傾国の姫  作者: 池中織奈
姫は動じず、されど学園は変化する
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2.王宮の一室にて

 マリアローゼ・フィス・カイザの周りは、最近どこか慌ただしい。

 それは、『至高の姫』の幼馴染のうちの一人が転入生であるエンジュ・アンジェの元の傍に控えているからである。

 それに加え、『至高の姫』の学園の中で、生徒会の副会長という立場にあるスザクまでもがその傍にいるからというのもある。

 学園は、マリアローゼ・フィス・カイザを中心に回っている。

 彼女は、学園のトップである。

 彼女は、学園の意志である。

 彼女の望みは、学園で総力を持ってかなえるべきである。

 ―――そんな風にされている学園で、それを否と唱える存在が現れたのだから、それはもう荒れるのも仕方がないといえば仕方がないことなのである。

 大多数にとっての常識を、たった一人の非常識が乱している。いうなれば今はそういう状況である。


 さて、そんな不穏分子が存在している中でカイザ国の王宮の一室の中にはマリアローゼ・フィス・カイザの幼馴染たちが集まっていた。




「では、エンジュ・アンジェについての報告を」

 その一室、王宮内における会議室の一部屋の中にで赤髪の少年――シラン・ワスアの声が響き渡る。

 この場には、5人の人影が存在する。

 一人は今声を上げたシラン・ワスア。

「見目の良い男子生徒に絡んでいるわ。シラン達もそうだけど、あとは生徒会ね」

 二人目はカルド・ヤーングス。学園内でのエンジュ・アンジェについての事を語る。

「私も情報集めたよ!! スザクが落ちたのは、なんか作り笑顔指摘されたからだって聞いたよー。意味わかんないよね! 生徒会に関してはチュルカが敵視されていて困っているみたい!」

 三人目はカルドの妹であるネル・ヤーングス。

「伯爵家の方に関しては後ろ暗いところは今の所ないね。寧ろすがすがしいほどにアンジェ伯爵家は良い貴族だよ。どうしてあんな子を学園にやったのかが疑わしいぐらいだ」

 四人目はヒート・ウスラルチ。

「学園に入る前のエンジュ・アンジェは特に問題がなかったみたいよ。でも前の情報正直関係ないわね。今何を起こしているかが重要だもの」

 五人目はリューリ・ミサ。

 エンジュ・アンジェの元へと侍っているアイゼス・トール以外の二人――ルミダ・ミグとミーレアン・イクアはこの場にはおらず、マリアローゼの傍にいるようだ。

 この場で彼ら五人は、エンジュ・アンジェに関する話をしている。学園内の事だけではなく、その以前の事や、エンジュ・アンジェの実家の事までしっかり調べているところは流石というべきだろう。

「エンジュ・アンジェが何を考えているのかはわからないか?」

「んー、流石にそこまではわからないかな。ただ話した事のある子の話では結構危険な思想しているかもっていってたよ。注意は必要だね」

 シランの問いかけにカルドがそういって答える。

「一番重要なのは、マリア姉様にとって有益な存在かどうかってことだよね」

「そうだね。美しい僕らのお姫様の学園を乱しているのは感心しないが、それだけならまだ良いだろう。アイゼスを横に置けて調子に乗っているようだし、マリアの事を睨みつけているのも見られたと聞くからね」

 ネルとヒートもそんなことを言う。

 この場に存在している五人にとって、エンジュ・アンジェの事はマリアローゼ・フィス・カイザという彼らのお姫様にとってどういう存在であるかどうかが重要であるらしい。

 アイゼス・トールがエンジュ・アンジェの傍に控えている事に対しても特に何も感じていないとでもいうような会議である。

 エンジュ・アンジェは、いや、学園の生徒たちもだが、アイゼス・トールが転入生の元へ行ったことに対して大きな反応を示しているが渦の中心にいるといっても過言ではないマリアローゼ・フィス・カイザとその幼馴染たちの間ではそれはそこまで重要な事ではないようだ。

「私たちのマリアに対して睨みつけるというのがねぇ……。そもそも伯爵家の庶子という立場でしかないのにどうしてマリアの事を敵視出来るのかしら。学園内でマリアの事を悪く言うだなんて自殺行為だってわからないのかしら」

 リューリもそう口にする。

「エンジュ・アンジェと親しいという学園長も問題だ。調べはついている」

「でもまだね。エンジュ・アンジェの調べをつけてからやった方がいいでしょう。そもそも何故あの転入生がマリアを敵視するに至ったか、そしてあれだけ自信にあふれているか。それを調べなければならないわね」

 マリア、マリア、マリアと彼らの会話の中では、マリアローゼ・フィス・カイザの名前ばかりが飛び交っている。

 彼らの中心は、彼女である。

 彼らにとって一番大事な存在も、彼女である。

 彼女を大切で仕方がないとしている存在たちこそが、彼女の幼馴染である。

 彼らは彼女のために、彼女を思って、そしていつだって行動している。

「わからないことが多いけれど、とりあえずマリア姉様のために、頑張らなきゃね!」

「そうよ。マリアのために」

 彼らは、そう口にして笑った。




 王宮の一室にて。

 すべては彼女のためにと、彼らは会話を交わす。



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