村人のカールトンとペグ村
ペグ村、二日目の朝。
集会所の空気はまだ冷たく、窓から差す陽光だけが白い息を金色に変えていた。
「俺はパターン2でやりたいです。」
カールトンは、震える膝を押さえながら、はっきりと告げた。
「ほう、何故だ?」
フェイゲンが片眉を上げながら問う。
「パターン3のフェイゲンさんの追放ですが、俺はフェイゲンさんの事を信じたいです。」
カールトンは真正面からフェイゲンを見つめた。
最初は怖い人だと思っていた。
でも、あの怖さの奥に、初心者の自分を必死に生かそうとする優しさがあった。
だから、信じたい。
「……うむ」
フェイゲンは小さく、満足げに頷いた。
「それで、パターン1の俺とベッカーさんの二択なんですが、俺、こっちもベッカーさんの事、信じたいんですよ。」
カールトンは横目でベッカーを見る。
ベッカーは口元を緩めていた。
「いや、わかんないですよ? もしかしたらベッカーさんが狼かもしれません。でも、俺の中ではベッカーさんは村人なんじゃないかって思うし、例えそれが村人同士のオーディションだったとしても、ベッカーさんとは戦いたくないです。」
ベッカーのことを思い出す。
最初に声をかけてくれた人。
「死ぬぞ?」と脅すような口調で、でも必死に「生きろ」と言ってくれた。
だから、戦いたくない。
「……ふむふむ」
フェイゲンが頷く。
「それに、ベッカーさんも言いましたよね?最初に俺との戦いを『気乗りしない』って言ってましたよね?」
カールトンはベッカーに視線を移す。
「へへ、よく覚えてたな?確かにその通りだ。どうしてもパターン1でやるってならお前と戦うが、正直な話、気乗りはしてないね。」
ベッカーが照れ臭そうに笑った。
「これ、パターン1の該当者は二人共、気乗りしてませんよね?それなら無理にこのパターン1をしなくてもいいんじゃないですか?」
カールトンはフェイゲンに向かって言う。
「つまり、パターン1もパターン3もやりたくないから、
消去法でパターン2を選ぶって事でいいのかな?」
そこにチャックが口を挟んだ。
「あっ、いや……それは違います……一応、理由があるんですよ……」
カールトンは慌てて口を開く。
「よし、その一応を聞かせてくれ」
フェイゲンが促す。
カールトンは一度深呼吸して、
占い師の二人――バクスターとパーディをまっすぐ見据えた。
「俺、フェイゲンさんも、ベッカーさんも『狼と疑ってない』んですよ。だからやりたくないんです。でも、占い師の二人……バクスターさんとパーディさん、どっちかは偽物なわけじゃないですか?それが狼か狂人かはわかりませんけどね?」
二人は黙ってカールトンの言葉を受け止めている。
「パターン1もパターン3も俺にとって信じたい人……『村人と思う人』の追放になってるんですよ。でも、パターン2だけは『確実に偽物がいる』所の追放が出来るんですよ。だから、俺、今日はパターン2を希望したいです。」
言い切った瞬間、
カールトンは自分でも驚くほど胸がすっと軽くなった。
「いい主張だな。カールトンはパターン2希望だそうだ。さぁ、他の民、反対意見はあるか?」
フェイゲンが静かに辺りを見回した。
「俺もパターン2が希望だ。カールトンの主張は狼の追放逃れには見えねぇからな。こんなヤツと戦いたくねぇ。」
ベッカーが肩をすくめて笑う。
「自分もパターン2でいいですよ。フェイゲンさんに違和感は感じてないですし、パターン2で最終日までは行けますからね。」
チャックも同意した。
「……占い師二人はどうだ?」
フェイゲンが、バクスターとパーディに視線を移す。
「自分もそれでいいですよ。」
パーディが静かに、しかし力強く告げた。
「くっ、俺は……」
バクスターは歯を食いしばり、俯いたまま呟いた。
「結局、俺達占い組が争うか、カールトンとベッカーが争うか、何処かで戦いが起きるんですよ。それなら、俺はカールトンの事、占ってないけど、村人だと信じましょう。戦うのは俺達占い組でいいですよ。」
パーディが続ける。
「パーディはパターン2でいいようだな。ではバクスターは?」
フェイゲンが静かに問いかける。
バクスターはしばらく俯いたまま、
肩を小刻みに震わせていた。
そして、長い溜息を吐くと、ゆっくりと顔を上げた。
「ダメだ……無理だ…… 俺、狼です……ギブアップです……」
その瞬間、朝の陽光がバクスターの顔を容赦なく照らし出し、汗に濡れた額がキラリと光った。
カールトンは、ただただ目を丸くして、その告白を聞いていた。
集会所の空気が、凍りつく。




