表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

62/67

狼のパーマー

ペグ村の初日の議論で、追放者に選ばれたのはパーマーだった。

パーマーの魂は『転生』の準備を始めていた。


しかし、パーマーは転生を行わずに、魂だけのままペグ村の集会所にと戻った。


『この戦いの行く末がどうなるか見守りたい。参加した自分には結末を知る義務がある』


そしてペグ村、二日目の朝。

空はまだ薄い藍色を残しながら、東の端が茱萸色に滲み始めていた。

集会所の古びた扉が軋みながら開き、八人の村人が次々と朝の光の中に姿を現す。


パーマーは魂だけの、半透明な姿で、昨日自分が座っていた椅子の背もたれに腰掛けていた。


「おっ、8人いるみたいだな? 狩人が護衛成功したみたいだな。とりあえず、パーマーの霊結果を発表する。パーマーの霊結果は黒だ。狼吊りは成功だ。」

フェイゲンの声が、朝の静けさを切り裂く。


「いいね。縄余裕あるじゃん。この調子で行こうぜ」

ベッカーが笑みを浮かべる。


「そうですね。ナイスな初日でしたね」

チャックも同じように笑みを浮かべて答える。


「あぁ、パーマーさん……狼だったんですか……」

カールトンだけが、どこか浮かない顔で呟いた。


パーマーはその表情を見て、胸の奥が疼いた。


「おい、カールトン、もっと喜べよ? お前は昨日、パーマーに投票してたんだろ? お前の狼読みした先がちゃんと狼だったわけだ。まぁ、お前がパーマーを村人だと思って、俺が乗っ取り霊である可能性を考えるのも勿論いいぞ?」

フェイゲンがからかうように言う。


「あ、いや……フェイゲンさんを疑ってるわけではないです。 フェイゲンさんが、黒って言うなら、俺も信じます。それでまぁ、俺も投票した身分なんですけど……」

カールトンは口を開く。


「おっ、投票理由を発表してくれるか? 一つ、成長したな?」

フェイゲンは笑みを浮かべて、続きを待つ。


「あの〜、正直に言いますね? 俺『なんとなく』なんですよ。いや、なんだろうな?確かに、パーマーさんに対しては、ベッカーさんとチャックさんの二人みたいに『こっちが真と思う』の意見出さないんですか?二人に比べて『まだ判別不能』が多くない?とは思いましたよ?」

カールトンは語り始める。


パーマーは魂のまま苦笑いした。

(……確かに。俺は控えめすぎたな。ベッカーとチャックに比べたら、明らかに動きが鈍かった)


「うむ。続きを聞かせてくれ。そのお前の投票理由はお前の色を伝える事になる。」

フェイゲンが優しく促す。


「そう言ってくれるなら、正直に言います。昨日俺に『その話、詳しく聞かせて下さい』って択をくれたじゃないですか? 俺、パーマーさんに対して、それをしていません。」

カールトンはフェイゲンを瞳を見つめながら言う。


パーマーも同じことを感じていた。

確かに昨日、カールトンとの対話はほとんどなかった。

自分から振るべきだった。


「だから、なんでしょうかね?パーマーさんは狼だったんでしょうが、俺がそれをもっとしてたら、こんなモヤモヤとした感じではなくて、皆みたいに『やった!』って喜べたんだと思います。なんか、すいません。」

カールトンは頭を下げる。


パーマーは思わず声を出していた。

「お互い様だ。お前だけが原因じゃない。お前は初心者だろう。初心者のお前に対話を振るのはどう考えても経験者の俺だろ。」

――もちろん、その声はカールトンには届かない。


「そうだな。そこはお前の未熟な点だ。しかし、お前は今、戦士への一歩を踏み出したぞ。相手が狼であれ、しっかりと議論をしなければ、そこにあるのはそういったモヤモヤした勝利だ。」

フェイゲンは静かに頷いた。


「俺、今日は『その話、詳しく聞かせて下さい』を意識して、議論していきます。すいませんでした!」

カールトンは頭を下げる。


「俺もすいません。初心者のコイツにこんな思いさせてすいません!」

パーマーも魂のまま、同じように頭を下げた。


「うむ。お前は戦いの中で成長をしている。それで十分だ。例え相手が狼であろうが、そういった敬意を持って戦うように。ただ勝てばそれでいいというだけでは誇りは得る事は出来ん。」


フェイゲンのその言葉を聞いた瞬間、パーマーは自分が負けて当然だと悟った。


自分の強みは『協調性』だったはずだ。

これまで『村を騙す』ではなく『村に溶け込む』スタイルで戦ってきた。

初心者がいるなら、真っ先にフォローして、安心させて、村全体の議論の質を上げる。

それが自分の役目だった。


なのに、初日にそれを行なったのはフェイゲンだった。


だから、フェイゲンが黒を出した時、誰も迷わずフェイゲンを信じた。

自分とフェイゲン、どっちが『村に溶け込んでいたか』と言われたら、明らかにフェイゲンだった。


朝の陽光が集会所の床をゆっくりと這い上がり、

パーマーの魂を淡く透かしていく。


パーマーは歯を食いしばり、

誰にも届かない声で、カールトンに向かって呟いた。


「俺は狼だ…… だから、村の勝利は願う事は出来ない……だから、カールトン…… そうやって一つずつ強くなれ……そして、強くなって負けろ。」


風が一瞬だけ、集会所の埃を舞い上げた。

誰も気づかなかったが、その風は確かにパーマーの最後の言葉を乗せて、カールトンの耳のすぐ横を、そっと通り過ぎていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
こ、これっていわゆる「霊界チャット」ですよね…!? 人狼ゲームでは、死んだら即離席しちゃう人も多いですけど、死んでから霊界から見るのも結構楽しいのに勿体無いな…っていつも思ってます。 初日狼追放からの…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ