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霊能者のフェイゲンと村人のカールトン

ペグ村の朝、集会所の空気はまだひんやりとしていたが、窓から差し込む陽光が少しずつ室内を温め始めていた。

初日の意気込み宣言がようやく終わり、フェイゲンが大きく伸びをして皆を見回す。


「あのよ? 今日はカールトンが初参加なわけだ。俺も2-1盤面は面倒臭くて嫌いだし、出来るだけシンプル化した議論にしたいんだが、皆、それで納得してくれるか?」


静かな同意の頷きが返ってくる。

カールトンは胸の奥でまたホッと息を吐いた。


「ありがとうございます……! 俺も、シンプル化してくれる方が嬉しいです……!」


「それじゃあ、ゆっくり説明からするぞ。 今日、追放するのはカールトン・ベッカー・チャック・パーマーの四人の中から。本来はこの四人を中心に精査するんだが、今日はそれはなし。今日の議論は、占いの二人……バクスターとパーディこの二人のどちらが真で、どちらが偽か。それ一点だ。」


フェイゲンの言葉に、カールトンは必死で耳を澄ます。


(これなら……ついていけるかもしれない)


「了解。初日から占いの真比べだな。それじゃあ、パーディ、言わせてもらうぜ?」

バクスターがニヤリと笑う。


「えっ……? もうやっちゃっていいんですか……?」

パーディが不安そうにフェイゲンを見る。


「う〜ん……まぁ、いいんじゃね? 問題があったら止めるから……」

フェイゲンは渋い顔で許可を出す。


占い二人の討論が始まった。

カールトンは心の中で繰り返す。


(目的はシンプル。二人のどちらが真か偽か、それだけだ)


バクスターは積極的に議論をしているように見える。

一方、パーディはそれを受けているだけのように見える。

これなら簡単だ。カールトンの判断が完了した。


「俺は、バクスターの方が真占いに見えます!」

カールトンは勢い込んで宣言した。


「はい、ストップストップ。カールトン、お前、またやらかしたな?」

フェイゲンの冷たい視線が突き刺さる。


「えっ……!?」

またやらかしたのかと、カールトンは戸惑う。


「ククク……今日は一端停止の多い議論になりそうだねぇ……?」

ベッカーが肩を震わせて笑う。


「まぁ、勝手におっ始めた占い達のミスもあるが、俺の説明足らずもあったわ。 カールトン、お前、今『バクスターの方が真占いと思います』って一言っただろ?初心者でヘボのお前が真っ先にだ?」


「あっ、初心者が出しゃばった真似しちゃいけませんよね……!すいませんでした……!」

カールトンは慌てて頭を下げる。


「違う違う。発言は控えるな。俺が『占いの二人のどちらが真か偽か考えろ?』って二択で要求しただろ?

それを変えよう。四択でやろう。 『こっちが真だと思う』『こっちが偽だと思う』『まだ判別不能、どっちもどっち』『その話を詳しくお聞かせ下さい 』この四つで判断しろ。」


フェイゲンは指を折りながらゆっくり説明する。

カールトンも同じように指を折って確認する。


「で、今のお前の一言は、この四つの中でどれに一番近い?『パーディが真と思うか』『まだ判別不能、どっちもどっちか』のどちらだと思うが。」

パーディが口を開く


「そう言われてると……『まだ判別不能、どっちもどっち』に該当します……」

カールトンは小さく答えた。


「ってことは、もうちょっと俺達の話を聞くってことでいいか?」

パーディが優しく確認する。


「はい。その流れでお願いします。」

カールトンは頷く。


「加えてアドバイスやろうか? 実は俺、お前の事、今狼と疑ったぜ?」

ベッカーがニヤリと笑って口を挟む。


「えっ……!? なんで……ですか……!?」

カールトンの心臓がまた跳ね上がる。


「初心者のお前が最も出しやすい意見って、『詳しく聞かせて下さい』か『まだ判別不能』だろ? なのに、お前が一番最初に『バクスターが真だ』って言い出したから 『なぁ〜んで、意気込みすら三回やり直しさせられてた奴が、ここだけは誰より早く決められるんだよ?』って思っただけさ。」

ベッカーは意地悪そうな顔をしてカールトンを見つめる。


「い、いや、それは……! すいません……! 俺、二択だと思ってたから……!」

カールトンは慌てて頭を下げる。


「わかってるわかってる。答えは二択だと勘違いしてたんだな?」

その行為にベッカーは満足そうに頷いた。


「俺達経験者は曖昧な回答をあまり選ばない。なぜなら、経験則があるからだ。でもお前は初心者だ。この二つこそが、今のお前の最強の武器なんだよ。」

ベッカーは嬉しそうに言う。


カールトンの頭の中で、朝にベッカーからもらった「必殺技」が蘇る。


(わからないときは止める。それは恥じゃない。)


「そうだ。わからない事あったら、俺の方からまた止めます。その時はまた教えて下さい。」


その言葉にベッカーがにこりと笑った。


「よし、それでは議論を再開しようか。バクスター、パーディ……続けてくれ。」

フェイゲンの声で、再び議論が動き出す。


カールトンの中の怯えは、少しずつ溶け始めていた。

まだ完全に消えたわけじゃない。

狼との戦いは、これからも自分が疑われる瞬間が山ほどあるだろう。


でも、その疑いは解消できる。

何かあったら、議論は一端止めてくれる。

そして、ちゃんと伝えれば――


この村の人達は、わかってくれる。


朝の陽光が集会所の床を優しく照らし、

カールトンは初めて、小さく息を吐いて、次の議論を待つことにした。

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