狩人のアクセル
ジャングル村の朝は、森の奥深くに差し込む陽光が木々の葉をきらめかせ、湿った空気に鳥のさえずりが響いていた。
小さな手作りの木の立て看板が村の入り口に立ち、「Welcome to the Jungle !」とナイフで彫られた文字が朝露に濡れて輝く。
この村を作ったのはアクセルだった。かつては血気盛んな狼で、数多くの村を滅ぼした男。
アドラー、ストラドイン、マッケイガン、スラッシュ――多くの仲間を失い、とうとう一人になったアクセルは、『何の為に戦っているのか』という疑問を抱いた。
そこには共に勝利を分かち合う仲間がいないのだ。
だから、アクセルは村を作り、村人となった。時が経ち、やってくる村人達を受け入れ、ジャングル村は小さな共同体となった。
だが、そんな村に狼が忍び込んだ。
己が作った村を守る為に、アクセルは戦う。
集会所の木陰で議論が始まった。朝の陽光が葉の隙間から差し込み、村人たちの顔を斑模様に照らす。
占い師と霊能者が一人ずつ名乗りをあげ、1-1盤面だ。
本日は占い師と霊能者以外の人間から追放が行われる。
アクセルは目を伏せて考える。
(俺は、皆に嘘をついている……)
アクセルの『嘘』とは、彼が狩人であることだ。
しかし、アクセルは狩人だと名乗らず村人の振りをしていた。当然である。
名乗れば狼の襲撃を受けてしまうからだ。しかし、それが『嘘』なのである。
朝の光が彼の額に汗を浮かび上がらせ、内なる葛藤を照らす。
村人達の議論は続く。アクセルは横目でそれを聞きながら、心を落ち着ける。
(俺は昔、狼だったからこそわかる。ここで『自分が生き残りたい』との考えになって村の振りをするのは、まさに狼の行動。)
村人たちの声が交錯する中、アクセルはさらに思う。
(だから、ここで俺が『狩人の俺が生き残りたい』などと我を出して、必死に村人の振りをするのは、狼が村の振りをしているのと同じ事なんだ……)
村人達がアクセルに問いかける。朝の陽光が彼らの視線を集める。
「もうちょっと、考えさせてくれよ? なっ?」
アクセルは笑顔で答える。声は穏やかだが、心の中で自問する。
(えぇ……? 今の反応どうだったかな……? 逆に、俺、怪しいんじゃねぇの……?)
アクセルは心の中で苦笑いをする。ジャングルの朝風が葉を揺らし、彼のモヤモヤを優しく撫でる。
(あぁ、ダメ……! 無心……無心……慌てちゃダメだ……! 俺は、元狼だからこそわかるんだよ。狼だったら『コイツ弱ってるなぁ』って思う所に仕掛けりゃいいだけなんだ。でも、村人はそれがわかんねぇんだよ。狼より仕掛けるタイミングが一瞬遅れたり曖昧だったりするんだよ。)
アクセルは冷静に心を落ち着ける。朝の光が村人たちの顔を順に照らし、彼は観察を続ける。
(後、そうだそうだ。狼は、なんか真っ直ぐなんだよ。俺も『アイツを狼扱いにする』って決めたら、それを狼にする為に真っ直ぐに突き進んでた。でも、村人ってそこに対して『でも……』とか、『やっぱり……』とか、少し曲がった思考になるんだよ。だから真っ直ぐなヤツ、いないか見極めねぇと……)
アクセルは周囲の村人達を観察する。陽光が木陰を抜け、彼の瞳に鋭さを宿す。
(とにかく、狩人だからって理由でしゃしゃり出るのはダメだけど……くっそ、あぁモヤモヤする……! 俺、やっぱり狼の方が向いているのかねぇ……!?)
元狼だからこそわかる、村人と狼の思考の違い。
アクセルはそれに苦しんでいた。しかし、何処か楽しさも感じられる。過去の狼としての経験が、今の狩人としての洞察を研ぎ澄ますのだ。
アクセルはもどかしい気持ちを抑えつつも、己が作った村を守る為に戦っていた。
朝のジャングルが息づき、立て看板の文字が陽光に輝く中、彼の影は静かに、しかし確実に村の運命を支えていた。




