表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

56/67

狼のパートと狼のコリンズ

インザエアトゥナ村の夜は、闇が深く、星明かりが薄く村の輪郭をぼんぼりと浮かび上がらせていた。

村の外れ、森の影に潜む二人の狼――一人はパート、もう一人はコリンズ。月光が木々の隙間から漏れ、地面に淡い斑模様を描く。外では風が葉を揺らし、村人たちの寝息を優しく掻き消すようにささやく。

パートは決まった相棒を持たなかった。彼は村が崩壊すると、その時行動した仲間と別れ、新たな村と新たな相棒を探す。

それは知識を吸収する為。

狼とは言っても、それぞれ独自のスタイルを持っている。騙すのが得意の狼もいれば、村に同化するのが得意の狼もいる。パートはその時その時の相棒の強みを吸収してここまで来たのだ。

そして、今回、パートの相棒に選ばれたのはコリンズだった。


「まさか、コリンズさんと一緒に出来るだなんて……今回は幸運ですね。コリンズさんの知識は噂になってますよ。」

パートが笑みを浮かべて言う。月光が彼の顔を照らし、期待の輝きを宿す。


「え〜? 噂になってるって、どんな風に噂になってるの?」

コリンズが村を眺めながら言う。声は夜の風のように軽やかで、遠くの村灯りを映す。


「コリンズさんの理論は優れてるって噂になってますよ? やっぱり、コリンズさんぐらいになると、それが普通ですか?」

パートは期待した目をして続ける。月光が彼の瞳に落ち、知識欲を灯す。


「あ〜、それ昔の話だよ。僕、今、そんなスタイルでやってないよ。僕は楽しく騙せれば、それでいいやって感じでやってる。」

コリンズは表情を変えずに言う。夜の闇が彼の飄々とした態度を包む。


「楽しく騙す……? 何を言っているんだ……!? 貴方みたいな狼が何故そんなスタイルに!?」

パートは驚く。強い狼と噂に聞いていたコリンズだが、態度はそうは見えない。噂が間違いだったのかと、疑問に思う。月光が彼の狼狽を照らす。


「だって、僕、そんな難しい技術使わなくても勝てるもん。」

しかし、コリンズが言う。曇りなき瞳でパートを見つめながら。その自信に満ち溢れた発言はやはり本物だとパートは思う。夜の風が二人の間を吹き抜ける。


「問題ね? 初日、占いが二人と霊能者が一人、2-1盤面です。占いAは村Aに白。占いBは村Bに白。グレーの村人はCDEFの四人になりますね?」

コリンズは淡々と騙り始める。声は夜の静けさを破らず、村の影に溶け込む。


「あぁ、よくあるスタンダードの盤面だな?」

パートは答える。月光が彼の顔を照らし、知識の渇望を映す。


「……この初日に考える事は?」

コリンズは問いかける。瞳が夜の闇に輝き、試すように。


「フフ、舐めてもらっちゃ困るね? 基本は村人CDEFの精査で、それに加えて占いの真偽精査って所だろ? 俺は、村人精査を6ぐらいの力で、占い精査を4ぐらいの力でやるね。」

パートは笑みを浮かべて答える。声に自信が滲む。


「お〜、君凄いね。今回はいい相棒と出会えたよ。しっかり占い精査をやるなんて凄い凄い!」

コリンズは手を叩きながら答える。月光がその拍手を照らし、夜の森に響く。


「……な、舐めているのか?」

パートは言う。声にわずかな苛立ちが混じる。


「でも、昔の僕はね? そこに加えて、霊欠け乗っ取りチェックとかかな? そういう事もやってたし……後、それぞれの視線読みだね。『Cは、DとEに注目している』『DはCに返事をしつつ、占いABを見ている』みたいな事をやってた。」

コリンズは飄々と答える。夜の風が彼の言葉を優しく運ぶ。


「視線読み……ですか……?」

パートは驚く。コリンズの口から自分にない知識の言葉が出てきたのだ。月光が彼の驚きを映す。


「あ〜、後、発言レベル精査とかもかな? 全員の発言レベルを見て、Aはレベル3、Bはレベル2とかそういう風に自分の中で、それぞれの発言レベルを作ってた。多分、君の発言レベルは、僕の中で4から5ぐらいあると思うよ?」

コリンズは笑顔を見せる。夜の闇がその笑みを柔らかく包む。


「……あ、ありがとうございます。」

パートは応える。声に戸惑いが混じる。


「はい、今、一気に君の発言レベル下がりましたね!? その『ありがとうございます』って言葉は、レベル1です。とても『村人精査を6、占い精査を4でやる』なんて言ってた人間とは思えませんよね!? 何故ですか!?」

コリンズは指を差しながらパートに指摘する。月光が指先を照らし、夜の森に緊張を走らせる。


「い、いや、それは……」

パートは指摘され焦る。夜の冷気が彼の汗を冷やす。


「いや、まぁこれは冗談だけどさ? 今、君が僕の質問に答えれなかったのも『狼だから答えれなかった』じゃなくて、単純に『そこまでの知識がなかったから』でしょ? こんなの指摘しても仕方ないんだよ。」

コリンズは続ける。声は優しく、師の如く。


「まぁ、そうですね。はい。俺は今の返事、貴方を『騙してやろう』だとか、そういった感情はありませんでした。」

パートは答える。月光が彼の素直さを照らす。


「それに、君は発言レベルが4から5ぐらいはあるから、今の僕の話についてこれてるでしょ? こんなの発言レベルが1の話したって『コリンズさんの言ってる事わかんない』って、僕が疑われちゃうんだよ。」

コリンズは眉を顰めて答える。夜の風が彼の言葉を運び、教訓を刻む。


「なるほど。知識があり過ぎるが所以に、他者に理解されないと。」

パートは真剣な目でコリンズに言う。月光が二人の視線を繋ぐ。


「それが、違う! それは知識がある者の驕り!」

そんなパートにコリンズが指を差しながら言う。声は夜の闇を切り裂く。


「……驕りですか?」

パートは目を丸くする。月光が彼の驚きを映す。


「この状況は『僕が空気を読めてない』の。僕が一人小難しい話をして自己満足してるの。大事なのって、理論のレベルが1や2で低くても、騙したい人間の一番心に響く理論や言葉を提供する事でしょ?」

コリンズは続ける。夜の静けさが彼の哲学を深める。


「うん、うん……はい、はい……なるほど、なるほど……」

パートは何度も頷く。月光が彼の成長を照らす。


「だから、今、僕はそんなに気合い入れてやってない。さっきの盤面でも『今日はCDEFさんの誰を追放しようかな〜』って感じで、のほほんとやってるよ。昔の僕も『理論で騙す』事に拘ってた時期があったよ? でも、もう最近はほぼフィーリングでやってるよ。」

コリンズは笑みを浮かべる。夜の闇がその笑みを優しく包む。


「はぁ、参考になりました……実戦で是非拝見させて下さい。」

パートは言う。声に敬意が滲む。


「まぁ、参考になるかどうかはわかんないけどね。それじゃあ、行こうか?」

コリンズはそう言って歩き出す。


そして二人はインザエアトゥナ村へと忍び込んだ。

夜の闇が二人の影を溶かし、月光が新たなコンビの序曲を静かに奏でていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ