村人のギアードと村人のヒル
ギミオルユアラヴィン村は、太陽が村の広場を明るく照らし、青空が広がっていた。村の中心、広場の石畳に集まった村人たちの影が短く落ち、狼を追放する為の激しい議論が行われている。その議論の中心に立っていたのは、ビアードだ。
ビアードの鋭い指摘が村の広場に響き渡る。風が木々を揺らし、昼の陽光が皆の顔を照らす。
「今、ライン考察を行う意味があるか? 『エスリッジとミッチェルの二人が狼の可能性はないと思う』それが、今必要な行為か? 今日、考えるのは、誰を追放するかじゃないのか!?」
ビアードの叱責が響き渡る。声は昼の空気を切り裂き、村人たちを震わせる。
「そ、そうですね。」
叱責を受けたグリーグが俯く。陽光が彼の肩に落ち、反省の影を刻む。
「俺は今の発言で、グリーグを疑ってるぞ? お前達はどう思うんだ?」
ビアードが皆に意見を求める。視線は鋭く、広場の空気を緊張させる。
「い、いや……俺はまだそれだけで狼で見るのは早いかな〜と……皆がキッチリカッチリ、意見出せるわけじゃないじゃないですか……」
エスリッジが答える。穏やかな声が、昼の風に揺れる。
「うむ。確かにその通りでもある。少し、俺が厳しすぎたのかもしらんな。ミッチェルの考えはどうだ?」
ビアードはミッチェルに問う。陽光が彼の顔を照らし、冷静さを引き戻す。
「あの、俺も自分なりに一生懸命頑張ってると思って、どっちかと言うと、村人で見てるんですけど……」
ミッチェルは口籠りながら答える。太陽の光が彼の戸惑いを映す。
「けど……続きはなんだ? ハッキリ言え。」
ビアードの厳しい指摘は続く。声は広場に響き、議論を駆り立てる。
「あの〜……俺達の意見聞く前にあの二人、何とかしません……?」
ミッチェルは二人の男に指を差す。その行動にビアードはため息をつく。陽光がため息を優しく包む。
「……なぁ? じゃがバタ作ってもいい?」
「あぁ、そうだな。じゃがバタは時間かかるからもう作っておいた方がいいな? 作っておいてくれよ。」
ミッチェルが指差した方には、バーベキューを楽しんでいる二人の男がいた。ギアードとヒルだ。
煙が立ち上り、肉の香りが広場に広がる。ビアードは、二人を睨みつけながら近づいていく。陽光がバーベキューの炎を輝かせる。
「……おい、お前ら、何やってんだ!?」
ビアードは二人に問いかける。声は苛立ちに満ち、広場の空気を乱す。
「何って、見りゃわかるじゃねぇかよ。じゃがバタ作ってるんだよ。」
ギアードは表情を変えずに答える。肉を返しながら。陽光が彼の顔を照らす。
「お前も肉食えよ? 焦げるぞ。」
ヒルもビアードに向かって言う。箸を手に、笑みを浮かべる。
「なんで、今、こんな事してるんだ……?」
ビアードは肉には目もくれずに二人に続ける。風が彼の苛立ちを運ぶ。
「なんでって……今日は皆でバーベキュー大会するって約束だっただろ?」
ギアードは答える。穏やかな声が、広場に響く。
「おい、お前らもこっち来いよ!? 肉焦げるっての!」
ヒルは手招きしながら、グリーグ、エスリッジ、ミッチェルを呼び寄せる。三人はヒル達の元へと足を運ぶ。煙と香りが彼らを迎える。
「なんで、今、こんな事してるんだよ!? 狼が忍び込んでるんだぞ!? もっと真面目に真剣に、議論をするべきなんじゃないのか!?」
ビアードは苛立った表情でギアードに向かって言う。陽光が彼の額に汗を光らせる。
「真面目に、真剣に……って、言ってもさぁ……? 俺、議論が難しくなるとわかんないよ……? もっとワチャワチャやればいいじゃん?」
だが、ギアードは表情を変えずに答える。肉を焼きながら。
「とりあえず、焼けてる肉から食えばいいからな? 後、ホタテ食う時は醤油垂らしてから食えよ?」
ヒルは、二人のやりとりは気にせず、グリーグ達に肉を進める。グリーグ達も箸を手に取り、肉に手をつけ始める。陽光が食事を美味しそうに照らす。
「お、おいっ……! お前らまで……! 何やってるんだ!?」
ビアードが慌てて三人を制する。声は広場に響き、混乱を増す。
「だから、いいじゃんいいじゃん。肉食いながら、話し合いしたらいいじゃん。お前ら、さっきまで議論してたけど、どこまで進んだの? 教えてよ。」
ギアードは気にせず、追加で肉を焼き始める。煙が立ち上り、香りが広がる。
「えっと……俺が、ちょっと失言しちゃって……ビアードには疑われたんですけど、エスリッジとミッチェルは俺を事を村人なんじゃないかって言ってくれてます。」
グリーグは不安そうな目をしながら先程のやり取りを、二人に伝える。
「いいから、食え食え! 焦げるっつ〜の! 食いながら話せばいいだろが!?」
ヒルはグリーグに食事を進める。昼の陽光が彼の笑みを輝かせる。
「あっ、すいません。じゃあ、いただきます。あっ、これ美味いっすね?」
グリーグが肉を食べて答える。彼の表情は和らぐ。
「だろだろ? 美味いだろ!? 後、ホタテも、もういけるからな? 後、今回はエビとかイカとか、海産物も結構用意してるんだよ。でも、野菜も食えよ!?」
ヒルが満足そうな笑みを浮かべて言う。
皆が食事を取り始める――ビアードを除いて。広場がバーベキューの賑わいに包まれる。
「な、何やってんだ、お前ら!? わかってるのか!? 狼が忍び込んでるんだぞ!? もっと、真面目に真剣に議論をするべきだろうが!?」
ビアードは皆に向かって叫ぶ。陽光が彼の苛立ちを際立たせる。
「……真面目に真剣にと、楽しくを両立させればいいじゃん?」
そんなビアードに向かってギアードが言う。穏やかな声で。
「……あぁ?」
ビアードはギアードを見つめる。瞳に戸惑いが混じる。
「そりゃ、俺達もわかってるよ。狼が忍び込んだんだから、村は守るよ。でも、せっかくバーベキューの準備もしたんだから、こっちもやろうぜ? 真面目に真剣に楽しく、肉食いながら、狼追放の議論したらいいじゃん?」
ギアードはビアードに向かって、皿と箸を差し出す。煙と香りが誘う。
ビアードは、皿を手に取る。昼の陽光が皿を照らし、決意を溶かす。
「ちょっと見てたけど、随分カッカしながら話し合いしてたんじゃないの? なっ? 楽しくやろうぜ、楽しく。そんな事じゃまともな推理も出来ないって。ほら、その肉、焼けてるぞ。食え食え。」
ギアードは肉を勧める。皆の笑顔が広場に広がる。
ギミオルユアラヴィン村で起こっているのは、狼との戦いなのか、狼を含めたバーベキューパーティなのかはわからない。
ただ一つ言えるのは、彼らの議論は『真面目に真剣に楽しく』行われ始めたと言う事だ。
陽光が村を包み、肉の香りと談笑が狼の影を優しく追い払い始める。




