狼のローリーと恋のマジックポーション
マジックポーション村の夜は、闇が深く、星明かりが薄く村の輪郭をぼんやりと浮かび上がらせていた。集会所の古びた窓から差し込む月光は、埃っぽい床に淡い影を落とし、二人の姿を静かに照らす。
この戦いでは狼が勝利した。村は最後の最後で狼のローリーではなく、村人を追放したのだ。
今、集会所には二人だけ――ローリーとシマ。
後は狼は村人を殺すだけ。
簡単なゲームのエンドロールのはずだ。だが、ローリーの胸は、先程の夕陽のように、熱く疼いていた。
シマは壁に寄りかかり、息を切らしてローリーを見つめる。クールな表情は崩れ、目には戸惑いと疲れが混じり、月光がその頰を青白く照らす。木々のささやきが、彼女の心のざわめきを優しく包む。
ローリーは、突然、床に膝をついた。
完璧な、額を擦りつけるほどの土下座だ。月光が彼の背を照らし、熱狂の影を長く伸ばす。
「シマちゃん! 僕と一緒に戦おう! 狼になってくれ!」
声は、闇を切り裂くように響く。石畳の響きがその言葉を増幅し、冷たい風がその熱を運ぶ。
シマの目が、大きく見開く。月光の揺れが彼女の混乱を映す。
「え……? ロ、ローリー……? 何言ってるの……? 私、村人よ? あなたは狼で……貴方は私を殺すんじゃないの……?」
戸惑うシマ。彼女の声はか細く、まるで霧のように溶けていく。
ローリーは顔を上げず、土下座のまま続ける。夜の静けさが、彼の熱弁を際立たせる。
「僕達が一緒にやれば、伝説を作る事が出来る! ごっつええ感じな戦いが出来るんだ! 例え地震が起きたとしても、その揺れの中で棚に登って格好いいポーズを僕が決めるよ! 君みたいなクールな相棒がいれば、もっともっと伝説を起こせるんだ! そうだ!? 次はダウンタウンに攻め込まないか!?」
月光に照らされたローリーが土下座のまま熱弁する。
しかし、シマには彼が何を言っているかさっぱりわからない。夜の風が二人の間を吹き抜け、謎の予言を運ぶ。
「ご、ごっつええ感じ……? な、なんなのそれ……? それに私、狼になるなんて……無理よ、そんなの……」
だが、ローリーは止まらない。突然立ち上がり、指を月に向かって突き上げる。まるで星に誓うように。月光が彼の瞳を純粋な炎のように灯す。
「シマちゃん! この戦いも、35年後には女の子達が再現してくれるんだよ! アニメ化もする! アニメのオープニングで、僕達の戦いが流れるんだよ! ほら、想像してくれ! キラキラのOPで、僕達の戦いが再現されるんだ! トライデントってガールズウルフがカバーして、バズるんだ! 僕らの恋のマジックポーションが、令和のポーションアニメで蘇るよ!」
謎の予言が、闇夜に炸裂。シマの戸惑いはピークに。
彼女は首を振り、月光の下で頰を赤らめる――いや、青ざめているのか? 夜の冷気が彼女の息を白く染める。
「35年後……? アニメ……? ローリー、あなた、頭おかしいの……? 私、そんな未来、想像できない……令和のポーションアニメって何よそれ……」
ローリーの目が輝き、月光がその瞳をさらに燃やす。そして手を差し伸べる。狼の爪が、優しく。
「君は永遠の18歳として、僕の仲間になってくれ! シマちゃん、僕を支えてよ! 僕の意見が派手に鳴く横で、シマちゃんもクールに言うんだ! 僕達二人なら、どんな混乱も乗り越えられるよ!」
シマはまだ戸惑っている。差し伸べられた手に、触れそうで触れない。夜風が二人の間を吹き抜け、心の糸をそっと揺らす。
月光は集会所の床に二人の影を重ね、運命の交錯を予感させる。
「でも……ローリー、私、村人なのよ……?」
ローリーの笑みが、月光に溶ける。肩を叩く仕草で、虚空を叩く。
「そりゃ、僕は狼、君は村人! でも、その二人が仲良く同じ目標を持ってもいいじゃないか!? 恋のマジックポーションみたいに、心がつながれば、狼も村人も関係ないよ! 一緒に次の村を狙おう! 伝説の狼タッグ、すかんちがここに誕生だ!」
ローリーの言っている事はさっぱりわからない。
だがシマの心は揺らぐ。彼と一緒に行動すれば、それはそれで楽しいのかもしれない。
月光が彼女の瞳に落ち、微かな好奇心を灯す。
――この夜、村は負けた。だが、二人の物語は、ここから始まる。
シマはローリーの手を取った。夜の闇が二人の影を溶かし、恋のマジックポーションが静かに効き始める。
月光の下、伝説の狼タッグが誕生した。




