狼のジェシカと狩人のデミ
ソワット村の夜は、闇が深く、星明かりが薄く村の輪郭をぼんやりと浮かび上がらせていた。月光が村の石畳に淡い影を落とし、静かな村人達の寝息が風に混じる。
三日目の議論では、ローハンが追放された。
残った人間は、霊能者のピンク、狼のジェシカ、デミ、ケシャの四人――村の運命は、夜の闇に委ねられていた。
廃屋の片隅で、ジェシカは一人、月光を浴びながら寂しそうに呟く。ブロンドヘアーが夜の冷気に揺れ、黄金の糸のように輝く。
「う〜ん、ローハンがやられちゃった……」
赤髪のローハンの追放――それはピンクの主導によってだった。
ジェシカの相手を立てて懐に潜り込み、主導権を奪いにいく作戦は見事だったが、その副産物として『立てた相手』はジェシカの襲撃によって消えていく。
その結果、ピンクは主導権を取り戻し、狼のローハンの追放に成功したのだ。夜の風が廃屋の壁を叩き、ジェシカの孤独をささやく。
「あのピンクって人、嫌いだなぁ。全然優しくないし。」
ジェシカは考える。青い瞳が月光に反射し、わずかな苛立ちを宿す。
「どうしよう。今日はあの人襲撃しようかなぁ?」
その頃、デミは自室で考えていた。
狩人である彼女は、今日の狼の襲撃から誰を護衛するかを悩んでいた。月光が窓から差し込み、埃っぽい床に彼の影を長く伸ばす。
ここまで、デミはずっとピンクの護衛をしていた。それは『唯一の霊能者』だからだ。ピンクを失ったら、村の主導権が失われてしまうとの考えからだった。
しかし、狼に襲撃されたのは、ラシェイとメイヤーだった。デミは護衛に失敗したのだ。
彼らが襲われる予感は感じていた。ラシェイも、メイヤーもその日一番の村人だと議論で言われていた。その予感を感じつつも、デミはピンクを護衛した。そして、ラシェイも、メイヤーも狼の襲撃によって散っていった。夜の静けさが、デミの失敗を重くする。
ピンクが議論中に放った言葉を思い出す。
「も〜う、狩人は何してるのよ。メイヤーが襲われる事ぐらい読めるでしょうが。」
ここまで、失敗続きのデミ。今日の護衛こそは『成功』させなければいけないと、悩み苦しんでいた。月光が彼女の顔に落ち、苦悩の影を刻む。
そんなデミの思考とは裏腹に、ジェシカの思考は進んでいた。廃屋の月光の下、ブロンドヘアーが興奮に揺れる。
「よし、ジェシカ決めた! 今日はピンクを襲撃しちゃおう!」
ジェシカは自身に確認を取るように独り言を続ける。
「えっと……もし、ピンクの襲撃に成功したら、ジェシカと、ケシャと、デミの三人になるから……デミの方が頼りになりそうかな!? デミに色々、教えて貰って、ジェシカの勝ち!」
ジェシカは更に思考を進める。青い瞳が夜の闇に輝き、無邪気な勝利を思い描く。
「それで、もし狩人が生き残ってたとしても、ピンクと狩人と、ジェシカともう一人って状態になるから、ジェシカはそのもう一人をやっつければいいんだ!」
ジェシカは笑みを浮かべる。月光がその笑顔を照らし、狼の純粋な狡猾さを映す。
「そしたら、あの優しくないピンクが残ってたとしても、ジェシカは狩人の人に教えてもらえばいい! ケシャも、デミもピンクと違って優しそうだったもん! きっとジェシカに教えてくれるよ!」
ジェシカは歩みを進める。ブロンドヘアーが夜の風に舞い、決意を運ぶ。
「狩人が護衛に成功しても、失敗してもジェシカは大丈夫! よ〜し、襲撃に出発だ〜!」
そして、ジェシカはピンクの襲撃へと向かった。夜の闇が彼女の影を包み、村の寝息を掻き消す。月光が廃屋を後にし、狼の無邪気な勝利の序曲を静かに奏でていた。デミの自室では、月光が狩人の苦悩を照らし、護衛の選択を迫っていた。




