霊能者のケンゴ
昨日、一人の村人が処刑台へと送られた。
ブライトヴェイルの集会所、陽光が木の窓から差し込む。戦いは終わらない。村の議論は2日目へと突入する。木卓を囲む村人たちの声が響く。
「誰が狼なんだ?」「だから、それを探す為に今日も話し合うんだろが!」
言葉が矢のように飛び交い、疑念が空気を重くする。
そんな中、狼は静かに微笑む。陽光がセシルの瞳を照らす。
「占い結果を発表するわ。ロバートは村人よ。」
占い師が、場を収めるように落ち着いた声で言う。彼女のローブが陽光に揺れる。セシルは心の中でほくそ笑む。
(ミスしたな、占い師。そうだよ、ロバートは村人だよ…これは利用できるぜ。)
村人たちは「ロバートは村人だったのか?」「本当なんだろうな?」とざわつく。陽光が集会所の緊張を照らす。
昨日はロバートとデニムが激しい言い争いが行われていた。ロバートが声を荒げながら疑い、デニムがそれに反発する。村人たちは二人の疑心暗鬼に振り回された。だが、二人は共に村人なのである
セシルはその疑心暗鬼の影に身を潜めていた。
(占い師はミスをしたみたいだな。しかもこのミスは利用しやすいぜ。ロバートが村人なら、次はロバートと争ってたデニムがターゲットだ。)
セシルは静かに村人たちを見回す。陽光が木卓を照らし、村人たちの不安な顔が映る。セシルの微笑は隠しきれず、唇の端が上がる。
(この流れは、俺が操れる。)
「霊能者の僕からも、報告だ。サラは村人。人狼ではなかった。」ケンゴが淡々と語る。
彼の瞳は柔らかく、声は静かだが重い。陽光が彼の黒髪を照らす。
セシルは笑みを浮かべる。
(そうだよ、サラは村人だよ……この結果を聞いて、更に混乱は加速するだろう……)
村人たちは「サラが…」「くそ…サラが…」とざわつく。セシルの予想通り、村の混乱は広がっていく。
「そう…じゃあ、私の結果を主題にまた狼を探していきましょう。」
占い師が混乱を引き戻そうと、か細で声に言う。彼女の声は落ち着いているが、どこか自信がない。
セシルはまた笑みを浮かべる。
(いいぞ、占い師。このままロバートとデニムの話に流せば、俺は安全だ。)
陽光が集会所の空気を温めるが、疑念は冷たい。
「いや、僕の結果を主題にするのが優先だ。」
ケンゴが静かに言う。セシルの眉がピクリと動く。
(なんだ? こいつ…)
占い師が戸惑う。「貴方の結果から…?」
ケンゴの瞳がセシルを捉える。陽光が彼の鋭い視線を際立たせる。セシルは嫌な予感を感じる。
「昨日、サラちゃんはセシル君に投票している。それはつまり、セシル君を疑っていたということだ。」
ケンゴは淡々と続ける。
「僕たちの疑念はいつでも話し合える。先にサラちゃんの疑念を解消してあげないと…サラちゃんはもういないんだから…」
彼の声は静かだが、集会所を切り裂く。セシルは内心で舌打ちする。
(サラの投票…? そういやアイツ、俺に投票してたな…)
占い師は「それもそうね…どうぞ…」と主題を譲る。陽光がセシルの汗を照らす。
ケンゴはセシルをじっと見ながら続ける。
「昨日はロバート君とデニム君の言い争いが印象的だった。でも、サラちゃんはロバート君とデニム君ではなく、セシル君に投票している…セシル君はデニム君に投票しているよね?」
(くそ、こいつの目…俺を見透かしているのか…!?)
セシルは平静を装う。
「あぁ、そうだ。俺はデニムが怪しいと思う。デニムがロバートに疑われた時の反応はどう考えてもおかしいんだよ…普通、ああいう時は……」
「いや、セシル君。まだそれは待ってくれ。時間はある。後にしよう。先にサラちゃんの疑念を僕たちで解消してあげないと…」
ケンゴの声は淡々だが、重みがある。
「お、おう…悪い、悪い…」
セシルは苛立ちを感じる。だが、声は少し震える。
「確かに、セシル君はデニム君が怪しいと言っていた。でも、最初にロバート君が言い出した時だ。ロバート君が疑う姿勢に『怪しい』と言っていなかったか?」
(この野郎っ…!)
「いや…そんな事、言われても…覚えてねぇよ。」
セシルの額に汗が滲む。
「ロバート君に確認してみよう。ロバート君、どうだった? 僕の記憶ではそういった記憶が微かにあるんだが、ロバート君の記憶には残っているか?」
ロバートが声を上げる。
「あっ、俺、言われたの覚えてます。俺がデニムに言った直後に言われたので覚えてます。」
(くそっ、ロバートまで…!)
セシルの心臓がドクンと鳴る。
ケンゴが続ける。
「そうだろ? 僕はサラちゃんは、そこが気になったんじゃないかと思うんだ。セシル君がロバート君を怪しいと思った事から、デニム君が怪しいに切り替わった事が、恐らくサラちゃんの疑念なんだと思う。」
彼の声に熱が帯びてくる。
(あの野郎、こんなとこで俺を…!)
「セシル君、どのタイミングでロバート君への疑いから、デニム君への疑いに切り替わった? 昨日、君が思っていた事を教えてほしい。」ケンゴの瞳がセシルを射抜く。陽光がセシルの動揺を暴く。
(占い師の結果からは逃げられたのに、霊能者ごときに尻尾を掴まれた…いや、尻尾を掴んだのはサラか…! くそ、どう答えるべきだ!?)
セシルの心臓が高鳴る。サラの投票、ロバートとの会話、ケンゴの淡々とした追及…全てがセシルを締め付ける。
(このままじゃ…俺の狼がバレる! 何か…何か誤魔化す方法を…!)
陽光がセシルの汗を照らし、集会所の空気が重く圧し掛かる。
「貴方に主題を譲って正解だったわ…でも貴方、よくそこまで考えれるわね。」
占い師は感嘆の声を漏らす。
ケンゴが静かに答える。
「あぁ、昨日、寝ずに考えたよ。僕は今、報告を聞いた皆と違って一晩考える時間があるからね。でもこれが霊能者の仕事だ。」




