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狼のジェシカと霊能者のピンク

ソワット村の朝は、朝日が村の石畳を優しく照らし、霧が薄く立ち込めていた。集会所の古びた窓から差し込む光は、埃の舞う室内をぼんやりと浮かび上がらせ、村人達の顔に微かな緊張を刻む。

風に靡くブロンドヘアが、黄金の糸のように舞う。優しい青い目が、穏やかに輝くのに、どこか鋭い棘を宿して。美貌を持ったその狼の名はジェシカという。

彼女は、村に忍び込み、朝の議論の中心に立っていた。


集会所での議論が始まった。朝の光が村人達を包み、狼探しの火蓋が切られる。


「よ〜し、じゃあ皆、頑張って狼を追放しようね!」

ジェシカが満面の笑みで宣言する。朝の陽光が彼女の髪を輝かせ、村人達もジェシカに応えるように頷く。


「……だけどぉ〜、ジェシカとの約束! 狼を探すのはいいけど、絶対にギスギスしちゃダメだよ!? 皆がギスギスしちゃったら、それは狼の掌の上で踊らされる事になるんだからね!?」

ジェシカは笑みを浮かべたまま続ける。声は朝の風のように軽やかで、集会所の空気を和らげる。


霊能者のピンクが、そんなジェシカを横目で見ながら思う。

(うん、彼女は中々のムードメーカーね。)

朝の光がピンクの顔に落ち、冷静な観察を照らす。


しかし、そんなピンクの思いとは裏腹にジェシカが言う。

「でも、ジェシカ、どうやって狼見つければいいのかわからないの……ねぇ、これどうやって探すの? 誰か教えて?」


ピンクは眉を顰める。

(う〜ん……仕切るのはいいけど、この子何もわかってなかったのね……)

朝の霧が彼女の苛立ちを包むように感じられた。


「じゃあ、アタシが中心になって……」

ピンクが口を開こうとした瞬間、ジェシカが再び口を開く。


「ねぇねぇ、ラシェイ? ラシェイは狼の探し方わかる!? 教えて教えて!?」

ジェシカは潤んだ瞳で隣のラシェイに向かって話しかける。青い瞳と汗に光る肌がラシェイの視界に入り、朝の光がその魅力を増幅する。


「う〜ん、そうだなぁ……とりあえず、狼はポロッと変な事言っちゃう事もあるから、もう少し話し合って、そのポロッとした変な事を探すって感じになるかなぁ?」

ラシェイは照れた笑みを浮かべながら答える。朝の陽光が彼の頰を赤く染める。


「へぇ、そうなんだ! ラシェイ凄いね! 天才じゃん!」

ジェシカが笑顔で言う。声は朝の鳥のように明るく、集会所を満たす。


「い、いやぁ、そんな天才って程じゃないよ。」

ラシェイは照れ臭そうに頭をかきながら答える。


(な〜に、デレデレしてんだか……)

ピンクはそんなラシェイを冷ややかな目で見つめている。朝の光が彼女の苛立ちを際立たせる。


「じゃあ、今、ジェシカが一番喋ってるじゃん!? ラシェイはジェシカは、ポロッと変な事言ってると思う!?」

ジェシカはラシェイに問いかける。その笑顔は変わらず、朝の空気を操る。


「うん。今の所、ジェシカはないよ。大丈夫!」

ラシェイは答える。声に信頼が滲む。


(ちょっと待ちなさいよ……あんた、その女と何分話したのよ……まだ一分も話してないでしょ!? そりゃ一分そこそこの話ぐらいで、狼がポロッと変な事言うわけないでしょ!?)

ピンクが慌てて口を開こうとする。しかし、その言葉が出る前にジェシカが発する。


「わ〜い! ジェシカ、変な事言ってないって!」

ジェシカが村人達に向かって笑顔で言い放つ。村人達も笑顔でジェシカを見つめ返す。

ただ一人、ピンクを除いて。

朝の光が集会所の笑顔を照らし、ピンクの孤立を強調する。


「ジェシカも、ラシェイは変な事は言ってないと思う! 皆はどうどう!? ラシェイが変な事を言ったと思う!?」

ジェシカは続けて村人達に問いかける。声は朝の陽光のように明るく、村人たちを巻き込む。


村人達も言っていないと答える。朝の集会所が、ジェシカのペースで回る。


(そりゃ、そうでしょ……!? ラシェイがどれだけ話したと思ってるのよ……!? まだ三回しか口を開いてないのよ……!? 当たり前じゃない……!?)

ピンクが慌てて口を開こうとするが、そこに再びジェシカの言葉。


「じゃあさ? 頼りになりそうなラシェイを中心に皆でトークをしない!? ねぇねぇ、ラシェイ!? ここからどうやって進めればいいの?」

ジェシカがラシェイに向かって再び問いかける。潤んだ瞳が朝の光を反射し、魅力を増す。


「う〜ん、そうだなぁ。じゃあ、皆が俺達に言った意見は『変な事は言ってない』ってだけだけど、そこどういう風に思ってるか、より詳しく意見出してもらう?」

ラシェイは笑みを浮かべながら提案する。朝の風が彼の言葉を優しく運ぶ。


「わぁ、凄い! ラシェイ、天才! じゃあ、皆、ジェシカの事、どう思うか教えて!? ちゃ〜んと、ジェシカの印象、しっかり言ってくれないと、ジェシカ許さないよ!?」

ジェシカは満面の笑みで皆に問いかける。朝の光が彼女のブロンドヘアを黄金に輝かせ、村人たちを魅了する。


(この女……本当に村人なの……? もしかして……)

ピンクは苦戦していた。

それは、狼との戦いに苦戦しているのではなく、自分が議論の主導権を握れない事に苦戦していた。

朝の陽光が集会所を満たし、ジェシカの支配を照らし出す。ピンクの影は、霧の向こうで、静かに揺れていた。


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