占い師のウエンディと狼のジェット
ブッチャベビ村の議論が始まった。
「とりあえず、占い師は誰だ? 名乗ってくれよ。」
村人の一人が声を上げる。朝の静けさが、わずかに揺らぐ。
「あの……私、占い師です……」
ウエンディは恐る恐る手を上げる。彼女の声はか細いが、朝の光がその瞳に決意を灯す。
「いや、アタシが占い師だよ。」
しかし、他にも手を上げる者がいる。ジェットだ。
ジェットは偽占い師である――彼女が、占い師を騙ってきたのだ。
ウエンディはジェットを見て、突如笑顔になる。
朝の光が彼女の顔を照らし、まるで覚醒の瞬間のように輝く。
「……お前、何、笑ってるんだ? 気持ち悪いな。」
ジェットが怪訝そうな目でウエンディを見つめながら答える。
「狼、見つけたよ! 私、狼見つけた! ジェットが狼だ! やったぁ!」
ウエンディは歓喜の声をあげながら、ジェットに向かって指を刺す。そう、ジェットは狼である。
村人たちには、まだウエンディとジェットのどちらが真の占い師かはわからない。
だが、ウエンディだけには確実にわかる。真占い師は自分なのだから、ジェットは偽者だ。開始五秒でウエンディは狼を発見した。朝の光が集会所を満たし、彼女の勝利の予感を照らし出す。
「……は、はぁ?」
ジェットはいきなりのウエンディの行動に戸惑う。朝の霧が彼女の顔に絡み、狼狽が微かに浮かぶ。
ウエンディの心は歓喜に満ち溢れていた。
彼女を縛っていた理論の鎖が全て解けた。
わざわざ、狼を理論で探す必要はない。目の前に狼が存在するのだ。狼が自ら、名乗りをあげて教えてくれたのだ。朝の風が窓を叩き、彼女の闘志を後押しする。
「おかしい! 私なら、絶対にそんな事言わない!」
ウエンディは意気揚々とジェットに指摘をする。声は朝の光のように明るく、それは村人たちの視線を集める。
「な、な、何がだよ……!?」
ジェットはまだ戸惑っている。朝の光が彼女の顔を照らし、狼としての仮面がわずかに揺らぐ。
「私なら『はぁ?』なんて言わない! 私なら『はぁ?』の後に『私、偽者じゃないんだけど!?』って言うもん!」
ウエンディは追求する。何か村人の関心の声が聞こえたような気がする。朝の集会所が、彼女の言葉にざわめく。
「それは……お前がいきなりわけのわからない事を言い出すから……」
ジェットは慌てて答える。声に焦りが滲み、朝の静けさを乱す。
「私がいきなり言った事は関係ない! 貴方は私だったら『私、偽者じゃないんだけど!?』って言う所を、『はぁ?』だけで反応したの! それがおかしいの! 私だったら、ちゃんと自分が本物だって言うもん!」
ウエンディの追求は続く。朝の光が彼女の指先に落ち、ジェットを鋭く突く。
元々、ウエンディは地頭はいい少女だった。
だからこそ、今のジェットへの認識も完全に理解していた。
ジェットは村に溶け込む為に『偽りの信頼』の言葉を出してくる。
だが、それがどんなに綺麗な言葉であろうとも全ては『偽り』。
今、目の前にいるジェットの口から出てくる言葉は全てが『嘘』。
真占い師は自分であるのだから。その『偽りの言葉』を全て叩き潰すのが自分の宿命だとウエンディは確信していた。
「アタシが言いたいのは、お前がアタシは狂人も可能性もあるのに、なんで狼読みが出来たって事だ!?」
ジェットも覚悟が決まったのか、ウエンディに言い返す。朝の光が二人の間に落ち、対立を際立たせる。
「それは関係ないよ! そこが気になってたとしても、私なら『自分は偽者じゃない!』って絶対言う! 絶対絶対に言う!」
ウエンディは止まらない。声は朝の陽光のように力強く、集会所を震わせる。
ウエンディは覚悟を決める。
(絶対に……! 絶対に私はこの人の嘘を言葉を全部やっつけるからね……! どうせ、私の占い先なんて、滅茶苦茶になるもん……でも、それは皆が違う事言ってくるせいだもん……! 私は理論じゃない……! 目の前の敵をやっつけるのが私……!)
ウェンディは自分を確立させた。理論の鎖を解き放った、裸の戦士へとなった。朝の光が彼女の背に差し込み、影を長く伸ばす。村人たちの視線はウエンディに集中し、狼のジェットはそれに押されていた。




