狼のジョーと狼のマリア
フォワットイツワス村の二日目の夜は、闇が深く、星明かりすら薄く村を覆っていた。村の外れ、森の奥に潜む古い廃屋――そこに、狼のジョーとマリアが合流していた。月光が窓の隙間から漏れ、埃っぽい床に淡い影を落とす。外では風が木々を揺らし、村人たちの寝息を掻き消すようにささやく。狼たちは、静かに、しかし確実に計画を練っていた。夜の冷気が彼らの息に白く混じり、興奮と冷静さが交錯する。
「今夜、襲うのはアイツでいいよな?」
ジョーの声は、低く、闇に溶け込むように響いた。彼の目は、月光を反射し、まるで獣のそれのように鋭く輝いていた。
「ええ、彼でいいわよ。それじゃあ、明日の計画を話そしましょうか。」
マリアの返事は、穏やかだが、底知れぬ冷徹さを帯びていた。二人にとって重要なのは、『今夜、誰を襲撃するか』ではない。『襲撃した後の明日、どう動くか』――それが、勝利への鍵だった。夜の闇が、彼らの言葉を包み、村の運命を静かに操る。
「明日は、『村村村狼狼』の形だよな。だから明日、村人を追放すれば俺達の勝ちだよな。」
ジョーが、確認を取るように言う。彼の声は、まるで夜の風のように冷静で、計算されたものだった。
「そうね。明日、一人追放すれば私達の勝利よ。」
マリアは同意する。月光が彼女の顔に落ち、微笑みが微かに浮かぶ。勝利の匂いが、すでに彼女の鼻をくすぐっていた。
「明日は乱戦に持ち込んだ方がいいと思うんだよ。」
ジョーが言う。夜の闇が彼の言葉を強調し、興奮が微かに滲む。
「うん。詳しく聞かせて。」
マリアが頷く。月光が彼女の瞳に反射し、興味深げな光が宿る。
「俺はあのスティルスって奴に睨まれてる。だから、明日はスティルスに仕掛けるよ。俺が勝つか、あのスティルスって奴が勝つかの勝負だ。」
ジョーの目は輝き、まるで夜の獣のように鋭く、勝利への渇望を露わにする。
「フフ、貴方ならそう言うと思ってた。打ち負かしたいんだろうって思ってる気がしてたわ。」
マリアが笑いながら言う。彼女の声は、闇に溶け込むように柔らかく、しかしジョーの心を的確に突く。
「ハハ。そういうお前もだろ? お前はあの、ニールって奴打ち負かしたいんじゃないか?」
ジョーが笑みを浮かべながら返す。夜の風が廃屋の壁を叩き、二人の対立を煽る。
「ええ。私もあの男を打ち負かしたいわ。その為にここまで下積みしてきてたもの。」
マリアの目も輝き、月光がその野心を照らし出す。
「だから、俺はスティルス狙いだ。マリアはニール狙いだ。この二つの議論を起こして滅茶苦茶な乱戦に持ち込んでやろうぜ。」
ジョーの声は、興奮を抑えきれず、夜の闇に響く。
「二つの策があれば、どちらかは通るわね。」
マリアが笑う。彼女の微笑みは、まるで闇の花のように妖しく、勝利の予感を漂わせる。
「……言っておくが、狼と村との勝負だけじゃねぇぞ? 明日は俺とお前の勝負でもある。」
ジョーが、嬉しそうにマリアを見る。月光が二人の顔を照らし、互いの野心が交錯する。
「どちらの作戦が通るかの勝負ね? 面白いわ。その勝負受けるわ。」
マリアが笑みを浮かべて答える。夜の冷気が彼女の息を白く染め、興奮が静かに膨らむ。
「明日の勝負を楽しみにしてるぜ? それじゃあ、今日の襲撃に向かおうぜ。」
ジョーの声は、興奮を抑えつつ、行動を促す。月光が二人の影を長く伸ばし、廃屋の床に不気味な模様を描く。
そして、二人は闇の中へと溶け込み、村人の襲撃へと向かった。夜の風が彼らの背を押し、村の寝息を掻き消す。
彼らの計画は、勝利への序曲を奏でていた。




