村人のイギーと村人のボウイ
イディオット村の昼下がりは、穏やかな陽光に満ちていた。青空の下、村の石畳は太陽の熱を浴びてほのかに輝き、集会所の古びた木の扉が開け放たれている。外から吹き込む風が、埃っぽい室内に涼を運び、村人たちの頰を優しく撫でる。ここは、何度も狼の襲撃を防いできた村――その誇りと警戒心が、村人たちの日常に静かに息づいていた。
今日は狼の気配はない。集会所には、村人たちが円形に座り、イギーとボウイを中心に、狼が来た時の対策を話し合っていた。昼の光が彼らの顔を照らし、笑顔と真剣さが交錯する。
イギーが、集会所の中央に立ち、皆に向かって声を張る。
「狼を見切る為に必要なのは、とにかく『読みを出さないヤツを追求する事』だ。」
その言葉に、村人たちは静かに耳を傾ける。昼の光がイギーの顔に落ち、彼の目は、まるで太陽のように力強く輝いていた。
「もう少し、噛み砕いて説明するぜ。狼探しってのは『限られた時間の中で狼読みを出す』ってのが、ルールだ。まぁ、例えるなら『お母さん晩御飯を7時のタイムリミットまでに作る』みたいな物だな?」
イギーの独特な例えに、集会所が一瞬、笑いに包まれる。村人たちの肩が揺れ、昼の風がその笑い声を外へと運ぶ。イギーは満足げに頷き、続ける。
「それが村の仕事ってもんだ。お前ら言うだろ? お母さんが、6時半になっても晩御飯の準備をしてなかったらどうする? 『お母さん、何してるの?』ご飯作らないの?って言うだろ?」
村人たちは、くすくすと笑いながら頷く。昼の光が彼らの顔に落ち、まるで子供のような無邪気さが一瞬よみがえる。
「だから、意見を出さないヤツは逃げてる狼の可能性があるんだ。迷わず追求しろ。」
イギーの声は、笑いを残しつつ、鋭く締まる。村人たちの目は、真剣に彼を捉える。
「さぁ、次に……意見が出た時の反応なんかも大事だな。例えば俺が『ボウイは意見を出してないから狼だと思う』と言ったとする。」
イギーは、隣に座るボウイをちらりと見て、続ける。村人たちの視線が、昼の光の中でイギーに集中する。
「そこで狼は『あっ、これボウイを狙えるんじゃないかな?』って感じで、便乗する可能性が大いにあるんだ。『確かに、ボウイは怪しいね』なんて反応をしがちだ。」
イギーの理論は、まるで昼の陽光のように明快に、村人たちの心に染み込む。彼は一瞬、集会所を見渡し、反応を確かめる。
「さぁ、お前達……今の俺の言葉に『うん、ボウイは怪しい』なんて素直に思ったか? 『え?』とか『イギー、本当に?』なんて思っただろ? それが村人の素直な反応ってわけだ。」
村人たちは、再び頷く。昼の光が彼らの顔に落ち、笑顔と納得が交錯する。
「つまり、狼はこういう追放位置に敏感って特徴があるな。そういうヤツを見かけたら、容赦なく追求してやれ! さぁ、次はボウイの番だ。」
イギーは、ボウイに軽く手を振って議論を譲る。村人たちの視線が、昼の光の中でボウイに移る。
ボウイは、穏やかな笑みを浮かべながら立ち上がる。昼の風が彼の髪を揺らし、まるで軽やかな知性を象徴するように。
「うん。イギーのセオリーは間違ってはいない。僕も否定する気はない。ただし、問題は『狼はこういったセオリー対策をして村に乗り込んでくる』事なんだ。」
彼の声は、まるで昼の陽光のように温かく、しかし鋭い洞察を帯びていた。村人たちは、静かに耳を傾ける。
「残念ながら狼は、そんなに頭の悪い存在ではない。一つ僕達が狼対策をセオリーを作れば、そのセオリー破りのセオリーを作って乗り込んでくるんだ。」
ボウイの言葉に、イギーが苦笑いを浮かべる。
「……そう。それで俺も何度クソみたいな失敗をしたか。」
集会所に、再び笑いが広がる。昼の光が、村人たちの絆を照らし出す。
「お母さんだってそうだ。6時半までにご飯を作ってなかったとしても、その日は忙しくて無理だった可能性もあるだろ? 僕が狼が疑われた事に『確かに、怪しい』と言っても、それは口には出さずに僕の事を疑ってたもかもしれないだろ?」
ボウイは、軽やかに続ける。昼の風が、彼の言葉を優しく運ぶ。
「そう。俺達が言いたいのは『セオリーは絶対じゃない』って事。」
イギーが、ボウイに頷きながら言う。
「ただし、セオリーと言うのは議論を進めるには非常に有効的な物なんだ。自分なりの『狼を見つける法則』は持っていてもいい。真に重要なのは、そこからの『対話』だ。」
ボウイの声は、まるで昼の陽光のように、村人たちの心に希望を灯す。
「これは繰り返して言う。セオリーに操られるな。セオリーに操られると俺みたいなクソみてぇな失敗繰り返す事になるぞ。そこ、ボウイは俺と違って臨機応変にやってるよな?」
イギーは、ボウイに笑みを浮かべる。昼の光が、二人の友情を照らし出す。
「いやぁ、なんだかんだで僕もセオリーには頼ってるよ? でも、何回そのベースのセオリー変えたかはわかんないよ。カメレオンスタイルだよ。」
ボウイは、明るく笑う。集会所に、村人たちの笑い声が響き、昼の風がそれを外へと運ぶ。
イディオット村の昼下がりは、狼の気配のない穏やかな時間だった。だが、イギーとボウイの言葉は、村人たちの心に、いつか来る狼の襲撃への備えを静かに刻み込んでいた。
昼の陽光が、村の結束を照らし、未来への希望を輝かせていた。




