狼のマックスと狼のキース
サニーヴェイルの村を滅ぼしにやってきた二人の狼。頭脳明晰なマックス。冷静沈着なキース。二人は数々の村を滅ぼしてきた。
だが、この村にはそんな二人の狼を打ち破るような存在が待っていた。
マックスとキースが集会所の扉を開けると、目の前は子供だらけだった。木卓を囲む小さな顔、ピョコピョコと動く頭。
マックスが目を丸くし、キースと顔を見合わせる。
「お、おい、キース…これ、村人全員子供じゃね!?」マックスの声が裏返る。キースは無言で眉を上げる。陽光が二人の困惑を照らす。
「怖いよ…」「これ、何するの?」「僕、わかんない…」
子供たちが小さな声で囁き合う。ある子は袖を握り、ある子は木卓をコツコツ叩く。マックスは戸惑う、キースは静かに子供たちを観察する。陽光が子供たちの不安な瞳に反射し、集会所に奇妙な空気が漂う。
(この村を滅ぼすには、この子たちを…いや、さすがにキツイだろ…!)
マックスが内心では焦るが、咳払いをして整える。
「えっと、ねぇねぇ、皆! とりあえずさ? 皆で狼探さない?」
陽気な声で子供たちに呼びかける。赤いジャケットが揺れ、彼の笑顔は少し引きつる。キースは一歩引いて様子を見つつ、静かに頷く。
「うん、わかった!」「僕、頑張る!」「狼ってどうやって探すの?」
子供たちがマックスの提案に目を輝かせるが、すぐに首を傾げる。
一人の子が「狼、怖い……」と呟くと、他の子達も「うん……怖い……」と連鎖が起こる。
マックスはキースに助けを求める視線を送るが、キースは無言で小さく頷くだけだ。
「えっとね、狼を探すには、占い師さんの能力が必要なんだよ!」
マックスが手を叩き、子供たちを盛り上げる。
「だから、占い師さんはカミングアウトしちゃおう! はい、占いさんだ~れだ!?」
彼の声が集会所に響く。陽光が彼の赤いジャケットを輝かせ、子供たちの視線がキョロキョロ動き出す。
だが、誰も手を挙げない。子供たちが顔を見合わせ、「でも、占い師出たら狼が狙わない?」「そうだよね、狙ってくるよね?」と相談し始める。
ある子は「怖いよ…」と他の子の袖を引っ張り、別の子も「うん、僕も怖い…」と頷く。
マックスは焦り、キースを見る。キースは小さくため息をつくだけだ。
「いやいや、占い師さんが出ても、きっと狩人さんが守ってくれると思うんだよ!」
マックスが笑顔を貼り付け、必死に続ける。
「占い師さん、勇気出してカミングアウトしてくれないかなぁ?」
陽光が彼の汗を照らす。
子供たちは「狩人さんいるの?」「ほんと?」とざわつくが、誰も手を挙げない。キースは静かに首を振る。
「う~ん、じゃあ、発想変えてみようか!?」
マックスが手を叩き、目を輝かせる。
「皆、ババ抜きやったことあるよね?」
子供たちは「うん!」「あるある!」と元気に頷く。
「ほらさ、ババ抜きって、一枚一枚カード指して『このカードがジョーカーだろ!?』って聞くでしょ?」
子供たちは「うん、聞く!」「する!」と返す。
「そしたらさ、相手も反応するじゃない? 『あれ? 適当に言ったのに、これ当たってる?』って思うことあるよね?」
子供たちが「ある!」「わかる!」と小さな歓声を上げる。キースが小さく頷く。
「だから、狼もそういう感じで探してみればいいんじゃないかな?」マックスは子供たちに笑顔を見せる。それはそれはもう精一杯の。
「じゃあ、僕が一人一人に質問していくね! はい、『貴方は狼ですか?』」
マックスが一人の子供に聞く。
「僕は狼ではありません!」
その子供が元気に答える。
「お~、いいねいいね~! 元気元気元気! 皆、拍手~!」
マックスが手を叩いて煽る。子供たちも同じように拍手をする。
マックスは笑顔で次の子供に「貴方は狼ですか?」と聞く。
その子も「狼じゃないよ!」と元気な返事。
「じゃあ、こういう感じで僕が聞いていくから、皆も元気良く答えよう! ババ抜きと同じ! 狼はここでドキッとしちゃって変な返事しちゃうかもよ!?」
マックスはもう自分が何をしているのか、理解出来ていない。
一人の子供がポツリと呟く。
「狼さんを見つけたら、どうするの?」
集会所が一瞬静まる。
マックスは目を泳がせながらも、その自慢の頭脳をフル回転させる。
「そうだなぁ、狼と思う人を見つけたら、ちょっと申し訳ないけど…倉庫に閉じ込めちゃおうか!?」
マックスの頭脳が答えを導き出した。
「それで、狼も夜になったら多分、誰か一人を倉庫に閉じ込めにくる! 皆も暗い倉庫は嫌だよね! だから、頑張って狼を探そう!」
子供たちは「うん!」「探すよ!」と元気に返す。キースが頭を抱える。
陽光が二人の困惑を照らし、子供たちの笑顔が集会所を満たす。




