霊能者のピンク
ソワット村の夜、ピンクの自室は静寂に包まれていた。窓から差し込む僅かな月明かりが、床に散らばるビール瓶を照らす。
ピンクはビール瓶を片手に、その静寂を嫌うかのように、涙を流しながら歌っていた。
「……Na-na-na-na-na-na-na。」
初日の議論が終わり、犠牲になったのはケイリーだった。霊能者ピンクの元にケイリーの結果が舞い降り、彼女が村人だった事実を知った。
今、その真実を知るのはピンクと狼のみである。夜の静寂が、彼女の心を重く締め付ける。
「……バカなケイリー。」
ピンクの呟きが、月明かりの揺らめきに溶けた。
初日の議論。ケイリーは村人に疑われた。彼は懸命に弁論したが、なぜか疑いの声が連鎖的に加速していった。ピンクはそれを思い出し、ビール瓶を握る手に力がこもる。
「……あの連鎖反応、絶対におかしいよ。膨らませた奴の中に犯人はいる。」
ピンクはビール瓶を一気に飲み干し、夜の静寂に鋭い目を向けた。
議論の場面が脳裏に蘇る。複数の村人に疑われ、ケイリーは不安そうにピンクを見つめた。ピンクは皆を落ち着かせるよう制したが、止まらなかった。
ざわめきは止まらず、ケイリーの不安な目は、ピンクをただ見つめるだけだった。
ピンクはケイリーの為に必死に収めようとしたが、それでも結果は実らなかった。
「アタシはアンタを全力で守ったじゃない……アンタに全てを捧げたじゃない……!」
ピンクの握った拳が震え、涙が頬を伝う。月明かりがその滴を静かに映した。
「アンタ自身がしっかりしなきゃこうなるのよ……! こんなのフェアじゃないよ……! バカっ……!」
ピンクは飲み干したビール瓶を壁に投げつけた。ガラスの破片が夜の静寂に散らばり、鋭い音が部屋を満たす
窓から月明かりが差し込み、散らばったガラスの破片を照らす。皮肉にも星の輝きのように、美しく照らされる。
「……アタシの完敗だよ。」
ピンクは背もたれに寄りかかり、夜の静寂に目を閉じた。
犠牲になったケイリーはもう戻って来ない。
ピンクは目を閉じて心を無にする。
ゆっくりと深呼吸して、自分の本心を探し始める。
「……喧嘩がしたい。」
ピンクの呟きが、散らばる破片に木霊した。
「ケイリーは……犠牲になりました……で? だから何?」
答えが見つかった。ピンクは前へと進む。
彼女は立ち上がり、もう一本のビール瓶を手に取った。月明かりが彼女の顔に深い影を刻む。
「アタシは霊能者なの……村を導く存在の霊能者なの……!」
ピンクはビール瓶を一気に飲み干し、力強い声で宣言した。
「まだ村には勝てるチャンスはあるの……! いらない……アンタなんて必要ない……! アンタはただの駒……!」
前に進む為に必要な思いだけを強く思う。ピンクの声は自分に言い聞かせるように響き、夜の静寂を切り裂いた。
「大丈夫……アタシは大丈夫よ……ケイリー……明日わからせてあげるからね……?」
ピンクは優しく囁きながら、再びビール瓶を壁に投げつけた。ガラスの破片が散らばり、夜の静寂に鋭い音が響く。
「フフ、次こんなヘマしたらぶっ飛ばすからね……必ず、またここに戻って来なさい……。」
ピンクはケイリーへと呟き、床に倒れ込んだ。夜の静寂が彼女を包み、明日の戦いに備える力を与える。
――そして翌日。
ソワット村の集会所に、ピンクの声が響き渡った。昼の陽光が窓から差し込み、ざわめきの残響が村人たちを包む。
「残念な結果から報告するよ。ケイリーは白。村人だ。でも、アンタ達、気を落とさないで。ケイリーの仇をアタシ達で取るんだよ。」
ピンクの声は力強く、陽光に照らされた目が鋭く光る。村人たちは静かなざわめきを一瞬見せるが、それぞれ覚悟を決める。
「アタシの考えでは、昨日ケイリーへの疑い……そこを連鎖させるように動いた狼がいると思ってるんだ。」
ピンクの声は陽光を貫き、村人達を導いていく。
彼女の鋭い目が、狼の影を捉え始めている。




