占い師のエレナと狂信者のジョー
月光の下、集会所の木卓を囲む村人達の声が響き合う。一人の男が叫ぶ。「レイモンドの態度は怪しいぞ!」別の声が反発する。「いや、お前の方こそ昨夜の動きが不自然だ!」疑念が疑念を呼び、言葉は矢のように飛び交う。誰もが互いを睨み、信頼は脆く崩れ去る。卓上の燭台の炎が揺れ、村人達の顔に影を刻む。
そんな中、エレナは一歩引いた位置で、鋭い瞳で議論を凝視する。彼女の黒髪は月光に照らされ、静かな威厳を放つ。占い師としての自信が、その姿勢に宿る。村人達の叫び声が響く中、彼女は無言で全てを見透かすかのように観察を続ける。
ジョーは横目でエレナを盗み見る。赤いマントの下、唇がニヤリと歪む。内心、哄笑が響く。
(あの占い師、まぁ真剣な面して顔で観察してるけど、なんにもわかっちゃいねぇな。エレナちゃんよぉ?それじゃあ、俺には勝てねえよ。)
興奮が彼の瞳をギラつかせる。
(俺もお前と同じ力を持ってんだ。いや、それ以上だ。狂信者はゲームの始まりから狼がわかるんだよ。狼はゲイル。つまりそれ以外は全員村人!それが俺に見えている完全な真実だ。占い師の鑑定?一人ずつチマチマ調べて、探すだけ。俺もゲイルも、もう全部わかっている。狂信者は占い師の完全上位互換だ。エレナ、お前のちっぽけな能力じゃ、俺らのゲームには届かねえ!)
エレナは村人達をじっと観察し続ける。月光に照らされたその瞳は、まるで夜の深淵を覗くようだ。一人ひとりの仕草、言葉、僅かな動揺を捉え、チマチマと誰を占うべきが良いのかを熟考する。
(おうおう、頑張ってるなぁ。でもゲイルを見抜けるかな?ハハ、できるわけねえだろ。エレナちゃん、一生懸命誰を占うべきか考えて、完全に能力に振り回されて。ゲイルの言う通り何も分かってねえな。ゲイルに頭下げてついてきてよかったぜ。俺は日々狂えてきてる。今の俺は、狂信者だ。それどころか……俺は完全な狼にもなる事が出来るだろう。)
続いている村人達の疑心暗鬼の中にゲイルの声が議論を切り裂く。
「それはおかしいんじゃないか?」
低く、冷たい声が集会所を凍らせる。彼は長身で灰色の髪と金色の瞳が月光に映え、底知れぬ威圧感を放つ。村人達が一瞬息を呑む。ゲイルの微笑は穏やかだが、その言葉は刃のように鋭い。議論が波立つ中、彼は静かに場を支配する。
ジョーはゲイルをチラリと見る。
(ゲイルは…恐らくカオスを望んでる…! こいつの言葉、村をさらに乱すための策だ。恐らくだが…!)
ジョーの心に迷いが走る。ゲイルの真意は完全に見えていない、軽薄な自信が一瞬揺らぐ。だが、彼はニヤリと笑う。
(まあ、いいか。カオスなら俺の得意分野だし…それにゲイルならなんとかなるだろ!)
「おかしいって事はないだろ? 俺は一理あると思うぜ?」
ジョーが割って入り、ゲイルを鋭く睨む。赤いマントが揺れ、彼の指は挑発的に卓を叩く。
ゲイルがゆっくり振り返り、金色の瞳でジョーを射抜く。
「占い師が邪魔をしないでくれ。俺は彼に聞きたいんだ。」
その声は落ち着いているが、冷たい殺気が漂う。ゲイルの手がわずかに拳を握り、月光に映る影が不気味に伸びる。
「なんで邪魔しちゃいけないんだよ。占い師は話し合いに参加しちゃいけないってルールでもあるのか?」
ジョーが一歩踏み出し、ゲイルを睨み返す。軽薄な笑みが唇に浮かぶが、目には少しの動揺が滲む。
「俺がおかしいと思う理由は彼から聞きたい。占い師の君からの説明からではなく、彼からだ。」
ゲイルの声は静かだが、刃のように鋭い。彼はジョーをじっと見据え、微かな笑みを浮かべる。それを見て、ジョーもニヤリと笑みを返す。そしてジョーは未来を見つける。
(さぁさぁ、エレナちゃんよぉ? 俺とお前、どっちが本物に見える? 俺の方が狼を探す為に色々やってるように見えねぇか?ゲイルが俺を評価してくれる事は確定してる…今は演技だが、勝負所ではゲイルは必ず俺を信じてくれるんだよぉ…!?お前は誰に信じて貰える? 占い師がこれじゃあ、この村も破滅確定だな。)
ジョーの内心で哄笑が響く。エレナの凛とした眼差しを見ながら、彼はほくそ笑む。
(もうゲイルと俺のゲームだ。エレナちゃん、お前じゃ俺達には勝てねえよ…!)




