狼のジョー
レインカー村は崩壊した。
夜の静寂が廃墟と化した集落を包み、木造の集会所には灯りが揺らめくだけである。
初日に吊られたのは狼だった。だが、ジョーはその日から最後の一人となるまで生き延びた。
占い師を騙り、村を欺こうとするジョーにとって、初日の犠牲は都合が良かった。
残りの狼は自分なら後は全て村人だ。
「嘘をつく」必要はなく、正しさだけを主張すればよかった。
彼は最後に本物の占い師を倒し、村を手中に収めた。
ジョーの「正しさ」の中に何が込められていたのかは、誰もわからない。
夜の灯りが揺れる集会所で、ざわめきの残響が静かに消えていく。
ジョーは最後に残ったマリアを見据えた。夜の静寂が彼の冷たい目を際立たせる。
「さぁ、後はお前で終わりだな。もう村人の振りをする必要はない。」
マリアは静かに微笑み、夜の灯りに照らされた顔に冷たい笑みが宿る。
「おめでとう。今回は何もしてあげられなくてごめんなさいね。私も村人の振りは終わりよ。私は狂人よ。」
「……何?」
ジョーの声が低く響き、夜の静寂にわずかな波紋を広げた。
「今回の見極めは一番厄介だったわ。だって貴方は嘘をつかないもの。村を信じ込ませる事だけで戦ってたでしょ?」
マリアの声は刃のように鋭く、夜の集会所に冷たく響いた。彼女の目はジョーを捉え、静かな確信を湛える。
(……コイツ、恐らく本物の狂人だな。)
ジョーは内心で冷たく見抜き、夜の灯りが彼の目に静かな狡猾さを映した。
「貴方が誰か一人にでも狼と言ってくれたら、私にも判断のチャンスはあったわ。でも、貴方はそれをしなかった。本物の占いを越える占い師になる為に。貴方のその狙いを理解したから、私も最後は本物と思う方を生かしたのよ。」
マリアの言葉は夜の静寂を切り裂き、ざわめきの残響を飲み込んだ。彼女の冷たい微笑が、狂人の思考を静かに物語る。
「……ほう。」
ジョーは短く答え、夜の灯りに照らされた顔に深い興味が浮かぶ。
「狂人の私にはその判断が怖かったわ。私の仕事は本物の占いを見抜くのではなくて、狼を見抜く事だからね。」
マリアの声は冷たく、夜の静寂に刃のように突き刺さった。彼女の目はジョーを離さず、狂人の思考を静かに示す。
「……一つ、聞きたい事がある。」
ジョーの声が低く響き、夜の灯りが彼の顔に深い影を刻む。
「……何かしら?」
マリアは静かに首を傾げ、夜の静寂が彼女の冷たい微笑を際立たせる。
「……狂人の役割とはなんだ?」
ジョーの目は鋭く、夜の灯りに照らされ、静かな確信を湛えた。
「愚問ね。狼の勝利のために吠え、騒ぎ、村を乱す。それが狂人の役割よ。」
マリアの声は冷たく、刃のように鋭く、夜の集会所に響き渡った。彼女の言葉は静寂を切り裂き、狂人の信念を刻む。
「俺、お前と似た雰囲気のヤツに会った事あるわ……。」
ジョーの声が低く響き、夜の灯りが彼の目に遠い記憶を映した。どこかで見た、冷酷で鋭い影が脳裏を過る。
「あら、私のような冷酷な女なんていないと思うわよ?」
マリアは微笑を深め、夜の静寂に冷たい声が溶けた。彼女の目はジョーを試すように光る。
「……いたんだ。」
ジョーは静かに答え、夜の灯りが彼の顔に深い確信を刻んだ。
遠い記憶の中、似た雰囲気の男の影が、ほんの一瞬、夜の静寂に浮かんだ。




