狼のマドンナ
エクスプレス村は、夜の静寂に沈む難攻不落の集落である。
幾多の狼たちが挑み、散っていったその村の外れ、深い森の闇に二人の狼が潜んでいた。星の瞬きが木々の間を抜け、冷えた風が葉を震わせる。マドンナとレディは、遠くの村の灯りを静かに見つめていた。
「フフ、明日から楽しそうね。」
マドンナの声が夜の静けさを破った。彼女の微笑は星の光を映し、夜の闇を柔らかく照らした。
「……マドンナさん、数々の狼たちが挑んで失敗した村です。心構えをしっかりと。」
レディは静かな眼差しで村を見据え、抑制された声で答えた。冷えた風が彼女の髪をわずかに揺らし、表情は動かない。
「パーティに必要な心構えは、楽しむ気持ちでしょう? 素敵な方に出会えるといいわね、フフ。」
マドンナの唇が弧を描き、微笑が夜の森に溶けた。彼女の目は星よりも鋭く、村を飲み込むような力を秘めているようにレディは感じる。
「貴女の狼としての力は素晴らしいんだから、貴女も楽しむ心を持ちなさい。」
マドンナはレディを振り返り、穏やかな声で続けた。夜の静寂が彼女の微笑を際立たせ、まるで女王のような気配を放つ。
「はい、ありがとうございます。」
レディは静かに頷き、星の瞬きが彼女の真剣な顔を淡く照らした。冷えた風が彼女の肩を撫で、抑制された声に敬意が滲む。
「私のスタイルを単純化して強みにしてるわね。貴方のシンプルさは強みなの。」
マドンナは手を軽く振って笑い、夜の闇に彼女の微笑が柔らかな光を放った。狡猾さと自信がその表情に宿っている。
「ありがとうございます。」
レディは短く答え、冷えた風が彼女の髪を揺らした。静かな眼差しが村を見据え、変わらぬ落ち着きを保つ。
「フフ、あの村の村民たちは戦士ではないわ……ただの声の持ち主……私たちのレベルじゃないの。」
マドンナは両手を広げ、夜の静寂に微笑を響かせた。彼女の声は軽やかだが、どこか村を見下すような余裕が漂う。
「……フフ、言いますね。マドンナさん。」
レディの口元がわずかに緩み、夜の星明かりに小さな笑みが浮かんだ。ここまでの冷静さとは異なる、柔らかな温かさが覗く。
「あら? ようやく笑顔が出たわね。そうよ。無表情より、そういった笑顔の方が何かと得があるの。頭じゃなくて、目の力が強いスタイルって面白いわよね?」
マドンナはレディを見つめ、夜の闇に微笑を深めた。彼女の目は星空よりも鋭く、村を惑わす策略を秘めていた。
「そうですね。」
レディは静かな眼差しに戻り、冷えた風に髪を整えた。星の瞬きが彼女の顔を淡く照らし、真剣さが再び浮かぶ。
「でも、大事なのは聞き上手なこと。フフ。」
マドンナは指を唇に当て、夜の静寂に穏やかな笑みを浮かべた。彼女の微笑は、村人達を引き込む罠のように静かに輝く。
「……聞き上手とは?」
レディは眉をわずかに上げ、抑制された声が夜の闇に響いた。彼女の眼差しは真剣そのものだ。
「私たちの話はあの村には難しすぎるんじゃないかしら? だから、彼らの話を笑顔で穏やかに聞いてればいいの。きっと彼らは気持ちよくなって、無自覚の混乱を引き起こしてくれるわ。」
マドンナは夜の森に一歩踏み出し、微笑が星の瞬きに映えた。彼女の声は軽やかだが、狡猾な策略がその奥に潜む。
(この人は天性の狼だ……戦いを誰よりも楽しんでいる……)
レディはマドンナの背中を見つめ、夜の静寂の中で静かに思った。彼女の眼差しに、かすかな敬意の光が宿る。
「さぁ、彼らの話を聞きに行きましょう。蚊の羽音よりも、心地良い音色のはずよ。」
マドンナは振り返り、夜の星空に自信に満ちた微笑を見せた。
冷えた風が彼女の髪を揺らし、狼の戦いが今始まることを告げる。




