村人のマシュー
セクオンファイア村での戦いは村の勝利に終わった。
村人達は勝利の余韻に包まれていた。山間の集落に夕陽が沈み、木造の集会所の周りで焚き火がパチパチと音を立てる。
もう頭を働かせる必要はない。村人たちは疲れ切った体で座り込み、ビール瓶を回し飲みながら笑い合う。狼の脅威が去った安堵が、空気を甘く染めていた。
カレブが焚き火の前に仁王立ちとなり、みんなにビール瓶を掲げた。
「みんな! この勝利は俺らの絆の証だぜ。特にジャレッド、お前の占いがなければ勝てなかったかもしれない。お前があの狼を占ってくれた事で流れが変わったよな。」
ジャレッドは木のベンチに腰掛けて、ビール瓶を一口傾けながら微笑んだ。
「ありがとう、カレブ。でも僕の占いだって、ネイサンの霊結果があってこそさ。最初の狼の結果があったからこそ、ピーンと来たんだ。」
ネイサンは焚き火の前で膝を抱えて座り、煙を払いながら嬉しそうに笑った。
「おいおい、ジャレッド、褒めすぎだろ。俺はただ結果を報告してただけ。結局はカレブのリーダーシップが村を引っ張ってくれたおかげだろ?お前を占い師だって信じて皆に伝えたのはカレブなんだからよ。」
三人は顔を見合わせて大笑いし、瓶をカチンとぶつけ合う。
カレブが肩を叩き、ジャレッドが軽くハグ、そしてネイサンがハイタッチ。
勝利の余韻が、兄弟の絆のように温かく広がる。
その様子を、少し離れた木陰からホッコリ眺めていたのがマシューだった。
膝に抱えて座り、焚き火の光が彼の静かな笑顔を照らす。村を勝利に導いたMVP達の語り合いを静かに眺める。
だが、その瞳には満足げな光が浮かんでいた。皆の笑い声が、ハーモニーみたいに心地いい。
カレブがふと気づいて、マシューの方を振り返った。
「おい、マシュー! お前もこっち来いよ。なんだかんだで全部マシューが下地作ってるおかげで勝ったんだからな? お前の静かな村の推理の土台……小さな発見が狼の尻尾を掴んでくれたんだぜ?お前は最高だよ。だから飲もうぜ!」
ジャレッドとネイサンが即座に頷き、ジャレッドが手を差し伸べた。
「そうだよ、マシュー。僕の占いも、君の発見がキッカケなんだ。えっと……ごめん……!なんて言ってたかは覚えてないけど、マシューがあの狼に気になってるって言った事から、僕も警戒を始めたんだよ。」
ネイサンが焚き火の薪をくべて、笑いながら言った。
「お前なしじゃ、俺もリズム崩れてたぜ。俺は安定してるように見えたかもしれないけど、それはお前の小さな発見がリズムを作ってくれてたからだ。」
三人が揃ってマシューに瓶を向け、温かい視線を送る。マシューは照れくさそうに首を振りながらも、輪に加わる。そしてビール瓶を手にする。
柔らかな空気が夕陽の余韻に溶け込む。
「いや、僕なんか小さい事やるだけだからさ……みんなの活躍があってこそだよ……でも、ありがと。この村、守れてよかったな。」
マシューの謙遜に、三人はまた大笑い。
焚き火の炎が揺れ、村の夜は穏やかに更けていった。
狼の影は去り、絆のメロディだけが残った。




