村人のアンセルモ
ウォーク村の議論は最終日を迎えていた。夕暮れの赤い光が木造の集会所に差し込み、村人たちの影を長く床に伸ばす。
今日で全ての決着が決まる。残った村人たちは村の運命を握る議論に全てを懸け、集会所は熱が高まる。
一番の強い熱を持っていたのはアンセルモだった。
彼は村人だ。
夕暮れの光が彼の血走った目を照らし、額に汗が光る。
「絶対にダレルが狼だ!」
アンセルモはダレルを睨みつけ、拳を握りしめて叫んだ。
「……何故、そう思う?」
ダレルは怯まず、アンセルモを同じく鋭い目で睨み返した。夕暮れの赤い光が彼の顔に影を刻み、静かな闘志が漂う。
「お前がずっとこの村を混乱に導いてるからだよ! 昨日の夜、確信したぜ!」
アンセルモは身を乗り出し、声を張り上げた。夕暮れの光が彼の肩に当たり、熱気が辺りを包む。
「俺が混乱に導いてるだと……!?」
ダレルの表情が歪み、夕暮れの影が彼の顔を一層険しく見せた。歯を食いしばり、拳が震える。
「その表情……! やっぱり間違いないな!? いいか!? 初日から振り返るぜ!? 初日は俺が狼を追い詰めたな!? その時はしっかりとお前も俺に同意してくれていた!」
アンセルモは木のテーブルを叩いて叫ぶ。夕暮れの赤い光が彼の拳に反射する。
「あぁ。あの時のお前の推理は鋭かったよ。」
ダレルは静かに頷き、夕暮れの光に照らされた目が一瞬穏やかになる。だが、すぐに鋭さを取り戻した。
「だが、次の日はどうだ!? お前は最初は俺に同調していたのに、二日目になるとピタっと動きを止めたじゃねぇか!? あれはどうなってんだよぉ!?」
アンセルモが再びテーブルを叩き、夕暮れの影が揺れる。辺りの空気が一層重くなった。
「それは……」
ダレルが口を開こうとした瞬間、アンセルモが遮るように声を張り上げた。
「次の日! 三日目だ! ここで俺が狂人を追い詰めた! それなのに、お前は何処を見ていた!? あの議論に参加してなかったよな!? 何処を見ていた!? 狂人が追い詰められている事に恐れ……ここで、俺の妨害をしてきた!? 違うか!?」
アンセルモは叫び、夕暮れの光が彼の血走った目に炎のような輝きを添えた。アンセルモは止まらない。
「アンセルモ……」
ダレルは歯を食いしばり、夕暮れの影が彼の顔に深い溝を刻む。
「最初に俺を信じたのであれば、何故俺を信じ続けなかった!? お前の行動に一貫性はない! 狂人を俺が追い詰めた時、お前は俺の邪魔をしていた! それが狼の証拠だ!? 違うか!?」
アンセルモの声が辺りを震わせ、夕暮れの赤い光が彼の拳を赤く染めた。
「流石に俺も我慢の限界だ! アンセルモ! それなら俺も言わせて貰うぞ!?」
ダレルが大声で叫び、夕暮れの光に照らされた彼の顔が怒りに燃えた。
ホルトは二人争いをじっと眺めていた。夕暮れの影が彼の顔を半分隠す。
ホルトは口元に笑みが浮かびそうになるのを必死に堪えていた。
アンセルモとダレルは村人である。
狼はホルトなのだ。
二人は完全に混乱に飲まれ、今、自滅合戦を行っている。
このまま時が過ぎれば、自分の勝ちだ。自分は何もしないでいい。この二人の自滅を眺めていればいいのだ。
ホルトの目が夕暮れの光にキラリと光り、静かな勝利の確信が漂う。
「言ってみろ、ダレル!」
アンセルモが叫び、夕暮れの赤い光が彼の顔に激情を刻んだ。
「俺は初日のお前を見て、村人だと確信したよ……お前の村を守りたいという気持ちが心から伝わってきた……最終日だからもう口にする……俺は狩人だ……ずっとお前を守っていた……」
ダレルは拳を握り、夕暮れの光に照らされた彼の目に一瞬の悲しみが浮かぶ。
「ここで狩人を名乗っても意味はねぇ!」
アンセルモが叫び、夕暮れの影が彼の顔に怒りを一層際立たせた。
「あぁ、狩人を名乗る事に意味はない……ただ、お前を信じていた事を伝えたいだけだ……まだ、俺の話は終わってない……俺の続きの言葉を聞け……」
ダレルは強く拳を握りしめ、感情を抑え込むように声を絞り出した。夕暮れの赤い光が彼の震える手に映る。
「初日をお前を信じたよ……でも、二日目だ。俺にはお前が暴走しているように見えた……結果を出した事から、お前に全能感が生まれ、エゴが生まれ……なんでも出来ると思い込み、二日目は初日に比べての鋭さを感じなかった……二日目は勢いだけで、議論してたんじゃないか……?」
ダレルの声は静かだが、夕暮れの光に照らされた彼の目は真剣だった。
「……なんだと? 俺が勢いだけだと?」
アンセルモの声が震え、夕暮れの影が彼の顔に深い困惑を刻む。
「それでも俺はお前を信じた……初日でお前の事は村人だと思っていたからな……この村の中心は間違いなくお前だ。だからお前を守り続けた。でも、俺には乱れたお前をコントロールする事は出来なかった……どうコントロールすればいいかわからずに、動きが止まったんだ……」
ダレルは目を伏せ、夕暮れの光が彼の肩に重く落ちる。
「俺は……お前について来て欲しかった……!」
アンセルモの声が掠れ、夕暮れの赤い光が彼の顔に滲む汗を照らした。
「三日目だ。お前の勢いは止まらなかった……それで狂人を追い詰めたな……だが、その時俺はお前のコントロールをする事はもう出来なかった! だから、お前と違う場所を見てたんだ! お前に足りない所を補おうとしていたつもりだった!」
ダレルの声が再び熱を帯び、夕暮れの光が彼の握り潰した拳を赤く染めた。
「俺は……お前と……!」
アンセルモの言葉が詰まり、夕暮れの影が彼の震える肩に落ちる。
「俺だってそうだ……お前とずっとやれれば良かったよ……! だが、これが現実だ! 目を覚ませ!」
ダレルは叫び、夕暮れの赤い光が彼の目に決意を刻んだ。
アンセルモは唇を噛んだ。血が滲むほどに。
夕暮れの光が彼の顔に赤い筋を映し、辺りの空気が重く沈む。
二日目からのダレルは「自分が望む事」を何一つしてくれていなかった。
だが今、ダレルの口からその理由が告げられた。後は、自分がそれを信じるか、信じないかのどちらかだ。
「ぐっ……!」
アンセルモの瞳から涙が溢れ、夕暮れの赤い光にキラリと光った。
アンセルモの心が揺れる。
ダレルの言葉が本当なら、自分の追及は誤りだったのか。
だが、初日の鋭さ、二日目の停滞、三日目の不在――全てが狼の証拠に見えた。
夕暮れの光に照らされた彼の震える瞳は、信じるべきか疑うべきかで千々に乱れながらも、拳を握り潰して最後の決断を絞り出す。
「……ダレル、疑って悪かった。」
アンセルモはホルトを睨みつけた。夕暮れの影が彼の目に新たな決意を刻む。
「謝るなら目を見て謝れ……まだ暴走してるんじゃないか……?」
ダレルは涙を流しながら言った。
夕暮れの光が彼の顔に滲む涙を照らしている。




