村人のケシャと霊能者のピンク
ソワット村は、山間の陽光が降り注ぐ小さな集落である。木造の集会所には村人たちのざわめきが響き、昼の光が床に揺らめく影を刻む。
初日の議論が始まった。村人たちは狼を探すため、口々に意見をぶつけ合う。
ケシャは木の椅子に座り、皆の議論を精一杯頭に詰め込もうとしていた。彼女の額には緊張の汗が光り、陽光に照らされた顔は真剣そのものだ。
「そんなに慌てなくても大丈夫だって。最初はゆっくり皆で方針決めればいいだろ?」
一人の村人がゆったりとした口調で言った。木の床に響く彼の声は、ざわめきの中で少しだけ落ち着きを取り戻させるようだった。
「ゆっくりやってて狼が見つかるのかよ?」
別の村人が声を荒げ、テーブルを軽く叩いた。陽光が彼の肩に差し込み、苛立ちを際立たせる。
「何もやらないって言ってるわけじゃないだろ? 好き勝手に騒いだら、それこそわけがわからなくなるだろ?
」
先の村人が眉をひそめ、腕を組んで反論した。集会所のざわめきが一瞬高まった。
「まぁ、そうだな。うん。」
もう一人の村人が頷き、椅子にもたれかかった。陽光に照らされた彼の顔には、渋々納得した表情が浮かぶ。
「だから、最初に方針を固めようぜ。何か案あるヤツはいるか〜?」
最初の村人が大きく手を広げ、集会所を見渡した。ざわめきが少し収まり、村人たちの視線が交錯する。
どうやら、狼を探す方針を固めることから始めるらしい。ケシャはようやく皆の話に追いついた。彼女の胸は高鳴り、頭の中で言葉がぐるぐる回る。
(皆、狼を探すために頑張ってる……私も何かアイディア出さないと……)
ケシャは目を閉じ、必死に考え始めた。陽光が彼女の髪を照らし、緊張した面持ちを柔らかく映し出す。
その瞬間、集会所に手を大きく打ち鳴らす音が響く。村人たちの視線が一斉にそちらへと向く。
「あのさ? 皆、アタシ、案の前に言いたい事あるんだけど、ちょっといい?」
議論を止めたのは霊能者のピンクだった。陽光に照らされた彼女の髪がキラリと光り、集会所のざわめきがピタリと止まる。村人たちの視線が彼女に集まった。
ピンクはキツい表情でケシャを見つめた。その瞳は鋭く、まるで心を見透かすようだった。ケシャは思わず背筋を伸ばし、緊張で喉が詰まる。
「ねぇ、ケシャ? さっきから、ずっと黙ってるじゃない。アンタも議論に参加しなさいよ?」
ピンクの声はハッキリと響き、集会所に静かな圧力を与えた。
「ご、ごめんなさい……」
ケシャは顔を赤らめ、うつむきながら小さな声で答えた。陽光が彼女の震える手を照らし、緊張が手に取るようにわかった。
「違うの。アタシはアンタに怒ってないの。アンタのペースでいいから前に進んでほしいの。」
ピンクは真っ直ぐな瞳で続ける、ケシャにはキツい表情のままだ。だが、彼女の瞳には、キツさの中に何かを感じる。
「アンタ、さっきからずっと黙って考え込んでるじゃない……そんな事じゃ頭は動かないわ。準備運動をしっかりしなきゃ。アンタはいきなり川に飛び込んで泳ぐの? 違うでしょ? 川に入る前は準備運動で身体を動かすでしょ!? だから、しっかり泳げるんでしょ!?」
ピンクは身を乗り出し、両手を振って熱く語った。陽光が彼女の動きに合わせて揺れ、集会所に活気を吹き込む。
「アンタが黙ってしっかり考えてるのは、アタシにはわかるわ。でも、もっと準備運動をしなさい。『うんうん』『なるほど』『そうですね』これくらいの相槌ぐらいは出来るでしょ?」
ピンクはケシャに指を向け、変わらぬまま表情のまま言う。
だが、彼女の声が、集会所の空気を一変させる。
「そ、そうですね……」
ケシャは目を丸くし、慌てて頷いた。陽光に照らされた彼女の顔に、わずかな決意が浮かぶ。
「身体も頭も同じなの。温めておかないといざって時には動かないわ。もっとアンタのカルマを見せて。アタシはアンタの勇気がもっと見たいわ!」
ピンクは拳を握り、ケシャに熱い視線を送った。集会所のざわめきが再び高まり、村人たちの視線がケシャに集まる。
「はいっ……!そうですよね!」
ケシャは声を張り上げた。陽光が彼女の背中を照らし、初めての決意が輝く。
「……皆、中断してごめんね。さぁ、議論を再開しましょう。えっと……どこまで話進んでたかしら?」
ピンクは髪をかき上げ、集会所を見渡した。
陽光に照らされた彼女の笑顔が、議論の再開を告げる。村人たちの議論が再び響き始めた。
勿論、ケシャも加わる形で。




