霊能者のジョー
ワンダーウォール村は、山間の陽光が降り注ぐ小さな集落である。木造の集会所には村人たちのざわめきが響き、昼の光が床に影を落とす。
初日、二人の占い師が名乗りを上げた。リアムとノエル。どちらかが本物の占い師で、どちらかが偽物だ。
その真実はリアムとノエル、そして闇に潜む狼だけが知る。村人たちにはわからない。
二人の占い師は全く異なるタイプだった。リアムは強いリーダーシップで村を引っ張り、ノエルはチームワークを重視して村をまとめる。
タイプの違う二人は初日から激しい議論を続けた。
――そんな議論は二日目も続く。
集会所はざわめきで揺れていた。
「自分勝手な主張をするな! 村人は家族だろ! 家族のことを考えろ!」
ノエルが叫んだ。
「その家族を引っ張っていくのが本物の占い師だろ!」
リアムが声を荒げて反論した。
二人の激しい言い争いに、村人たちは混乱していた。ざわめきが集会所を包み、陽光に照らされた床も揺れているようだった。そんな中、一人の村人が声を上げた。
「もう話にならないよ……なぁ、霊能者がまとめてくれないか?」
「……俺が?」
霊能者のジョーが眉をひそめた。陽光に照らされた彼の顔には、困惑が浮かんでいた。
「お前しか頼むヤツはいないだろ!? とにかく、あの二人を収めてくれよ!」
村人が叫んだ。
「う〜ん、確かに互いに噛み合ってないね……? じゃあ、ちょっと、リアム側の主張から聞いてみる……? はい、リアムとノエル、一旦、二人で議論するの止めてください……。」
ジョーが穏やかに二人を制した。
「なんでノエルとの話を止めるんだよ!? アイツが偽者だって俺が伝えなきゃ誰が伝えるんだよ!?」
リアムの熱は収まらず、拳を握って声を張り上げた。
だが、ジョーはあくまで冷静だった。
「だから、話は聞くって……家族を引っ張るって言ってるけど、それって具体的にどういうことなの? わかりやすく言ってくれるかな?」
子供をあやすように、ジョーは静かに続けた。
「今の周り見てたら、どう思う!? 俺以外まともに話してねぇじゃねぇか!? 軟弱者ばかりだよ!」
リアムは少し落ち着きを取り戻したようだが、勢いはまだ止まらなかった。
「はいはい……気持ちはわかるけど、あまり村人批判ってのはよくない……まぁ、確かにリアムが一番、村を引っ張ってくれてるな……。」
ジョーが穏やかに答えた。
「俺みたいなしっかりした奴がいないと狼を探せねぇだろ!? 俺が黙ったら、お前達、どうするんだ!? 誰も家族を引っ張ってくれないぞ!?」
リアムは熱を持って主張し、陽光に汗が光った。
「うん。わかるわかる。その気持ちわかるぞ。非常にその気持ちはわかる……うん、うん……。」
ジョーは深く頷き、集会所のざわめきを静かに見つめた。
ーー実はこの霊能者のジョーは、霊能者ではなかった。彼は狼だった。
本来なら、ワンダーウォール村には占い師二人と霊能者二人が初日に現れるはずだった。
その場合、占い師の真偽を見極めるため、霊能者が初日と二日目に犠牲になるのがこの村のルールだ。
ジョーは犠牲を覚悟で霊能者を騙った。いや、犠牲ではなく、ただの自暴自棄だったのかもしれない。
だが、運命はジョーを嘲笑うかのようだった。初夜に襲った村人が、たまたま本物の霊能者だったのだ。ジョーはその瞬間、村で唯一の霊能者となった。まるで、運命がジョーの犠牲を妨げるように。
ジョーは全てを知っていた。
初日、リアムは「グロールは村人だ」と宣言した。
だが、グロールは村人ではない。グロールは狼だ。
つまり、リアムは狂人である。
混乱した議論のまとめ役は、狼のジョーだった。彼は丁寧に、だが狡猾に、援護を積み上げていく。
「俺はリアムの主張は伝わってきたよ。皆はどうなんだ?」




