占い師のエディと村人のアレックス
ジャンプ村は、山間の陽光が淡く降り注ぐ小さな集落である。木造の集会所には、村人たちのざわめきが響き、昼の光が床に揺らめく影を刻む。
議論の初日、二人の占い師が名乗りを上げた。エディとサミー。真なる占い師はエディ、偽りはサミー。
その真実は知るのはエディとサミー、そして闇に潜むもう一人の狼だけ……他の村人達にはわからない。
議論と口論の境界は、霧のように曖昧である。
理を重ね、互いの真意を探るのが議論ならば、その声が高じ、感情が刃となるとき、口論に堕する。
傍目には、ただの騒めきに映るのみ。
されど、当人たちは自らの正義を信じ、言葉を交わす。
アレックスの眼には二人の行わっている物が口論に映っていた。
――そんな曖昧な行いは続いたまま、三日目になった。
現在、村にいるのはエディ、サミー、アレックス。そして、アンソニーとデイヴ。
サミーが集会所の中央で声を上げた。
「占い結果を報告するぜ。アレックスは黒だ。コイツが狼だ。」
その言葉に、アレックスの胸が高鳴る。陽光に照らされた彼の顔は、驚きと確信が入り混じる。
サミーの言葉が偽りだと、アレックスには一瞬でわかった。
彼は村人だ。
アレックスはエディの方へ目を向けた。
エディが立ち上がり、拳を握って宣言した。
「俺の占い結果はアンソニーが黒だ。アンソニーが狼なんだよ!」
エディの声は熱く、陽光に汗が光った。
本物の占い師はエディ。そしてその結果から、隠れていた狼はアンソニー。
アレックスは全ての結果がわかった。
デイヴが木の椅子から身を乗り出し、口を開いた。
「なるほど……サミー・アンソニー組か、エディ・アレックス組かのどっちかが狼ってことだな。」
デイヴは溜め息混じりに、眉をひそめて続けた。
「どっちのパターンでも、俺は村人確定だ……それじゃあ、今日は俺の一存で決めるぞ。まぁ、議論を続けてくれ……」
その言葉が口火となり、エディとサミーの議論が再び火花を散らし始める。
先に声を上げたのはエディ。
「お前はずっと酒に溺れたような主張ばかりしやがって! そんなスパイスは必要ねぇんだよ!」
サミーは冷静に切り返しす。
「完璧主義を気取ってるつもりか?お前の主張はつまらねぇ!」
二人の議論が再開される。
だが、アレックスにはそのやり取りが、相変わらず口論にしか映らなかった。
エディの「正しさ」も、サミーの「偽り」も、何もわからない。
何を言っていたか思い出そうとしても、「ただ言い争っていた」という記憶しか浮かばない。
デイヴが横で眉をしかめ、呆れた顔で二人の口論を見つめていた。彼もまた、口論にしか見えていないのだろう。
アレックスは全ての結果がわかった。
エディは仲間で、サミーとアンソニーが狼だ。
だが、それを伝える過程は霧に覆われている。
エディは仲間なのだ。
なのに、彼の「正しさ」の言葉は思い出せない。
このままでは、負ける。
アレックスの鼓動が高鳴る。
エディとサミーの口論は続いている。
デイヴの呆れた顔が、チラッと光に映る。
アレックスは静かに息を吸い、覚悟を決めた。
「ちょっと、聞いてくれ。」
村人たちの視線がアレックスに集まった。
「この三日間、俺が何を思っていたか……何を考えていたか説明する。俺の思う正しさも、判断の要素にしてほしい。」




