霊能者のオズボーンと狼のランディ
サバス村は、山間の小さな村だ。
この村には占い師がいない。いるのは霊能者、狩人、村人――そして、こっそり忍び込んだ狼。占い師がいないので、純粋な議論だけで狼を探すしかない……。
サバス村の村人たちは、そんな戦いを繰り広げるための独自の技を持っていた。
「おぉし、頑張って、狼見つけましょうか?」
霊能者のオズボーンが、ニヤニヤしながら言う。
俺ーーランディは、そいつの姿を見て驚愕したよ。
シャツはボタンがズレまくり、ネクタイはヨレヨレ、片手には酒瓶をチャポンと揺らしてる。
いくら霊能者でも、このだらしない格好で統制役って!? なんだコイツ……!
こんな酔っ払いが村を仕切るなんて、信じられねぇ……。
集会所の村人たちと騒ぐ。
「オズボーン! 飲んでるんじゃねぇよ! 仮指定してくれよ、お前がやらなきゃ議論進まねぇだろ!」
誰かが木の机をバンッと叩いた音がした。
オズボーンは酒を飲みつつ、ヘラヘラ笑いながら言ったよ。
「んじゃあ……仮指定は……君と、君〜!」
酔っ払いの指が、小刻みに震えながら振られる。二人の村人がアイツに差された。
「それじゃあ、二人のどっちが狼だと思うか、考えてみましょう〜!」
オズボーンは酒瓶を振り上げ、呂律も回っていない声で宣言した
なんだコイツ……全く理解できねぇ……ふざけてんのか? 狼の俺はここにいる……そこにはいねぇんだよ……!
ジェイクとザックの争いなんて、ただの混乱を引き起こすだけだぞ……
「じゃあ、ザック……行くぜ?皆がお前、オズボーンに要求してる時、声潜めてたんじゃないの?俺みたいに要求するのが普通なんじゃないの?」
「喚けばいいってもんじゃないだろう?あんなただ喚いただけで、信用は得られるってもんではない」
「その喚くの中の『狼を見つけ出してやる』という情熱……!俺にはそれがある。現に今も俺が会話をリードしてやってねぇか?」
「情熱には静かな情熱ってのもあるなぁ?お前はリードしていると言うが、それは俺が合わせている事で成立している。ここで俺も喚いたら会話にならないだろう?俺にはこの静かな情熱がある。」
ジェイクってヤツと、ザックってヤツが言い合いを始めた
コイツらはあの酔っ払いと違って、少しはまともだ……
「俺、ジェイク派〜!情熱ってのは外に出すもんだ〜!」
「ジェイク派〜!これは議論を作ってるのは、ジェイクだろ!」
「俺、ザック派〜!ザックの言い分は筋が通っている!」
二人の話を聞いて、村人達も声を挙げ始める。
どっちもいい線いってる。でも、俺には関係ねぇ。だって、そこには狼いねぇんだから……! 狼はここだよ……! そこで言い争ってるのは、村人二人なんだよ……!
「ジェイク〜、アウト〜。次、君がイン〜」
あの酔っ払いが声を挙げた。
チラッと見ると、そいつの震える指が俺を指してる。
「ジェイクがアウトの理由は皆の評価です〜。おめでとうございます〜」
酔っ払いは酒瓶からグビグビッと酒を飲み、ヘラヘラ笑っている。
「ランディはどっち派なのかも宣言してません。意見は出して欲しかったですねぇ。だからインしてもらいます」
酔っ払いの言葉に、俺の鼓動がドクンと高鳴る。コイツ……俺を見ていたのか……!?
「次はザックとランディのどっちが狼かを考えてみましょう〜」
完全に油断した……あの酔っ払い……だらしない格好で、ボタンも違えて、ネクタイはヨレヨレだ……酒瓶片手に、呂律も回ってねぇ、指も震えてる……
なのに、目は虚ろじゃねぇ……! そこに気づくべきだった……!
「第二ラウンドの始まりだ〜!」
村人が大声で『俺』の戦いを煽る。
コイツらのやってる事が、今、理解出来た……
この仮指定システムってのは、村人同士の争いでもいいんだ……ただのキッカケ……適当に指定したヤツの中に狼がいれば、それでよし!
いなくても、俺みたいなヤツを見つけて、入れ替えればいいんだ……!
「ランディ……何故、俺達の話を聞いて、何も言わなかったんだ……?」
ザックがニヤリと俺を睨む。
確かに、俺は出遅れたよ……でも、てめぇらのシステムは理解したぞ……! この目の前のザックに打ち勝てばいいんだな!?
そうすれば、また第三ラウンドが始まるだろ! 俺がアウトになる事もあるんだろ!?
あの酔っ払いを騙してぇ……あの酔っ払いに勝ちてぇ……!まずは目の前のコイツからだ……!
「話を聞いてないわけじゃねぇよ。俺もお前と同じなんだよ。静かな情熱を心に持って、お前達の事を考えてたんだ」
村人たちが「いいぞ!」「ランディ、いけ!」「静かな情熱対決の始まりか!?」とドカドカ盛り上がる。
俺の第一ラウンドの始まりだ……最終ラウンドで、あの酔っ払いを必ず騙してやる……!




