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2話 もしかして俺、なんかやっちゃいました?


 新たな世界に胸と希望を膨らませた俺が最初に抱いた感想は"最悪"だった。俺達は今大聖堂のような場所にいる。何故俺ではなく俺達という言葉を使ったのかというと俺の周りに憎き二年一組の連中がいたからだ。どうやらコイツらも一緒に転移させられたらしい。


 げんなりした気分のまま俺は肩を落とす。折角人が第二の人生に心躍らされてる時にこれはあんまりじゃないか、これでは夢見ていたチーレムライフなど夢のまた夢だ。考えてもみて欲しい、現世でチー牛陰キャだった俺が力を得た途端どこかのなろう主人公ばりにイキり散らしているのを見られたら間違いなくコイツらは小馬鹿にしてくるだろう。「おい桃豚! お前あっちでは大人しかった癖にこっちでは随分と元気だな!」そんな罵声が飛んでくるだけで身が悶えそうだった。


 できれば一人、もしくは玲花と二人だけで転移させられることが俺にとっては望ましかった。なのにこれでは最早罰ゲームだ。


 先程最悪と云ったがどれくらい最悪な気分なのかというとAVで男優のケツをドアップしたシーンを延々見せ続けられるくらい最悪な気分だった。こう云えば俺が今どれだけ落ち込んでいるか理解出来たことだろう。


 「やだ……どこよ、ここ……」


 「なにが起きてんだよ……」


 「もしかして誘拐されたのか!?」


 わけがわからないといった様子で騒ぎ出す生徒達、喧騒は次第に大きくなりいつしか小さなパニックを引き起こしていく。それを止めたのは女の声。


 「皆落ち着け、冷静になるんだ!」


 教育実習生の羽川理久(はねかわりく)が声を上げる。彼女のよく通る声がどよめく場の空気を少しだけ落ち着かせる。やるね理久ちゃん、流石の統率力だこと。俺は心の中でショートヘアの実習生に拍手を送る。


 そんなことを考えていると大聖堂の扉が開く。突然のことに場が沈黙する。


 入ってきたのは煌びやかな服を着た老人と数人の護衛、老人は値踏みするような眼差しを俺達に向けてきた。


 「よく来てくれた勇者達よ……私は、聖教騎士団教皇のブレイク・アッシュフォードと申す者。突然のことで驚いているかもしれないが少し話しを聞いてほしい」


 穏やかだが威厳のある口調でアッシュフォード教皇は言ってくる。


 「この度勇者様方を呼んだのは他でもない。君達に人類を救って欲しい」


 「はぁ、人類を救えだって? なに寝ぼけたこと抜かしてんだ爺さん、つーかここどこだよ、まずそこから説明しろよ」


 ある意味この場にいる者全員の気持ちを代弁したのは単細胞生物の服部だった。


 馬鹿かコイツは! 相手は武器を所持してるんだぞ、もう少し言い方があるだろ!


 教皇がブチギレたらどうすんだよと俺は内心ヒヤヒヤだったが、幸い器量の大きい爺さんだったらしく、アホの無礼にも特段気にするそぶりも見せず淡々と話しを進めていく。


 「そうだな……ではまず初めに君達を召喚した理由とこの世界の現状を知ってもらう必要があるな」


 そこから教皇はゆっくり訥々と異世界のあらましについて語り出す。


 要点をここにまとめる。


 曰くこの世界には人類の滅亡を望む魔王と魔族が存在するということ。ここ数百年人類と魔族は戦力は拮抗しており小さな争いこそあれ世界の平和はある程度保たれていた。しかし世界の均衡を揺るがしかねない出来事が約一年後この世界で起ころうとしているらしい。それは魔王の復活だった。千年前勇者パーティーによって封印された魔王、しかし千年の時を経てその封印が弱まりつつあるらしい。もしも封印が解かれ魔王が復活すれば世界は混沌(カオス)に包まれるだろう。そして魔王に対抗するために異世界召喚の魔法を使い俺達を呼び出した、そんなところだ。


 つまるところ教皇は俺達に魔王が復活するより先に魔王城で眠る魔王を倒してほしいとのこと。


 面倒くせぇ、それが俺の偽らざる本音だった。なんで俺がそんなことしなきゃいけないんだよ、大体異世界物っていったら普通はもっとユルユルな話しなはずだろーが、なにが悲しくてどっかのダークファンタジーの主人公みたいに命のやり取りをしなきゃいけないんだよ……俺が見た異世界物のラノベみたいに神様からチート能力をもらって、それで頭と股の緩いメスを侍らせるような気楽な話しであってくれよ……


 俺が心の中で愚痴を漏らしていると、長話しを終えた教皇が深々と頭を下げた。


 「どうか――この世界を救ってくれ――」


 切実な想いをぶつける教皇に皆言葉を失う。静寂を破ったのはクラスの人気者の声だった。


 「はじめまして教皇様、一ノ瀬楓と申します。無礼を承知の上で一つ伺ってもよろしいでしょうか?」


 かしこまった口調で一ノ瀬は言う。流石にさっきのアホと違って言葉遣いは弁えてるらしい。


 「なんなりと申してくれたまえ」


 「はい、その――教皇様には大変申し訳ないのですが私達には世界を救う力も覚悟をありません。私達が元居た国は戦争のない平和な国でした。もし戦場に赴いても恐怖で足が竦んでしまうと思います、ですので――無礼は重々承知の上でお願いしたいのですが――私達を元居た世界に返してくれないでしょうか?」


 「済まないが今すぐには無理だ。私は君達を召喚する為に約十年分の魔力を費やしてしまった。次に元の世界に戻せるのは魔力が回復した十年後だろう」


 「そんな……私達に後十年ここで暮らせってこと!? ふざけないでよ!!」


 ヒステリックな声で喚いたのは崎浜凛子だった。


 「確かに何もしなければ十年必要だ。しかし魔王を倒した時手に入る魔石を使えば帰還させることができる――だからどうか魔王を倒してくれ――」


 教皇は再度頭を下げるが、周囲の反応は冷ややかなものだった。とはいえ連中の反応も理解はできる。


 勝手な都合でいきなり召喚されて、全く知りもしない人間のために戦えなんて理不尽すぎる。


 そして戦いたくなくても帰れないから無理にでも戦えと強要されているんだからな。


 今にも罵声が飛びそうな空気を一変したのはまたしても一ノ瀬だった。


 「教皇様、質問よろしいですか?」


 「なんだい、勇者イチノセ」


 「もし魔王と戦う場合、貴方がた教会は我々をサポートしてくれるのですか?」


 一ノ瀬が訊ねると教皇は穏やかな微笑みをたたえた。


 「私達もできる限りのサポートはするつもりだ」


 「しかし我々はこれまで戦争の経験も無ければ、武器を持ったことすらありません、そのことについてはどうなさるおつもりで?」


 「無論最低限、剣と魔法の修行は行ってもらう。しかし君達ほどの魔力があれば一ヶ月あれば十分だろう。そろそろ君達も己の身体に眠る魔力を実感してきてるはずだ」


 魔力……実感? どういうこと……何も感じないけど……


 しかし周囲を見渡すと皆、教皇の言葉に少なからず納得している様子だった。どうやら何も分からないのは俺だけらしい


 「確かに力が漲っている感覚はあります」


 「君達の魔力は常人の約十倍だ。これだけの人間が集まればきっと魔王も倒せるだろう」


 「なるほど……」


 「勇者イチノセ、質問はそれだけかな?」


 「はい」


 またしても起こる数秒の沈黙の後、一ノ瀬は話し始める。


 「分かりました、一ノ瀬楓、その任務必ずや果たしてみせましょう」


 一ノ瀬のその言葉に一同ざわめき立つ。


 「楓、本気か!?」


 一ノ瀬の肩を掴んだのは奴の親友の桝山だった


 「ああ」


 「ああって、殺されるかもしれないんだぞ! 分かってるのか!?」


 「そんなことは百も承知だよ」


 「なら――」


 「蓮太、俺には十年もこの世界で待ってる時間はないんだ……お前だって知ってるだろう、夏希のことは……」


 「それは…………」


 なんか知らんがどうもワケアリなようだ。まぁ、俺の知ったことではないけど


 「それにこのまま何もしなければ魔王が復活し世界は滅びる、そうなれば俺達だって無事じゃ済まされない、そうですよね教皇様?」


 「うむ、その通りだ」


 「だったら魔王が復活する前に殺した方がまだ生きて帰れる可能性が高い……そうだろ」


 「確かにそうかもしれんが……怖くないのか?」


 「そりゃ怖いさ……けどそれしか道がないならそうするまでだ」


 言いながら一ノ瀬は皆の方に向き直る。


 「そういうわけで俺は魔王討伐に参加する。勿論皆にまで無理強いはしない。けど俺一人じゃ心細いのも事実だ。だから皆、元の世界に戻る為に強力してほしい、頼む!!」


 そう言って一ノ瀬は深々と頭を下げた。俺はヒーロー気取りの勘違い野郎と冷笑しながら見てたがどうも周りの反応は違うらしい。クラスのカリスマ(笑)の演説に心打たれたのか連中の顔に光りが差し込み始める。


 「なに一人でカッコつけてんだよ」


 口火を切ったのは一ノ瀬にライバル意識を燃やしている服部だった。


 「俺も参加する」


 「服部――ありがとう、感謝するよ!」


 一ノ瀬の素直な言葉に悪態をついていた服部が鼻白む。


 「るせぇ! 別にお前の為なんかじゃねぇよ!」


 「一ノ瀬君、私も協力する」


 当然だが一ノ瀬の恋人の玲花も参加を表明する。


 「――ったく、分かった、俺もやるよ楓」


 続いて桝山も玲花に続いた。そしてカースト上位の彼等の言葉に皆次々と流されていく。否、無論全員が全員意思を持たぬ愚か者ではない。中には俺と同じく何処か冷ややかな目で彼等を観ていた者も数少ないが存在している。だが反対派の大半はクラスカースト下位の人間、俗に云う陰キャだ。当然ながら彼等のようなはみ出しものには発言権など存在しないので内心不満は抱きつつも上位カーストの意向に従うしか道は残されていなかった。かくゆう俺も面倒事に巻き込まれるのは嫌だったので動かざること山の如し、喋らざること桃葉の如しをモットーに沈黙を貫いていた。


 とはいえなし崩し的に参加するつもりは毛頭ない。犬死はごめんなので適当にタイミングを見計らってここからトンズラするつもりだった。


 「どうやら決まったようだね……ありがとう」


 「いえ、良いんです。困った時はお互い様ですから」


 「では早速だが固有能力の鑑定を行ってもらう……アリアス、来なさい」


 教皇の隣に現れたのは如何にも占い師っぽい服装の女だった。女は手に透明な水晶玉を持っていた。


 「教皇様、彼女は……?」


 「彼女はアリアス、聖教騎士団の鑑定士だ。今から彼女には君達の固有能力を鑑定してもらう」


 「固有能力……ですか……」


 陽キャ連中が聞き慣れない単語に困惑した表情を浮かべているが、聡明な俺にはその言葉の意味にすぐ気付いた。


 異世界物のテンプレ、スキル鑑定キタコレww


 ようやく異世界らしくなったことで俺の中のテンションが爆上がりする。


 「ここからは教皇様ではなくわたくし、アリアスが説明します」


 いや、説明とかいらんわ、ようはチートスキルかなんかだろ、こんなチュートリアルはしょってさっさと鑑定始めようぜ!などと考えていたが当然そんなこと言えるはずがない。仕方なく俺は欠伸が出るのを抑えながらアリアスの長話しを適当に聞いていた。途中創世神がどうだ神のご加護がどうだだのよく分からん厨二ワードが羅列されていたがその辺りは適当に聞き流していた。俺達は神からチートスキルを授かった、それさえ理解できればなんの問題もないだろう。


 「早速鑑定をしましょうか、まずは貴方から」

 

 アリアスからのご指名を受けたのは一ノ瀬だった。


 「鑑定の方法は簡単です。この水晶玉に手を置き心を無にするだけです」


 「なるほど……では……」


 一ノ瀬は目を閉じると水晶玉に触れる。すると水晶玉が豆電球のように輝き出す。徐々に増していく光りは目を閉じなければいけないほど強烈になっていく。瞬間、水晶玉の上に文字列が羅列される。


 ―――――――――――――


 一ノ瀬楓 人間 男 レベル∶1


 固有能力∶勇者(SSS級)


 ステータス

 総合 ∶1800

 体力 ∶300

 筋力 ∶300

 魔力 ∶300

 敏捷 ∶300

 防御力∶300

 魔防 ∶300 


 ――――――――――――――

 

 「な、なんと――素晴らしいステータスの持ち主だ!!」

 

 「教皇様、このステータスならすぐに実戦投入できる能力値です! それに彼は固有能力でも最上位のSSS級保持者ですよ!」


 「素晴らしい!! 勇者イチノセよ、期待しているぞ!」

 

 「えっと……これは凄いことなんですか?」


 一ノ瀬の疑問に答えたのはアリアスだった。


 「イチノセ様、通常この総合値というのはレベル1で1000を超えれば数百年に一度の神童と呼ばれるほどの代物です。ですが貴方の数値はそらすら遥かに上回る1800、最早、神の生き写しと云っても過言ではないでしょう」


 興奮しているのか早口でアリアスはまくし立ててくる。


 一ノ瀬の凄さに気付いた周囲の奴等も色めき立つ。特に奴の親衛隊を名乗る女達の反応は凄まじく、まるで一ノ瀬のことを神か何かのように崇めていた。


 異世界でも変わらず女達から羨望の眼差しを向けられる一ノ瀬に俺は嫉妬心と殺意を覚える。


 少し時計の針が進み、再びアリアスが鑑定をはじめる。


 そして一ノ瀬には一歩及ばないが素晴らしいステータスと固有能力を持つ人間が何人か現れる。


 ―――――――――――――――


 有原玲花 人間 女 レベル∶1


 固有能力∶賢者(SS級)


 ステータス

 総合 ∶1250

 体力 ∶150

 筋力 ∶50

 魔力 ∶400

 敏捷 ∶150

 防御力∶100

 魔防 ∶400


 ――――――――――――――


 桝山蓮太 人間 男 レベル∶1


 固有能力∶イージスの盾(SS級)


 ステータス

 総合 ∶1300

 体力 ∶300

 筋力 ∶200

 魔力 ∶50

 敏捷 ∶150

 防御力∶400

 魔防 ∶200


 ――――――――――――――


 服部猛 人間 男 レベル∶1


 固有能力∶拳王(SS級)


 ステータス

 総合 ∶1200

 体力 ∶250

 筋力 ∶250

 魔力 ∶50

 敏捷 ∶400

 防御力∶200

 魔防 ∶50


 ――――――――――――――――――


 羽川理久 人間 女 レベル∶1


 固有能力∶剣聖(SS級)


 ステータス

 総合 ∶1100

 体力 ∶200

 筋力 ∶200

 魔力 ∶100

 敏捷 ∶300

 防御力∶150

 魔防 ∶150


 ――――――――――――――


 崎浜凛子 人間 女 レベル∶1


 固有能力∶スナイパー(SS級)


 ステータス

 総合 ∶1000

 体力 ∶200

 筋力 ∶200

 魔力 ∶100

 敏捷 ∶250

 防御力∶150

 魔防 ∶100


 ――――――――――――――


 相原唯菜 人間 女 レベル∶1


 固有能力∶修道女(SS級)


 ステータス

 総合 ∶1000

 体力 ∶100

 筋力 ∶30

 魔力 ∶300

 敏捷 ∶100

 防御力∶70

 魔防 ∶400


 ――――――――――――――


 なんやかんやあって俺以外の鑑定が全て終了した。


 「まさか総合値1000超えが七人も出るなんて――しかもそれ以外の人間も粒ぞろいだ」


 「これなら魔王討伐も夢じゃないですね」


 ほくほく顔で二人は言う。


 「では最後の方水晶玉に手を乗せて下さい」


 「はい」


 俺は期待に胸躍らせながら手を乗せる。刹那、信じられない現象が巻き起こる。


 「な、なんだこれは!?」


 「分かりません、水晶玉が黒ずんでる!?」


 「もしやこれはイチノセ以上の逸材!?」


 教皇が大きく目を剥き驚愕する。それもそのはず先程まで雲一つない晴天のように蒼く透き通っていた水晶がまるで雷雲に覆われた空のように灰色に染まり水晶玉から禍々しいオーラが渦巻いていた。当然イレギュラーに驚いたのは騎士団の連中だけではない。二年一組の生徒や理久ちゃんも少なからず動揺していた。尤も彼等の場合は驚きよりも恐怖や不安の方が近いだろう。なにせ彼等はこれまで俺を虐げてきた張本人だ。教皇の予想通りもし俺が本当に一ノ瀬以上の逸材だとしたら――"報復"そんな言葉が彼等の脳裏をよぎっただろう。だが安心してくれ諸君、俺はそんなことで人の命を奪うほどサイコパスじゃないし器量の狭い男じゃない、寛大な心で彼等の愚行を許すつもりでいた。尤も俺のことを舐め腐って奴隷のようにこき使った凛子と唯菜に関しては()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 俺がギャル二人の服を破り裂き陵辱している妄想をしているとステータスが浮かび上がる。教皇がさっき驚いていたんだ、きっととんでもないハイスペックなんだろうなぁ――ワクワクしながら俺は自分のステータスを見る。


 ――――――――――――――


 桃葉裕司 魔族 男 レベル∶1


 固有能力∶魔王(?級)


 ステータス

 総合 ∶60

 体力 ∶10

 筋力 ∶10

 魔力 ∶10

 敏捷 ∶10

 防御力∶10

 魔防 ∶10


 ――――――――――――――


 とんでもねぇクソステじゃねぇかあああああ!?


 冗談みたいな低スペックに俺が心の中で絶叫する。

もしかして見間違い――そう思い俺は目をゴシゴシこする。がやはり視界に映る文字は変わらない。総合ステータス60というミジンコみたいな数字が悲しくも世に晒される


 ふざけんな、なんだったんだよさっきの意味深な演出は――期待させんなよな――


 これがソシャゲのガチャ演出なら今頃ユーザーから苦情が殺到するぞ、などと考えていると、ふと一番上の固有能力【魔王】が目に入る。それを見た瞬間、俺は閃く。もしかしてこれ成長型なんじゃね、と。


 RPGで云うところの初期ステはクソだけど成長率がえげつないっていうアレなんじゃ――


 そう考えると魔王という単語とこのクソステータスにも合点がいく、というかそうであってくれんと困る。異世界でも虐げられる側なんてまっぴらゴメンだった。


 俺は一縷の望みに賭け、教皇を見る。


 教皇は何故か猜疑心に満ちた目で俺を見ていた。彼だけじゃない、アリアスや他の騎士も俺に対する疑念と恐怖の感情がありありと表情に現れていた。


 あれ、もしかして俺……針の筵?


 「ええと……」


 俺は誤魔化すように笑いながら頭をかく。


 「もしかして俺、なんかやっちゃいました?」

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